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第8話 電子攻防戦

 《登場人物》


 長宗我部 博貴 警部   (長さん)

 入船  宗次郎 警部補  (ボウラー)

 河瀬 憲仁   巡査部長 (和尚)

 古村 俊    巡査部長 (シルバーマン)

 夏目 真彦   巡査長  (先生)

 田中 悠    巡査長  (アンジェリーナ)

 佐藤 蒼太   巡査長  (ブラッド)


    ペイン  爆弾犯

 


 


 ― 同日  電子警察 ―


 



 ハッカー組の2人は、パソコンに面と向かっている。

 ブラッドは、片方の耳に遠隔通信用のインカムをつけて、キーボードを叩き、アンジェリーナは無言でキーボードを触っていく。

「アンジェリーナ。入った」

「了解です。ブラッド、サポートは任せてください」

「OK」

 パソコンの画面は、一般人が見ると首をかしげてしまうぐらいの英語や記号数字の特定の言語が表示されている。

「おお、来たよ来たよ。やっぱりファイヤーウォールをかけているわけだ。でもごめんね。仕事なんだよね」

 長はアクセルを踏み、車を操作している。車は国道11号線を辿り、ペインが指定した目的地付近へと入った。

『構うな。気にする事はない。ひと思いにやれ』

 ブラッドは、内心《申し訳ないなぁ》と思いながらも簡単にパーソナルファイヤーウォールを破り、長のスマフォに潜り込んで情報を調べていく。

 対し、アンジェリーナは裏で、ハッキングの隠蔽工作とデータの破壊が起きない様にリカバリー行動を、同時に行う。

「もう少しで。調べがつく」

 どんどんキーボードのボタンを打ち、ブラッド達は、情報をかき集める作業へと移り、およそ40秒で、長に返答した。

「あった。見つけたよ。長さん」

 ハンドルを握りながら、警部はブラッドに言葉を返す。

『その情報を取ることはできるか?』

「お安い御用だよ。ちょっと待って……できたよ!!」

『よし、その情報を辿って、場所や個人情報を特定できるか?』

「う~ん。ちょっと時間かかるけどやってみる。一応、この番号が持っている情報と電話の発信した場所についての特定はできるはず……」

 ブラッドはすぐさま行動にとりかかっていく。

 今度は、長のスマフォではなく、情報を受けた電話番号と情報を発信した場所を特定する為に長のスマフォから電子の海へと対象を変えて、入り込む。

『了解。特定できた情報は和尚に送り、向かう様に連絡してくれ』

「了解」

 長は、一度保留し、運転に集中する。

 左画面に映る映像が黒く表示された。

 ブラッドは両手を伸ばし、指や腕に溜まった疲労感を解放させて、またすぐに、パソコンの画面に向かう。

 アンジェリーナはさりげなく、ペットボトルの炭酸水をブラッドの机に置き、一言返す。

「ブラッド。気をつけないとダメですよ」

 彼女から渡された炭酸水のボトルキャップを開けて、ゆっくりと口に注いでいく。

「分かってるって。俺達がヘマするわけないじゃん」

 彼の言葉にアンジェリーナは黙って頷きながら、考えている。

 ブラッドはボトルを隣に置いて、キーボードを打ちながら、パソコンの画面表示は変わっていき、自動的に色んな番号と情報等が流れていく。

「おっ、もう少しでわかるよ!」

 彼らが、情報を特定している間に、ボウラーは、内線電話で、公安部の佐久間と捜査権について話していた。

「……ええ、そうです。はい。その件につきまして、そうですか。分かりました」

 内線電話を元の位置に戻し、ボウラーはハッカー組の状況を確認しに入る。

「状況は?」

 ブラッドは、元気よく答えた。

「絶好調! 相手は中々、手強そうな奴かな? って思ってたけど、そうじゃなかったっぽい」

 情報を特定する為に、内なる世界を泳ぎ、進んでいくブラッドに対して、アンジェリーナは少々不安に感じた。

「でも、どうもおかしいです。楽すぎます」

「そりゃまた? どうして?」

 彼女は1つの考えを示していく。

「相手は、クラウドの電子ロックをハッキングし、その番号と一緒に連動させる物を作った爆弾犯です。そんな相手がこんなに楽なセキュリティで、あたかも攻撃してくださいと言わんばかりのモノを置いておくんでしょうか?」

