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Shelter  作者: ネムレス
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第2話 「探索そして遭遇」

 あれから数日が経過した。



 俺がリーダーを引き継ぐことになりその対応に追われた。


 現在の地方シェルターは完全に国からの支援を断ち切られている。

 俺らが住むシェルターもその一つだ。

 そのため、自分たちのチームが治安維持、食糧の配給などをしたりしている。

 自警団って呼べばいいのだろうか。



 チームのメンバーはそう多くない数で構成されている。


 警察官、消防士から学生、ビジネスマンまで。

 元々の職種関係なしに前任のリーダーが男女問わず集めたらしい。


 時には非合法な手段も取った。

 生きるために必要があれば奪い、殺した。

 これからもそうだろう。

 この戦いはいつまで続くのだろうか。



 政府への恨みは俺たちの行動源だ。

 そして同じ境遇が結束力を高めた。



 災害で家族を失った者も多い。

 彼らにとってはこのチームが家族みたいなものだろう。


 家族といえば、死んだリーダーの娘を任されたのだった。

 名前はエリと言うらしい。

 父親の死を告げたときは数日間ふさぎ込んでしまい、どうしたものかと思っていた。

 けれど、今では


「みてみて、えーかいたの」


 と元気な様子をみせてくれている。

 元リーダーに「貰ってくれ」、って言われたがまだ小学生じゃねえか!

 俺はロリコンではない。

 詳しい定義だとロリータではなくアリスだとかなんとかって言われたが、そこは問題点ではない。


 でも自分に妹ができたみたいで悪くなかった。



 そんなことを仲間に話したら


「へー、ゆう君はそんな趣味があるんだ~。ねえ、みんな聞いて!」


 ってマオにおちょくられたがそんな趣味もない。

 あいつにはげんこつをお見舞いしてやった。



 マオにはゆう君と呼ばれているが、俺の名前はユートだ。

 優しいという意味が含まれていると両親から聞いたが、そんな人にはなれなかったな。



 マオとは幼い頃から同じ学校に通ってた、幼馴染って関係だ。

 最近は出るとこ出てきたので目のやり場に困ってしまう。


 この前なんか風呂あがり(といってもシャワーしか使えないが)に薄着でチームの共同施設を出歩くのだから、ついつい横目でジロジロみてしまった。


「ちょっと、どこ見てるのっ!」


 一緒にいたリサにチョップをくらった。

 仕方ないだろ、あんな恰好でうろつくのだから。

 とても口には出せなかったが。

 あとでマオには注意しておこう。

 昔と違って治安が悪いんだから、いつ男に襲われてもおかしくないんだから。

 あ、でも薄着姿が見れなくなるのは嫌だな。

 こんな世界じゃ海イベントなんて望めないし。



 リサはみんなのお世話係みたいなものだ。

 炊事、洗濯、孤児の世話をしたり。

 彼女が中心となって動いてくれてるため助かる。

 俺が外出してるときエリの面倒を見るのも彼女だ。

 だが、アレンジといって料理をマズくするのはやめてほしい。

 物資が限られているので食事がワンパターンになるから、それを解消しようとするのは良いが、組み合わせが悪すぎる。

 なんなんだ! ヨーグルト茶漬けって!


 貴重な食糧だ。

 残しちゃダメだ……。残しちゃダメだ……。


 とてもじゃないけど食べた気にならなかった。

 裁縫や掃除、洗濯は普通にできるのに! 

