雨と君
アパートの自分の部屋で1人過ごす私。
外は篠突く雨。重くのしかかる灰色の空。
こんな日は何もする気が起きない。
体調が悪くなるから。
洗濯とかできなくなるから。
私から大事なものを奪ったときが雨だったから。
私の家族は10年前に交通事故でみんないなくなった。
追突されたらしい。加害者も亡くなった。
天気は今日と同じ、鉛色の空と雨だった。
ただひとり、体調が悪くて家に居た私。
そんな偶然で私は生きながらえた。
生き残ってしまった。
憎む相手も無く、ただひたすらに鬱々とした青春を過ごした。
なぜ私なのか。なぜ、私だけがこんな目にあうのか。
なぜ、なぜ、なぜ・・・・
自問自答の日々だったこと。
いくら願っても私にはもう触れられないもの。
雨になるとそれを思い出してしまうから。
私はもう誰も信じない。
もう誰にも弱さを見せない。
今までずっとそう生きてきた。これからもその筈だった。
なのに、
君は私の思いに真正面から向きあおうとしてくれた。
受け止めようとしてくれた。
いろいろなことに気づかせてくれた。
笑うこと、悲しむこと、怒ること
そして泣くこと。
君はいつも子供のように無邪気で素直で。
私にはそれが眩しかった。素敵だと思った。
ねぇ、私は少しでも君に近づけたのかな?
君のお陰で出来るようになったことがいっぱいあるんだよ?
過去と向き合えるようになったんだよ?
雨が好きになったんだよ?
私がもし、雁字搦めの心の鍵を壊すことができたら、その時は・・・。
ううん、今はまだとっておこう。
大事なことば、大事な思い。
それは自分が頑張れた時に改めて君に。
「こういう時は入れ違う傘の華、雨音が綺麗なんだよ。」
すこし切なそうにそう言った君。その意味が少しだけわかってきた気がする。
たまにはこんな天気も悪くない。
手には傘。足元は花の舞い散る雨装備。
いつもと変わらず手を振る君。
ふふっ、と少しだけ頬がゆるむのを抑えられない。
変わったな、私も。
雨が好きになれそうだ。
ドアを開け、ふと見上げると外には虹。
もうそんなに時間が・・。私はもう許されたのかもしれない。
お父さん、お母さん、ありがとう。
少しだけ、気持ちが晴れやかになったような気がした。
cali≠gariというバンドの「冷たい雨」
ここから着想を得て書きました。
外も雨模様でした。
雨という要素をもう少し活かせればよかったのですが(^_^;)