暗闇(ルート+α)
暗闇の別ルートを書いたのですが。ただそれだけじゃないですよ
仕事に疲れた僕は死ぬ場所を探していた。どうせ誰も自分を認めてくれない。そう思った僕は最後くらいは派手に人に認識されながら死んでやろうとおもった。
賑わう週末の駅のホーム。ここなら派手に死ぬことができる。音を立てて迫り来る鉄の固まりに身を投げようと1歩足を踏み出した。
だが飛び込むことはできず、次の瞬間後ろに引っ張られたようだ。どうやら死ねなかったらしい。ホームに仰向けで倒れこむ僕をみて「今飛び込もうとしてなかった?」「迷惑だわ」
などと話している。
電車がとまりホームの人々は電車に乗り込んでいった。
人がずいぶんと減ったホームに一人悲しそうに俺を見下ろす女の人がたっていた。
「ねぇ。そうくん…だよね?」
ずいぶんと名前を呼ばれていなかったので名前なんか自分でも忘れていたのかビックリした。
「私のこと覚えてないかな…」
悲しそうな心配そうな辛そうなそんな顔が似合わない可愛い子である。
思い出した。彼女は高校の頃、罰ゲームで僕と付き合ってた子だ。
「ひどいことしちゃったしね…でも死んじゃダメだよ。」
僕を引っ張ったのはこの子のようだ。だが忘れてはいけない。彼女たちのせいでその後女の人が苦手になったのは言うまでもないからだ。
「なんで止めたんだ。もう少しで死ねたんだぞ?」
「勝手だってわかってるけど…その、見過ごせなくて」
「そうやっていい人ぶって。この偽善者が、そうやって俺を助けたところで俺はもうどうすることもできないんだ。」
高校のとき言えなかったことと今回のことで一杯になった心には余裕なんかない。感情のままに怒鳴り付ける
「ごめんなさい…でもあのときね…え、いや…ごめんなさい…」
この顔には覚えがある。あのときの何か言いたげで悲しい顔だ。
「とりあえず、今日はもういい。家に帰るよ」
「…だめ」
「なんでだよ。どうしようと勝手だろ?たかが1年同じクラスだったやつがどうなったって関係ないだろ。」
「だって…家に帰っても死のうとするでしょ?」
「そうだよ。あそこで最後ぐらいは派手に人に迷惑でもかけて死んでやろうと思ったんだ。最後の願いも叶わなかった。結局俺は誰にも知られず一人で死ぬのがお似合いなんだよ」
なぜここまで僕に関わろうとするのかが理解できない。もう半分死んでいるような人間に何のようがあるんだろう
「…ご飯食べ行こう」
「は?」
意味がわからない。話きいてんのかこいつはと思った。
そういうと彼女は顔を伏せたまま僕の手を引き駅を出る。
「なぁ…ちょっと」
ろくに食事もとらず、睡眠もとっていない俺は抵抗することすらできない。何て不甲斐ないのだろうか。
「ご注文は?」
「カレー2つ。1つは大盛りで」
「かしこまりました。」
店員がすたすたと厨房に行く。
久しぶりの美味しい食の匂いに圧倒され何も言えない。
「その様子だとご飯も食べてないんでしょ?」
「…まぁ。でもお金ないぞ」
「お金は気にしなくていいから」
優しい顔で微笑む。
「引っ張って歩いてきたから暑い」
そういうと彼女は袖を捲る。すると手首には彼女の美しい肌にはにつかわしくない傷の痕があった。
「あ…これ?」
長く見つめてしまったのか視線に気づいた彼女は傷を触りながらゆっくりと話を始める
「…そうくんと付き合うちょっと前からね。私いじめられてたの。この傷はそのときの。全然消えないんだ。。私薬剤師になる夢があったんだけどね。この傷のせいでなれなかったんだ」
傷を撫でながら話される思い出は僕の知らない話だった。
「それであるとき。そうくんが告白してくれて。こんな私でも好きになってくれる人がいるんだって思えたの。嬉しかった。」
「…罰ゲームじゃなかったのかよ。」
「別れろって言われたんだ…。嫌だって言ったんだけどそうしないとそうくんをいじめるって脅されて仕方なく…罰ゲームでって話はそう言うようにって…後ろで監視されてたから…」
「…嘘だろ」
頭が痛い。この子は僕を守るために?いじめられてた。彼氏だったのに気づかなかった…
お互い思うとこがあるのか黙りこんだまま気まずさが漂う
「カレー大盛りと普通盛りですねー」
空気を読まないタイミングでカレーが届く。いや、ベストタイミングだろう
「ほら、カレー来たからたべよう?」
「お、おう」
「そんなに気にしなくていいから。私だってそうくんがそんなに傷ついたの知らなかったし…」
「俺が気づいてあげられなかった…勝手に一人で塞ぎこんで。あげくの果てにさっき偽善者とか言っちゃった…」
「もういいから…」
「…うん。」
しばらく沈黙が続いたが少しずつお互いのことを話した。何年かぶりに楽しかった。
「…今日はありがとう。」
「今からどうするの?」
「どうって…家に帰るよ。」
「家に帰って…死のうとしない?」
「もうしないよ。明日仕事やめてくる。少し身軽になってみようかと思う」
「…そっか。よかった。またね…」
彼女は手を振る
僕も手を振り1歩1歩と彼女と距離があいていく。店の角を曲がったところで足がとまった
「だめだ。」
このまま帰ったらもう二度と会えないような気がした。それがすごく嫌でとても辛くて、気がつくと彼女のもとまで走っていた。
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「早くこの子に会いたいね。あ、またお腹蹴った」
「お、本当か!俺も早く会いたいな。どんな子になるだろうな。」
「あなたに似て頭のいい子になるわ」
「お前に似て優しい子になるよ。」
「あ、そろそろ歌を聴かせましょ」
「そうだね。今日は何がいいかな。」
ああ、とても幸せだ。
最後は暗闇のほうと繋がってると考えると面白かったり