prologue3
ちょっと下品です
すいません
朝は家の前で執り行われている工事に使う機械のけたたましい音で目を覚ました
自分の格好と、腹の減り具合で思い出したが
昨日のあれからそのまま寝てしまったのか
「ああもう。」
時間を無駄にしてしまった悔しさが思わず声に出てしまった
別にたいしてすることもなかったのだが
すると廊下から足音が聞こえてくる
十中八九、妹の可奈だ
「ゆらり、起きた?」
ほらね
妹はノックもせずにずけずけと部屋に侵入してくる
「起きた」
「昨日何も食べてないんでしょ?お母さん怒ってたよ」
「作る量が少なくてよかっただろうに」
「食卓も和やかな雰囲気だったしね。良かったよ」
最近、皮肉という厄介な技を覚えたこの妹ももう中3年。受験だ
妹は僕みたいに中学受験をせず、北中に行った
校風の通り、成績は芳しくない
「それより、お前今日暇なの?」
時計の針は10と11の間の何もないところをさしている
「うん。もう部活もないし、受験生だしね。何かご飯作ろうか?」
「お願いするよ。ありがと」
僕は料理なんて出来ないから、妹がいなかったら間違いなくカップ麺だっただろう
今日はラッキーだ
しばらくして1階のリビングに下りていくと、もう食事が並べられえいた
トーストとハムエッグとレタス。まぁ誰でも出来そうなものばっかり
でも、やっぱりありがたい
「いただきます」
僕はまぁまぁ大きな声でそういったが、妹は反応ひとつせずテレビの前に座り、あろうことかテレビゲームをやり始めた
「お前、受験生だぞ?」
「いいの。息抜きも必要」
「息抜きばっかのクセに」
「うるさいな。塾でやってるからいいの」
「お前な・・・」
もうこれ以上言うのはやめた
喧嘩になる。長年の経験で分かってる
「それよりゆらりもやろうよ。ウイイレ」
「まだ食べてる。食べ終わってからね」
食べ終わった皿を流しに置いてきたら、気が早い妹はもう僕の使うチームまで決めていた
「早く!」
「分かってるって。ゲームしてんのばれたら俺も叱られるんだからな」
「じゃぁやらなきゃいいじゃん」
「いいよ。怒られるのなんてどうでもいいし。暇だし」
「私なんかもっと暇なの」
試合が始まると、二人の間に会話がなくなる
妹はこのゲーム、正直強い
サッカーをやってるからかもしれないが、僕では歯が立たない
部活もサッカー部だった
この前試合に負けてしまってもう引退してしまったらしいが
「やった」
妹がつぶやく。1点入れられた
「お前うまいな。少しでもこの才能を勉強に生かせばいいのに」
「そういうゆらりはバスケやってたのに全然ダメね」
「全然違うだろ。球を使うってだけだ。」
「似てるじゃん。テニスと比べてみなよ」
何か口げんか勝てなくなっちゃったな
結局6-1で負けた
何かむなしくなっちゃった僕はまた寝ることにした
「あ、ゆらり、今日夜も暇?」
僕が階段を上ろうとしたその背後から、妹の声がした
「ああ、俺、この夏は無休で暇だよ」
「それむしろ全休じゃ・・・。」
「うるさいな。んで?なに」
「夏祭り一緒に行かない?」
「一緒なんかやだぞ。」
「いや。あたしもゆらりとなんか行きたくないから。そーゆーことじゃなくて」
「分かってるよ。行く。何時?起こしてね」
「また寝るの?ほんっとうに暇ね!んで、5時にでよう」
「誰かさんと違ってもうやること全部終わってるからね。了解。お願いね」
妹の魂胆は多分、僕を有紀と再会させることだろう
有紀は、幼馴染で、小学校1年生の時は両思いだった経験のある女の子
小学校時代からギャル色を前面に出していて、正直僕の好みではなかった
(そしてルックスは吉田さんがダブルスコアの圧勝)
妹とすこぶる仲が良い。昔から二人でグルになって僕をいじめてたこともあるほど
