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思い付きで書いた話集  作者: オセアン
1/2

Act 1

「俺、癌にかかってそんなに生きられないから別れててください。」


我ながら簡単にまとめたなと褒めてもいい言葉を


10年以上付き合ってる彼女に今目の前で発した。


中学のころからなあなあで付き合っては来たが自分の未来がないと知ったら


カッコよくてお金持ちで、且つ彼女のことを自分以上に思ってくれる未来の旦那様に託すしかない。



『えっ、なにいきなり』


まあ、そうだろうそうだろう。

驚くのも無理はないさ。自分でも驚きは隠せないんだからな。



「だから、病気だから別れようって言ってんの」


『ははっ、冗談はやめてよ。突然すぎてビックリするじゃない。』



冗談・・・ねえ。




そう思えたらまだまだ君と一緒にいれるからさぞ幸せな妄想がはかどっていることだろう。




「さすがにこんな嘘はいいません。」


『は?』



少しの沈黙が二人を包む。



「別れてください。」



さあ、これでとどめだ。

明日から新しい彼氏さん探しに励んでく・・・









がばっ







おいおいどうしたんだ突然抱き着いてきて。

今までの10年こんなこと一切なかったのに、彼女病気なんじゃないかと疑いたくなった。





『・・・治るんでしょ?治るんだよね?』




「・・・・・・・」




俺は黙った。あいにく我が家にそんなお金はありません。

察してください。




しばらくすると、僕に抱き着いたままの彼女から泣き声らしきものが聞こえてきた。







思えばこんな風景絶対ありえなかった。

当時、彼女から手紙で告白されて付き合い始めた俺らは
















合体はおろかキスすらしたことがない。















恥ずかしいことだがそれは紛れもない事実であり真実である。

お互いに趣味の話や学校の話でいつも盛り上がっていて、まるで友達みたいな関係で続いてきて

彼女が行きたい所や、やりたいことに後ろからてくてくついていくだけの日々だった。



今でもその関係は続いていた。

高校のころは男の子の思春期ゆえの過ちも起こしかけたけどそんな勇気俺にはなかった。



二人が社会人になったころ、俺の中からやましい感情が消えた。

もうこのままのほうが幸せなんじゃないかと思い始めた。



俺は彼女の笑顔を見ることや、幸せ と言ってもらえることに生きがいを感じていたのだ。


まあ、周りからは変な目で見られたけど次第になんとも思わなくなった。










そんなわけでその 生きがい も今後不可能となった今俺はただの役立たずなわけで

そんな奴は消えなくちゃいけないんだが





『嫌。』







・・・・・なんでそんなこと言うかなあ。

君はそんなせいかくじゃないでしょ。



いつも楽しそうに話してくれる野球選手とかさ、俳優のひとがいるから大丈夫だろ?