 なぜ料理ができないのか不思議でしょうがなかった。



 ーーー



 俺たちはまた地上を出歩いていた。


 今回は長旅の予定なので12人で行動する。



 最近は使える薬が残ってないかと病院や研究施設があったと思われる場所へ向かっていた。

 大方、近隣の施設は見て回ったし、建物が密集している地域では同業者と出くわすこともある。


 彼らの中にはこちらを攻撃してくる者もいる。

 手を出したら、どちらかが倒れるまで続くので滅多に争いは起きない。

 だがしかし、こちらが多くの物資を持ってて彼らが切羽詰まった状態なら起きないこともないだろう。



 そんなわけで山奥の研究所があると思われる所へ足を進める。



 人工衛星は隕石によって粗方破壊されたのでナビなんてない。

 地形は隕石の破片によってめちゃくちゃにされ、地図は仕事をしなくなっている。

 コンパスもあれから機能していない。

 そのため、方向感覚と想像力が必要となってくる。


「この残骸はこの建物のものじゃないか?」


 こんなときはケンが役に立つ。

 彼いわく


「消防士だったから、たくさんの建物の壊れた姿を見てきた」


 とのことだったが、それが理由ではないだろう。

 消防士でもそう壊れた建物見ないと思う。

 彼の経験と豊かな想像力がなせる業だ。




 そんなわけで目的の施設へたどり着いた。

 いつ崩落してもおかしくない建物がいっぱいある中でこの施設はわりとキレイだった。



 三手に分かれて内部へと足を進める。

 電気の通ってない建物は暗く、自分たちの足音が響く。


「なんか、ゾンビとか出てきそうだね」


 能天気なマオがつぶやく。


「やめろ、まるで班を三つに分けたのがフラグみたいじゃないか」


 隕石についてたウイルスが人に感染。

 自我を失った人々が襲ってくる!

 なんて、映画みたいな展開はやめてくれ。

 ついでにエイリアンとも戦いたくない。


「でもホント暗くて歩きにくいなー。どっかに予備電源とかないの?」


 予備電源か。確かにありそうだな。

 シャッターが下りてるため進めない場所も多い。

 非常時のために用意してるかもしれない。


 懐中電灯の光を頼りに部屋を探す。

 途中で見つけた非常用のライトも拝借しておいた。



 だんだん物を盗むことに罪悪感を覚えなくなってきた。

 最初のうちは仕方ない。緊急時だから。なんて考えてたが、使えそうだから持っていこうなんてのが増えた。

 火事場泥棒だということは理解しているつもりだが、躊躇いがなさすぎる。


 このまま罪の意識は薄れていくのだろうか。

 やがて人を殺すのにも何も感じなくなりそうだ。


 最初は政府への怒りが自覚するのを妨げていたが、ふと我に返ると胃が締め付けられることがある。

 俺の手はすでに汚れたいる。

 せめて何の感情もなしに人を殺すのだけは避けたいと願った。



 部屋を見つけると、電源とともにシャッターの開閉スイッチもあった。


「これで探索できるエリアが広がったね」


「にしても、ここはなんの研究をしていた場所なんだ? バイオやら生命の文字をよくみるが」


「ゾンビの研究じゃない!?」


「その話はもういい!」



 シャッターが開いて行けるようになった部屋を探索する。


 薬品、洗剤、延長コードなんかも貰っていくことにした。

 重たくなるので鞄に詰めるのは後だ。

 廊下に出しておいたのを戻るときに回収する。

 ついでに帰り道がわかるシステムだ。



 探索を続けていると、これまでとは違った雰囲気の部屋を発見した。

 今まで見てきた部屋は粗方綺麗に片付いていた。

 それに対して、この部屋は書類などが散らばっており、コーヒーやエナジードリンクのゴミなどが残っていた。


「まるで人が突然いなくなったみたいだね」


「実際その通りなんだろ。隕石がぶつかる直前までここで何かの研究をしていた。それも、書類をまとめる時間も惜しいほどギリギリまで」


「はへー。だからせめてもの抵抗で、シャッターを下ろして予備電源をつかなくしたんかね」


「いったい何をしてたんだか……」


 机の上に置いてあった資料を手に取る。



『ハビタブルゾーンにおける惑星探査システム

 および人類の設計図計画について』


 長々と文章がつづられている。

 ところどころ専門用語と様々なグラフが載っていてる。

 すべてを理解でいないが、要約するとこんな感じだろうか。



『人類が絶滅する可能性があるため、人を宇宙へ送ろう。


 住める星を探してそこで新たに文明を繁栄させるのだ。


 だが、今の技術では人が生きている間に星までたどり着けないだろう。


 向こうで受精卵を育てる方法も考えついた。


 だが長い旅の間に駄目になるだろう。


 それなら衰えることのない体にしてしまおう。


 新しい人間を作るのだ。


 当初の目的とずれるが人の遺伝子を持っているなら構わない。


 我々の目的は人間を絶滅させないことだ。


 その設計図をそこに残す』



 その実験結果なども書いてあった。



「こんなことをしなくても現に俺たちは滅んでないってのに」


「でも、科学者にとっては夢だったんじゃないの? 

 逃げるギリギリまで研究していたみたいだし」


 俺が手渡した資料を読みながらマオが答えた。


「そんで、これが実験成果ってわけか」


 隣にある大きな装置を小突く。


 俺と同じぐらいの大きさのガラス容器には、幾多の配線が繋がっている。


 液体で満たされたその中――――




 青い髪をした少女が眠っていた。


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