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第5話 技術者 越智警部補

 《登場人物》


 長宗我部 博貴  警部   (長さん)

 入船 宗次郎   警部補  (ボウラー)

 越智 恵果    警部補  

 



 ― 同時刻 愛媛県警 地下3階 ―




 入船と長の2人は、電子警察のある職場の地下3階の廊下を歩いている。

「長さん。実は、電子警察の技術係の挨拶まだだったろ?」

「ああ、確かに、メンバーリストには載っていたんだが、捜査会議の場には居なかったな」

「今からその人に会いにいくわけ。今は開発室におるよ」

 歩きながら長は、納得した。

「なるほど。だから歩かされているわけな」

 入船は軽くウィンクして長に返す。

「そゆこと。一応、電子警察の職場だから、電子警察技術課としての扱いになっている。で、ここや」

 電子警察と同じ自動ドアの出入り口が設けられている。

 自動ドアが開き、2人は、中へと入った。技術課の内装は綺麗な研究室のように白を基調とした作りとなっている。

「ここが技術係の職場だよ。今は、1人しか所属してないけん。あんまり知られてないんやけどね。あ、おった。おった」

 ボウラーは奥の窓ガラスの方を示す。長は彼が示す奥の方へ見つめると、女性が立って、工具用のガスバーナーを使って何かの業務をやっている模様。

 数分、見つめていると、2人の姿に気づいたのか、バーナーを止めて、溶接ヘルメットを外して、軽く手を振って挨拶した。

 黒長髪美人で、しかも白衣が似合っているという普通の一般男性にとっては、ご褒美でもありそうな所だが、残念。

 

 彼女は刑事である。

 

 長は、そんな事を思いながら入船と共に開発室へ歩き、ボウラーが越智に声をかけた。

「調子は?」

「最悪。溶接用バーナーがうまく付かないんだから、全くこのポンコツが。あれ? この人は?」

 ボウラーが長と越智に対してそれぞれが理解しやすく、交流が持てる様に、それなりの紹介をする。

「ああ、この男が本日付で電子警察隊長を拝命した長宗我部 博貴警部。で、こちらの技術係が、越智 恵果警部補だ」

「どうぞ。よろしく」

 長宗我部は、左手を差し伸べた。

「あ、ごめんなさい。私、潔癖症なの」

 いきなりの対応。長は多少の苦笑いで返し、手を戻す。

「あ、いや大丈夫だ」

 越智は、少々申し訳なさそうに感じ、長に頼む事にした。

「そのお近づきの代わりだけど、これを試して欲しいの。ちょっと来てもらえるかしら」

「えっ?」

 越智に言われながら、彼女の姿についていく。彼女は開発室の隣の部屋に入って、電気をつける。

「警部。あなたが前の職場で使っていた拳銃のタイプは?」

「ああ、俺はグロックの17だ。警視庁も色々と拳銃のバリエーションに目を向けてくれてな」

「なるほどね。なら丁度、良かったわ」と越智は、そう言いながら、1つの大きめのアタッシェケースを奥から持ってきた。

「なんだそれ?」

 長は首をかしげながら、ケースを見つめている。

 彼女はケースの鍵を開き、中身を取り出した。

「これを」

 中身は、1丁の拳銃。しかもその拳銃は、長が使用していたグロック17とそっくりな物だった。

「電子警察の規定使用銃よ」

「グロック17が?」

「いいえ。このグロックは、外国には存在してないの。日本の独自モデルなのよ。グロック社と防衛省、そして国家公安委員会が極秘で作り上げた拳銃よ。名前はグロック19.5。ネーミングセンスは最悪だけど、日本人に合わせられた最高の拳銃よ」

 長宗我部は、Gを手に取り、自分の手にフィットするかどうかを確かめる。前の職場で型は違うがGを使っていたのである程度の違和感は、感じなかった。

「なるほどね」

「装弾数は日本人のサイズと重量に合わせられて、13+1発に抑えてるわ。あ、それとうちの部署では実弾用とゴム弾用のGを2丁、渡してるの。まぁ、大抵の職員は、ゴム弾の方を使っているけどね。どう? 試してみる?」