かっこいいなあとかイケメンだぁ!って喜んでたじゃん。



「嘘つけ。○○選手とか○○がいれば平気!ってめっちゃいってたじゃないですか。」



『嫌。』



「ダメ。」



『嫌!』





ちょっと予想外。君は結構男勝りな所あるから大丈夫って思ってたんだけど

こんなに拒否されたのは初めてだな。



「嫌って言ってもこのままじゃ俺が死んでくのを見届けるだけになっちゃうぞ」


『それも嫌!嫌!』


「分かってください。俺じゃ君を幸せにできないんです。先に死んじゃうんです。」


『なんで?なんで?どうして急に別れようなんて言うの?どうして!』



僕の服に顔を埋めながら精一杯声を出しているのがわかる。



彼女がこんなに俺に関心持ったのも付き合い始め以来だ。




俺は別に興味を持たれなくてもよかったし、彼女が幸せならいいや。の精神で

毎日を過ごしてきた。


彼女を好きなのは今も変わらないし。幸せになってほしい気持ちも変わらない。





「なあ、聞いてくれ。俺は君に幸せになってほしいと思っている。できることなら俺が幸せにしてやりたいです。」


『じゃあそのまま君が私を幸せにしてよ!私も君を「だから出来ないんだよ。」


服から顔を離し、そのまま顔をあげ俺に訴えてきたが俺がその言葉を塞いだ。


あくまでもいつもの通りの口調を保ちつつ彼女に納得してもらわないといけない。

感情を出すのはあまり得意じゃないし彼女相手に怒鳴り口調なんて絶対したくない。




「この病気を治す金なんてない。それに俺はもう覚悟は決めてるんだ。」


『お金なら私のほうでできる限り・・・』


「気持ちはうれしいよ、ありがとう。でもそれは未来の旦那さんに使ってあげるといい。」


『やめて・・・そんなこというのやめてよ・・・』



秋に入ろうかという季節の夜、街から外れた公園で俺たちは生まれて初めて

互いに意見が別れ喧嘩?みたいなことをしている。



新鮮だけどやっぱりそんな泣き顔はみたくないな。



夜だけど周りに家はなく公園にある灯だけが俺らを照らしている。



「いままでありがとうな。俺はすごく楽しかったぞ。まあ本音を言えばキスぐらいはしたかったかなあ。」


少し照れ臭くなって最後らへんは後ろを向きながら話してしまった。



彼女が泣こうが嫌と言おうがこの病気はどうしようもないし俺の決心も揺るぎはしない。


「ほら、寒くなってくるから帰ろう?送っていきますよ。」



『嫌だよ・・・こんな別れ方嫌だよ・・・私・・・・私・・・』


いつまでも顔を下げて泣いたまま彼女の頭を ぽんぽんと撫でてやった。

すこし恥ずかしい。


「ありがとう。君は昔と変わらず優しくてかわいいな。それならいつでも新しいパートナーが見つかるさ。」



歩きそうにもない彼女を俺は車の助手席に乗せた。

公園から彼女の家はちょっと遠いからドライブの気分で走ろう。











相変わらず彼女は俯いたまま。


車はまっすぐ彼女の自宅へと向かっていた。



カーステレオからは世紀末当たりの有名曲が流れている。




『私のどこがいけなかった?すぐ直すから。』


「君の悪いところなんて俺にはわからないよ」


『病気が急に治るかもしれないじゃない?』


「そうだったらどんなにうれしかったことか。」


『君が死ぬまで一緒にいたいです。』


「こんな棺桶入る寸前の野郎に大切な時間をつかわないでくれよ。」


『・・・・・・』


「・・・・・・」








ああ、空しいな。

別に誰が悪いわけでもない。

ただ単に俺に運がなかった。ただそれだけなのに。



10年か・・・・



「ひとつ、聞いていいかい?」


彼女は首こちらに向けてきた。なに? という事なのだろう。僕は続けた。



「この10年間、幸せに過ごせたかい?」



死ぬ前にこれだけは聞いておきたかった。

過ごせたなら今後もずっと幸せになってくれ。

そうでなかったら,申し訳なかったと未来の旦那さんに期待するしかないと言おうと思っていた。



『ふざけないで・・・まだまだ足りないよ!!これから私が死ぬまで君も一緒に幸せになるの!!絶対!絶対・・・』



どちらともいえない答えに俺は何も言わなかった。










彼女の家に着いた。

一人暮らしでは無いが、ご両親はすでにご就寝のようだった。



「着きましたよ。ほら、寒いから早く家に行きなよ。」


俺は笑って彼女を送ろうとした。


すると彼女はいきなりこっちに顔を近づけてきて














キスをしてきた。















信じられなかった。

ありえなかった。








『私は絶対に諦めないから。君は死なせないし、別れない。私が君をどれくらい好きなのか絶対わからせるから。』


彼女は涙を流し怒りながら俺に向かって叫んだ。


『明日から君に毎日電話する。嫌って言っても聞きません。電話が嫌ならメールにするから。』


そう言って彼女は家へと向かっていった。

































馬鹿。






















もう遅いんだよ馬鹿野郎。

















「馬鹿野郎!!」












車を走らせながら叫んだ。

泣いた。馬鹿しか言えなかったけど叫んだ。










翌日から俺は彼女の前から姿を消した。

後で彼女視点も書く予定。

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