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Eternal Frontier  作者: 神楽亜子
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当選!!「第15弾先行アップデート」

「マジであたったよ、おい。」


8月1日

俺のメールボックスには、「『Eternal Frontier』第15弾特別先行アップデート当選のお知らせ」と言うメールが届いていた。


2XXX年、VR技術は大幅に進歩し、最初にその技術を確立したのはゲーム業界だった。完成当初は、大部屋一つ分の広さを再現するだけで精一杯であったため、多くの人間に望まれていたRPGは開発できず、バスケットボールやテニスなどのスポーツや、室内でのサバイバルゲームといったFPSしか開発できなかった。しかし、技術の進歩とともに再現できる広さは、街レベル、都市レベル、国レベルと広がっていき、最終的には大陸レベルまで再現できるようになり、プレイヤーが待ち望んでいたRPGが開発されたのである。

そして「Eternal Frontier」とは、専用のヘッドギアを使ってプレイする現在大人気の中世風の世界観のVRRPGの名前である。

このゲームがオフラインながら人気になった理由はいくつかある。


1つはキャラクタークリエイトパーツの豊富さだ。

その多様さは「運営はキャラクリシステムに製作期間の半分を使った」「時間さえかければ再現できない顔はない」とまで噂されるほどである。

多種多様なパーツから選べるだけではなく、脳波測定によりプレイヤーが想像した顔・体型をも再現できるため、プリセットされたパーツの中で作成したのち、細かい調整を考えるだけで補正することもできる。

また、数多くの有名声優を起用し、その声質データを使用することで、従来のように決まった台詞だけではなく、プレイヤーが話す言葉を声優の声で楽しむことも可能であった。これほどまでに凝られたキャラクタークリエイトシステムであるがゲームがオフライン専用であり、プレイ動画の類は外部出力できないため当初は各プレイヤーの自己満足のためだけだと思われていた。

しかし、発売からしばらくたち、攻略サイトがたてられるようになり情報も集まってくると、あるシステムにこのキャラクリがおおいに関わっている事が判明し、評価されるようになったのだ。


そのシステムと言うのが、「印象値」である。

攻略サイトがたてられ、順調にクエストの情報や各職業につく方法、その他もろもろの裏情報等が集まってきたが、だんだんと情報に齟齬が生じるようになってきた。

一部はレベル・性別・使用武器等の違いで説明できたが、やはりそれでも説明できない部分は残る。

一時は悪戯による誤情報かとも考えられたが、よく話を聞いていくうちに「もしかするとキャラクリが関係しているのではないか?」という仮説がたてられた。

そして、ゲーム開始後すぐに試せることで検証した結果、キャラクリによる人々への印象値というべきものが存在し、それにより人々との関係が変わることが判明した。

例えば、強面で筋肉質のキャラであれば子供たちには怖がられる一方、裏稼業になりやすかったり冒険者になると初対面の相手からベテランと思われるようになった。

また、母性あふれる女性キャラだと子供たちには慕われるが、戦闘職につくと初対面の相手には侮られるなど見た目から判断されてしまうのだ。

その結果、クエストや就職の際の好感度に差が生じるためプレイヤー間での情報に齟齬が出来ていたのだった。

特にそれが顕著に表れたのが、第1弾アップデートで追加された2国の王子・王女に関してである。

彼らの好みの顔を作ると一目惚れされ、例え平民でも王子・王女となれるほど、キャラクリが大きな要素を占めていたのだ。


結果として、冒険者や商人などの職業としての様々なプレイとは別に、イケメンにしてハーレムプレイや強面の保育士と言ったギャッププレイなど様々な楽しみ方もできた。


そして、2つ目の理由が世界の広大さだ。

冒頭のメールでも分かる通り、現在まで14回ものアップデートが行われた。

それぞれのアップデートで、2~3カ国が追加され、中世の王国・公国・帝国・はたまた江戸時代の日本的な国など様々な国が実装された。

それにより、プレイヤーはゲームタイトルの「Eternal Frontier」にふさわしい広大すぎる世界を楽しむことができたのだった。


さらに、3つ目の要素として自身のレベルアップに応じた、動体視力や反射神経のアシスト機能を付け加えたのが大きな反響を呼んだ。脳波を介して行われるVRゲームではレベルアップなどステータス面以外では、現実の脳の処理速度がそのままプレイヤーの能力になってしまう。VRMMOは多人数のプレイヤーと触れ合えるという点で人気はあったが、どうしても多人数が同一サーバー上でプレイするという性質上個々のプレイヤーに対するゲーム側からのアシストは付けづらかったのだ。PC等で行われていた以前のゲームなら性能のいいパソコンを用意するなどプレイヤー側が行えることもあったが、脳の処理速度はどうしようもないため、反応が遅れてしまう人間はレベルアップをしてダメージをなくすことはできても、超回避プレイなどは行えないという制限があった。

それを解消するために、このゲームはオンライン機能を廃することで、アシスト機能をONにした場合、周りの景色をスローにすることでプレイヤーの動体視力がよくなったような感覚を味わうことができる様にしたのである。




その第15弾アップデートで実装されると告知されたのは「未開地域『Eternal Frontier』」という、ゲームタイトルと同じ名前の地域であった。

その名前だけが告知され、その地域がどの地域になるのか、どのような所なのかなどの詳細な情報は一切流されなかったため、プレイヤーの想像は広がり、その後発表された1名限定の先行アップデートの申込率はほぼ100%という驚異の数字を記録した。


当たらないとは思いながらも宝くじを買う感覚で申し込んだ俺は、当選したことに驚きながらも嬉しさを抑えられず早速ダウンロード・インストールをしてゲームを始めた。

すると、今までのアップデートのように最後にセーブをした場所から再開され、目の前に「新しい地域が実装されました。『Eternal Frontier』に移動しますか?」というポップアップウィンドウが現れたので、俺は「Yes」のボタンを押した。


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