プロローグ
xxxx年、巨大隕石の接近により、世界は恐怖と混乱に包まれた。
政府は学者から意見を取り入れ、超大型の人工衛星を着地させることにより隕石の質量を増やし、惑星の軌道をずらす作戦を取った。
しかし、隕石への人工衛星着陸は困難を極めた。
通信システムの不具合、エンジンの故障などのエラーがたびたび発生し、技術者はその対応に追われた。
計画は当初の予定より遅れを取ることになった。
結果、隕石の軌道を少しずらすことには成功したが、この星の衛星に衝突してしまう。
その破片は世界各地へと降り注ぎ生活区域を破壊。
隕石に含まれていた有毒ガスは生物を死滅させ、衝突によって発生した灰は日の光を閉ざした。
地上は壊滅的なダメージを被い、人類は地下シェルターへの移住を余儀なくされた。
政府は各地に地下シェルターの製作を急ピッチで進め、生き残った国民を収容することに成功した。
しかし居住スペースを優先せざるを得なかったため、地下栽培は満足な食糧生産力は無く、深刻な食糧問題が発生した。
政府は隕石の対処方法や対応の遅さなどを国民から非難され、政権は交代した。
しかしその政府がとんだ曲者だった。
新たな政府は『リスト』を作り、都市圏を中心にとした、大企業の役人、学者、技術者、そして自分たちの都合のいい者だけに食糧配給者を絞ったのだ。
反対する者は弾圧された。
奴らはいつの間にか軍を支配下に置いていた。
配給は政府が管理していたため、簡単に言いくるめられたのであろう。
やがて『リスト』に選ばれなかった。名簿に名前の載ってない者は『名無し』と呼ばれた。
『名無し』が人としての扱いを受けなくなるのに時間はかからなかった。
デモ、暴動、盗みなどはあらゆる場所で発生し、地下は荒れた。
軍が動き、騒動の鎮圧を図って死傷者が出た。
やがて少し歩けば飢えた人が倒れているのは日常となる。
ある日『名無し』の大都市の大型シェルターからの退去が言い渡された。
「俺たちから食べる物だけでなく、住むとこまでも奪うのか!」
『名無し』たちは抵抗を試みたが強力な武器を持つ軍にかなうはずもなかった。
多くの人がそれまでの戦いで亡くなっていった。
銃声はシェルターのどこまでも反響したのだった。
『名無し』たちはシェルターを追い出される形で出て行った。
放り出された者のほとんどが倒れたが、数人の生き残りはそれぞれ地方の使われていないシェルターに住み着いた。
ーーー
あれから数年……。
現在、大型シェルターは開発により地下都市と呼ばれるほどまでに発展した。
食糧難も解消されていき、失われた文明を取り戻そうとしていた
しかし、『名無し』を受け入れることはなかった。
清潔なベット、温かいお風呂、そして栄養のある食事は彼らだけのものだった。