第6話「復讐」
この日は寝付けなかった。
青い髪の少女『マリン』を連れてくることに俺は反対だった。
体全身が「あいつは危険だ」と拒絶反応を出していた。
地下生活では昼夜の感覚が無くなるためデジタル時計を使用している。
その時計が3時を表示していた。
幾度となくベットとトイレを行き来する。
疲れは感じているが目が冴えている。
倦怠感が身を包む。
くっ、なんで俺がこんな思いを……。
誰のせいで、こんな思いをしなくちゃならんのだ。
俺たちをこんな状況にさせたのは誰だ。
アイツを作ったのは誰だ。
……政府だ。
全部政府が悪い。
俺たちがこんなみじめな思いをしてるのも。
あんな化けモンを作り出しておいて、自分たちは快適な都市を作り上げて呑気に暮らしていやがる。
許さない。
俺は許さない!
日の射さない部屋に光が灯ることなどなかったが、ユウの瞳にはある種の感情の火が灯った。
ーーー
自警団の朝は6時から始まる。
簡単な朝食を取ったあと、自家栽培設備のメンテナンスや射撃訓練。
それと民間人と交流して食に困ってないか、体調はどうだなどの情報収集もする。
現在のシェルターは都市部と比べると使えるエリアが狭い。
食糧の確保のためには広い土地が必要になってくる。
そのための拡張工事に多くの人手を注いでいた。
「拡張工事の調子はどうだ?」
大柄な、がタイのいい男が現場の作業リーダーに尋ねる。
「あ、これはどうも、種子島さん。予定の30%が終了ってところですかね。人手も資材も足りていない状況で。おまけに、こんな環境で工事をするんだから体の不調を訴える人も増えてきた。恐らく、これからどんどん増えていくから、計画は遅れていくでしょうね」
「換気代わりの空気清浄システムは動作してるんだろ。人手不足の弊害か?」
「日光に当たる機会が減ったため、骨や筋肉が弱ってきたのでしょう。サプリメントは一応ありますが、数も十分ではありませんし。そこに食の偏りによる影響ものしかかって……」
「そうか。食糧供給が安定すれば、少しはましな生活が遅れるんだろうけどな。ちっとばかし未来の話になってしまうか」
「ま、そのための拡張工事です」
「それのせいで体調を崩すってのもバカな話だがな」
お互い苦笑いを浮かべる。
その顔には疲れの色が濃く表れている。
「作業のペースを落とせ。少しばかりの遅れはこっちが何とかする。もとから破城してるような計画だ」
「わかりました。種子島さんも休んどいてくださいよ。その様子だと、あまり寝てないですよね」
「こっちはこっちで急なんだよ。月単位のお前らとは違う。心配すんな。事が終われば人一倍休んだら」
じゃあな。っと言って作業場を後にする。
種子島が向かったのは自警団がよく利用する食堂。
しかし、その部屋は張り詰めた空気が流れており、気の小さい人なら食事は喉を通ることはない状態だった。
「お、悪い。全員お揃いだったか」
そんな雰囲気にも臆することもなく現れた種子島に7人の視線が集中した。
だが、視線は叱責するためではなく、誰が入って来たかを確認するだけだったため、すぐに散った。
「いや、気にする事は無い。他が予定より早く来ただけだ」
入口に近い女性が答える。
種子島はその女性の反対側の空いた席へと腰をかける。
全8人が食堂の長いテーブルに揃った。
リーダーの男が口を開く。
「いきなり本題に入るが、もうここのシェルターも長くないことは皆薄々感じていただろう。備蓄されていた食糧は底を尽き。奪うにしても限度がある。全ての人に渡るほどの食料の生産が出来る環境は様々な健康被害や資材の枯渇でかなりの年月がかかる。安定したシステムが完成するころには、残ってる人間より死んだ人間の方が多くなるだろう」
そう熱弁する声色にはドス黒い感情が渦をまいている。
「それを許せるとでも? 俺は許せない。すでにここは限界を迎えている。それなのに政府は何もしない。それどころか、あいつらは何をした! そう、追い出した。俺たちを切り捨てて、自分たちは快適な環境で胡坐をかいていやがる!」
握り小ぶしに力が入り、腕の血管が際立って見える。
その表情は彼の心情を顕著に現した。
「復讐だ。俺たち以上の苦しみを与えてやる」
ネタが尽きましたが、せめて月一投稿をして、ラストまで持って行きたいです。