(因みに僕と有紀との関係は今やメル友以下だ。するとしても半年に1度。自分からはしない)
妹の話を聞いて多分僕にあいたくなったんだろう
僕と有紀はかれこれ3年会ってない(これの姉の早とは良く会うのだが)
生活圏が同じ小学校といえど全然違うからだ
そして、その3年の間に何が起こったのかというと
身長が30センチ伸びたのだ
妹はこれを自分の自慢話のように話しているらしい。恥ずかしい
そしてこのまえ
「有紀先輩にそのことはなしたらねー。会いたいってさ。よかたねーゆらり。春到来だね」
「有紀にも彼氏ぐらいいるでしょ」
「何かもうちょっと期待しないとつまらないなー。早くドーテーやめたくって血眼にとかならないの?」
「お前はドーテー高校生に偏見を持ちすぎ。俺はそんなことはないんだよ。プラトニックで十分さ」
「インポかゲイか火星人ね。このホーケー頭!」
「全部違うし人の髪型をそんな下品に扱うなよ」
という会話をしたのを覚えてるし
覚えてないかもしれないが、僕の頭は、きのこに似てる
もっと言えば、アレなんだよ
ちゃんとマッシュっていう呼び名があるんだけど、やっぱ、アレにに似てる
「ゆらー!いくぞー!」
1階から妹の声がする
僕は急いで起き、着替え、髪をくしで整え、ワックスをちょっとつけてすぐ玄関に下りた
妹は浴衣だった
持っているのは知ってたが、着てるのは初めて見た
そんな妹が僕の頭を見るなり
「お、ちょっと本気?」
と言った
「キノコが外ハネキノコになっただけだよ」
と、言い返した
太陽が傾きかけていた、まだまだ暑い午後だった
お祭り会場に着くなり、妹はカキ氷を買いに奥へ入っていった
僕もついていってブルーハワイを頼むと、店の向こう側のくすのきの下でかき氷を食べる妹の姿が見えた。男と一緒に
おー。男だ
まぁ、中3なんだし一人や二人もいるか、と思いながらも、ちょっと先を越された感があって悔しかった
僕が近づいていくと、やはり妹はあからさまに嫌がったが、僕はお構いなしに歩み寄る
「・・・・誰?」
先に声をあげたのは相手の男だった
何か上品な感じがするが、日焼けをしている
部活はサッカーかテニスだな・・・
「あ、うちのゆらり。さすがね、ブルーハワイとは。味覚にもセンスが感じられないわ」
「お兄さん??あ、すいません。」
彼は頭をぺこりと下げた
いいやつじゃないか。テニス部だな、多分
僕のすばらしい味覚を批判するような妹とは未来永劫釣り合いが取れないだろう
「坂本君って言うの」
「よろしくお願いします」
「2人は付き合ってるの?」
僕は恐る恐る聞いてみた
「あ・・・はい。つき合わわさせていただいております!」
「ちょっと、噛んでるわよ?」
「え?そう?えぇと、つきあわさていただいて・・・」
「そこはもう、交際させていただいてるでいいんじゃないかな?」
「ああなるほど。さすがお兄さん」
「やめなよ。この男は褒めるごとにありえないほどの調子の乗り方をするわ」
「人を勝○みたいに言うなよ」
ひょっとしたら、僕たち3人で仲良くやっていけるかもしれない
「あぁ、後、こいつのことはゆらりでいいから」
「あぁうん。じゃぁ、ゆらりさんで」
「そーだな。お兄さんか義兄さんかわかんないもんな。そこはまだ区別しないと」
「くだらなっ」
「お前さ、喧嘩売ってんのか?さっきするーしたけど俺はブルーハワイの件ですごく頭にきてるんだ。やっつけてやってもいいんだぞ!」
「ほら!やれるもんならやってみなさいよべーだ!」
「何だと?俺って何気に・・・・」
「あ、可菜じゃん!」
「先ぱァい!」
可菜が特別甘い声を出しながら僕の後方3m付近にいるであろう未確認人物に駆け寄っていった
未確認は未確認だけど、想像はついてる
こいつは、有紀だ