 彼女はキーボードを打つのを止めて、数秒考える。

 その間にも、相棒はどんどん進んでいく。彼女もその後を追いつく為に、再びキーボードを打ち始めるが、不穏な動きを感じた。

「おおお!! きた。奴の情報に辿り着いたよ」

 ブラッドはすぐさま、情報を取り込もうと行動に移す。しかし、アンジェリーナが制止させようとした。

「待って、それは!」

 


 一足遅かった。 手遅れだった。



 ブラッドは、情報が特定する為のウィルスを入れるボタンを押した。

「なっ」

 ブラッドは、彼女の叫びで気づいた。自分が罠にはまった事を。

 2人のパソコン画面には《警告:WARNING》と表示され、赤い光がハッカー組を照らす。

「まずいです! 攻撃されている。このままだと電子警察の管理情報が全て破壊されてしまいます!」

「何!? 反撃か!?」

 状況の変化とブラッドとアンジェリーナが陥っている事態をボウラーは把握した。

 アンジェリーナは、急いで、応急的な防御を仕掛けていくが、相手も攻撃を繰り広げ、展開していく。

「くそっ!? 防ぎきれない」

 防御壁から、大きくウィルスが打ち込まれていくのが分かった。

 ブラッドは負けじと、電子戦を繰り広げていくが、相手は想定していた速さ以上で、相手のスピード、威力、ハッカー組2人にとっては想定外だった。相手は凄まじい速さで、コンピュータウィルスやデータ破壊の為の攻撃を展開する。

「舐めた真似を!」

 電子警察のコンピュータを脅威から守るべく、2名の死闘が始まった。

 入船は最悪な状況を考え、急いで、地下4階の巨大なサーバールームへと向かって職場を飛び出た。一般の若者には負けないくらいの速さで走り、階段を駆け下り、4階へ向かう。

 その間も《電子警察VS爆弾魔》によるハッカー達の凄まじい電子攻防戦は続いていく。

 状況を見据えたのか、相手が攻撃を仕掛けた。攻撃方法を変え、徹底的に電子警察への邪魔と破壊に徹している模様。

 ブラッドは、相手が攻撃方法を変更した事に、負けじと罠と防御壁と反撃の狼煙を上げる為に待機している。

 その裏でアンジェリーナが、相手の情報を探ろうとするが、壁が厚く閉ざされており、破ること自体不可能だと判断し、ブラッドに告げた。

「このまま続けても埒があかないですね。とにかく私が作った餌を撒いて、相手を食いつくかせ、そこで一気に叩きましょう」

「わかった。じゃあ奴を誘導する。手伝ってくれ」

「OK。ブラッド!」

 再びハッカーカップル2人による反撃作戦を開始させる。

 数分して、奴がアンジェリーナの用意していた餌に食いついた。

「食いついた!」

 するとアンジェリーナはマイクでボウラーを呼ぶ。

「警部補! 聞こえていますか? 今どこにいますか?」

彼は地下5階のサーバー室に入り、ブレーカーの前に立っている。その隣には、膨大な情報量を管理しているサーバー。

『地下5階だ! 一度サーバーを止めるそうすれば、なんとかならないか?』

 ボウラーの声は、アンジェリーナのつけているヘッドフォンから聞こえる。片耳にマイク付きのインカムをつけている。

「相手の攻撃を止める事ができるかもしれない!」

 ボウラーは2人にサーバーの情報についての保証の有無を確認した。

『データは? 保証はあるのか』

 答えは一言。

「私達が情報を保証しますから」

 その言葉を聞いてボウラーはゆっくりとサーバーのハッチを開いてスイッチがお目見えになったことを確認する。

『もういいのか?』

 ブラッドが、入船の問いに答えた。

「ああ、ひと思いにやってくれ」

 しかし、アンジェリーナが入船の動きを止める。

「あ、待ってください! 警部補。彼が餌を食いついたんです。後、6秒、あと5秒で、分かるの。相手の居場所!」

 数秒の待機、その間にも電子警察の情報網は、破壊され続けている。アンジェリーナのパソコンに秒数単位で数値が進んでいっているのが理解できた。




《3》




《2》




《1》




《ダウンロード完了》




 緊張の瞬間だった。


「やった。掴みましたよ。相手の居場所を! 電源を切ってください。ボウラー!」

「nice! アンジェリーナ」 

『よおっし!』

 入船は思い切ってサーバーのボタンを押して、電源を落としていく。

 ブラッドのパソコンとアンジェリーナのパソコンの画面は、赤いスクリーンになっている。

「終わったの?」

「多分」

『サーバーの電源を落とした。これである程度、止まるはずだが……』

 だが、数秒後に、髑髏の絵と共にメッセージが表示される。

「これは?」

 メッセージは電子警察に宛てた物だった。最初は英語でそのあとは日本語で送られた。




 《The game has just begun. This is just the feeling A small  ゲームはまだ始まったばかりだよ。これはほんのささやかなる気持ち》