「いいのか?」 

「だからこその射撃場よ」

 越智は指をある場所を示した。そこには人の形をした的があり、真ん中から50・30・10・0と示されている。

 長はゴーグルをつけ、射撃場に立つ。弾倉マガジンを装填し、Gを的に向けて構える。手触りのいいグリップ。前の職場で、愛用していた拳銃を思い出す変わらない銃口マズル

 慣れた手つきで長は、黒い的を目掛けてGの引き金を引き、4、5発、的の30~50の近くに当たっているのがよく分かる。

 入船は長宗我部の射撃を見て、少し驚いた表情をしながら軽く4.5回手を叩いて褒めた。

「やるじゃないの。長さん」

「普通だな」

 拳銃を自分の空いたホルスターに、しまった。

「気に入ってくれたようね。長さん」

「前のより軽くて使いやすい。これが電子警察の規定携行銃ってわけだな」

「ああ、そうだったわ。あなた警察手帳ある?」

「あるが、それがどうしたんだ?」

 越智は、警部に右手を差し向けた。

「渡して頂戴」

 少々、疑問に感じながら、警察手帳を彼女に差し出す。

 長が手渡した手帳を、越智はそのままゴミ箱に叩きつける。警部は越智の行動に少し焦った。

「ちょっ!? おい!! 警察手帳を捨てるなよ!」

 彼女の行動に対して、長は大きなため息をして、入船の方向に両手を挙げて軽く笑っている。

 ボウラーはやれやれと首を軽く横に振った。

 越智は、長に告げる。

「この警察手帳はアナログなの。分かる? 電子警察は全てデジタルで考えないって事で、はい」

 白衣のポケットから一つの警察手帳と同じ大きさと同じ形、色の手帳を取り出して、警部に手渡す。

「電子警察専用の手帳よ」

 渡された手帳を長はゆっくりと開いてみた。するといきなり、ホログラムで警察の紋章である桜の代紋が表示される。

 長は、電子化の影響を直接受けて、カルチャーショックというべき衝撃を感じた。

「なんかよく分からないがすごいものだな。これ」

「なんせ、特殊ですもの」

 入船は、背伸びをして後で2人の間に入る。

「さて、もういいかな? お二方?」

「ああ、すまない」

「じゃあ越智警部補との挨拶も済んだ事だし、捜査しますかね」

「そうだな」

「捜査? ああ、あの爆破事件ね~。物騒なことしてくれたわね。こんなド田舎でも起きるものね。こういう事件」

 入船も首を縦に振りながら頷いている。

「だな。電子都市化も考えものだな」

 越智は、研究用の机にあるタッチパソコンの画面を指でなぞりながらクラウドが爆破した映像がコマ撮り表示した。

「ええ、技術のプロとして考えるなら~犯人は車のエンジンに爆弾を仕掛けているはず。この映像を見て欲しいの」

 画像を見ると、爆風が下から発生しているのが、理解できる。

 2人の刑事が、技術者の用意したコマ撮りの映像を観察して話した。

「下から爆風が起きてるな」

「ああ、しかもそこから次のコマ撮りの画像は、爆風の影響で大きく車を持ち上げているのが見えるな」

「これで、ますます車に爆弾が仕掛けられている事が近づいていきたな」

「しかも、これが1件目。もしかしたら2件目が起きる可能性は十分あるわね」

「なるほどな。よし、長さん、俺はブラッドとアンジェリーナと共に、内なる世界で調べてみるわ。この事件を」

 内なる世界=ネットという事をすぐに察知して、長は、入船の空気を読んで返す。

「じゃあ俺と先生が爆破現場に向かって調べてみるとするか。再び。何かあるかもしれんからな」

 新しい警察手帳のメモ機能をタッチして記録をとどめながら予定を書いている。

「外なる世界の捜査は任せるよ。俺はどっちかというと内勤派だからな」

「そうか、まぁ、行きますか。じゃあ越智警部補、また来るわ」

「じゃあね」

 2人の刑事は研究室を出て行く。

 越智は軽く見送ったあとで、再び自分の業務へと入ろうとしたところ、再び研究室の自動ドアが開き、長が入って来た。

「あら、どうしたの?」

 長はゴミ箱に入っている手帳を取り出して、越智に告げる。

「デジタルもいいが、やっぱり俺は、アナログだな」

 そう言って、手帳を軽く左手で叩きながら、軽い微笑みを彼女に見せて、研究室を後にしていく。

 越智は、長の言葉を受けた。

「そうね……そうかもしれないわね」

 彼が研究室を出たあと、彼女は再び業務に入る。

 研究室を出て、地下3階の廊下を歩く長は、入船にふと尋ねた。

「なぁ?」

「ん? 何? 長さん?」

「もしかして越智警部補にもあだ名があるのか?」

 入船は簡単に答える。

「ああ、越智警部補のあだ名は《落語家》だな」

 長は彼の言葉を少し考えると、なんとなく理由が分かり、その答えを言った。

「なるほど。越智=オチだけにか?」

 だが、その答えは外れていたみたいで、入船は首を振って否定している。

「いいや、違うよ」

「違う?」

「彼女、元落研出身なんよ。松谷大の」

 ボウラーの言葉に、長の脳が鋭い刺激を浴びた。


さて今回は、電子警察の技術者に会う回でした。


次回はどんな展開になってくるのでしょうか!?


お楽しみに!!


話は続きます。

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