《3》




《2》



 

《1》




《0》




 赤いスクリーンは消えて元のパソコンの画面に戻った。その数秒後に、電子警察の職場が少し揺れる。

「なんだ?」

「分からないわ?」

 その下のサーバールームにいる入船も地響きか微弱な揺れを感じ取った。

 入船は、なにか嫌な予感を感じ、足を急がせ、非常階段を地下4階から1階へ駆け上っていく。一階では、県警の職員たちが一斉に外へ出ている。

 急いで走り、県警の職場を出ると、駐車場には、大きな火炎が1台のパトカーを包んでいた。

ざわめいている職員の中の1人に聞いた。

「おい! 何があったんだ?」

 職員は軽く口を押さえながら、ボウラーに向けて答える。

「パ、パトカーが爆発したみたいです。いきなりの事だったので、びっくりしましたよ」

「怪我人は?」

「幸い駐車場に止めていたパトカーでしたから誰も乗っていなかったんですけどね。大変な事になってきましたね」

 職員は眉間にしわを寄せて、燃え盛るパトカーを何とも言えない表情で返した。

 それに対して、ボウラーは、ある事を職員に訊く。

「待ってくれ。あの車は新型か?」 

「いえ、違うと思いますが」

 急いでスマフォで長に連絡をボウラーは掛けた。

「かかれ。かかれ!」

『俺だ』

 ボウラーのスマフォから長の声が響く。彼は、急いで目の前の光景とそれ以前に起きた事を告げた。

「大変だ! 奴の攻撃を受けて、県警で爆破が起きた!」

『何!?』

 通話をしながら、火炎に包まれたパトカーを見つめると、他の職員達が、消火器を持って、パトカーの消火に当たっている。

「やられたよ。ブラッドとアンジェリーナがお前のスマフォにかかった爆弾魔の電話番号を調べたんだが……逆に攻撃をくらっちまったよ」

『みんなは無事か?』

 軽くあがった息を整えてながら、状況について話していく。

「幸いな。だが、とんでもない事になった」

『良かった。それで、調べはついたか?』

「一応、調べは付いた。今から和尚に連絡して向かわせる」

 長は、通る道路の方向標識を確認している。もう少しで目的地点である一番町付近へとたどり着けるのを確認した。

『了解。一応、今後、公安と捜査権の話し合いをしないといけないだろう』

「ああ、公安の佐久間には話さないと流石にマズイな。どうやらペインの奴は、本気らしい」

『そうか。一応、国道11号線の、枝松町付近だ。あと20分で大街道付近に向かう。和尚が被疑者を確保したら、こちらの援護に向かうように連絡してくれ』

 外の騒ぎを聞きつけて、公安の職員達が走ってこっちに向かって来ている。

「分かった。連絡しておくよ。おっと公安の奴らだ。俺が代わりにやっておくよ。通話切るぞ」

『ああ、すまない。じゃあまた』

 通話をやめ、ボウラーはスマフォを右ズボンポケットに片付け、佐久間達が近づいてきたのを確認した。

「何事です!? 入船警部補」

 察しがついてない佐久間に対して、軽いため息混じりで、彼の視線を誘導させながら、ボウラーは皮肉混じりの答えを返した。

「ご覧のとおり、都市部でキャンプファイヤーですよ。あいにく薪がパトカーですけどね」

 言葉通りにパトカーが炎上し、消火活動に必死にあたっている職員たちを見つめている。

「くそっ!? 何て事だ。これが警部補の言っていたペインの仕業なのか?」

「ええ。パトカー1台分の予算が吹っ飛びましたね、どうやら奴は本気の様ですね。しかし、1つ言える事は、俺達、愛媛県警に……いや、警察官に対して舐めた真似をしてくれたという事だと思いますよ」

 ボウラーの心は、犯人に対する呆れと怒りが混じったもので煙となって押し寄せてきていた。





 タイムリミット19:00まで ―― 残り 4:35 ――


第8話です。色々と大変なことになってきました。


さて、次の展開は一体どうなるのか!? ってことで第9話をお楽しみに!!


話は続きます!!

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