表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/30

第4話 再会。

 河瀬 憲仁    巡査部長 (和尚)

 古村 俊     巡査部長 (シルバーマン)


 八嶋 寛人    松谷大学電子学部教授

 


 ― 松谷大学 10号館 電子学部研究棟 ―




 私立大学、松谷大学。法・経済・経営・薬・社会・電子・工学の7学部で形成される。四国・中国地方では最大の私立大学とされ、この大学出身の就職率はほぼ90%とされ、人気の大学である。




 シルバーマンと和尚の2人はクラウドの電子ロックシステムの研究・作製に携わっていた研究者が大学にいる事を受け、話を聞きに大学へ来ている。

「懐かしいな。俺達の母校だ。なぁ、和尚」

「懐かしいね。ここを卒業して7年だよ」

 松谷大学出身の2人にとって、母校に来たのは久しぶりだった。

「もうそんなになるか。八嶋教授なー、電子学を専攻した時、よく怒られてたわ」

「ゼミの指導教授だったっけ?」

「ああ、まさか今度は、仕事に就いてから話を聞くとは思ってもみなかったがな」

「あ、着いた」

 2人はエレベーターを降りて、つながった廊下を歩き、研究室へと向かう。

「そうそう。こんな内装なんだよな。外装は綺麗だけど中は古ぼけててるって奴でさ」

 2人が廊下を歩いていくと部屋から1人、若い茶色味の帯びた普通そうな髪型の男子学生が出てきた。 彼は廊下を歩いていると、刑事2人に気づき、軽く会釈をして、すれ違う。刑事2人もその会釈に答え、軽く礼をした。

 すれ違った学生は、エレベーターのボタンを押し、そのまま待つ。

「そうだ。今回の事件終わったら、長警部の歓迎会でもどうよ?」

「そうだな。仕事終わってからにしよう。和尚」

 うんうんと頷いている和尚。

「お、ここだ」

 ある程度廊下を歩いて、それぞれの研究室のドアを見て、やっと目的の教授がいる研究室につく。

 そこは、丁度、会釈をしてきた学生が出てきたところだった。




  《電子工学・通信工学 教授 八嶋 寛人》




 シルバーマンがドアをノックして、反応が来るまで待つ。

「はい。どなたかな?」

「お久しぶりです。古村です」

 ドア越しから声がすぐに返って来た。

「入りなさい」

「失礼します」

 古村はドアを開けて、中には入り、続けて河瀬も中へとはいる。

「失礼します」

 研究室では、八嶋がパソコンで作業をしながら、軽く視線をドアの先に目をやった。

 目をやった先には色違いスーツ姿の男2人。八嶋は確認し、彼らに軽い挨拶をする。

「おお、久しぶりだな、古村に河瀬。元気か?」

 笑顔で答える教授に対して、軽めのジョークを和尚が言った。

「お久しぶりです。相変わらず立派な白髭で」

 対面側の中年は、軽くほくそ笑んで返す。

「やかましい。大きなお世話だ。それよりお前ら、刑事になったんだってな?」

 シルバーマンが話を続けた。

「そうです。おかげさまで刑事課に配属になりまして……」

 八嶋はメガネを外して、ケースに置く。

「という事はなんか? 事件のことでも話来たか? しかも儂に訊きに来たって事は、電子絡みの……」

 察しの早い八嶋に、刑事2人は、苦笑いをこぼしながら、和尚が答えた。

「さ、流石、お早い事で、実を言いますと、教授が携わりました、クラウドの事でお伺いしまして」

「ああ、あれか? あれがどうしたんだ?」

 シルバーマンは尋ねる。

「教授の担当は? どの部分でしょうか?」

 八嶋は自分が担当した時の過去を遡り、自分が担当した箇所を思い出しながら、答えた。

「どの部分って言われるとあれだな。儂は、電子ロックとGPSの通信管理とか開発とかは諸々、手伝ったな。それが?」

「この前の爆破についてご存じですよね?」

 首を縦に降って反応する。

「ああ。あれか。知っているよ。それが?」

「専門家の意見をお訊きしたくて」

「残念だが、あれは爆破の専門家に訊くべきだな。聞くところを間違っておる。だが、どういう方法で爆破したかというのは簡単だろうな。あれは電子ロックによる、暗号を用いた爆破だ」

 2人の刑事の予測は当たった。捜査会議でもその話は出ていたからである。

 八嶋は自分が触れているノートパソコンの画面を2人の刑事に見える様、動かして説明した。

「これを見てくれ。クラウドには、12桁と26文字のアルファベットを無差別に並びこまれた暗号を電波に乗っけて飛ばす物が採用されているんだが、犯人は無差別に、この暗号を自動的にハッキングし、あの車の電子ロックと番号を符合させる機動爆破装置を作ったか……」

 和尚は、八嶋の考えを手帳に記し、シルバーマンは話し手に回って聞いている。

 教授はさらに、考えを述べていく。

「あとは、電子ロック自体をハッキングして爆破したか……どっちかだろうな」

 シャープペンの芯が走る音が部屋内の3人の耳に響かせる。シルバーマンは話を続けた。

「なるほど。参考になります。でもハッキングって無理じゃないですか?」

 シルバーマンの問いに白く綺麗な髭を撫でながら意見を否定する。

「いいや。クラウドの場合は、容易だ。あの車の電子ロック管理は、衛星を経由して、クラウドの作り元である車開発大手のウェザー社の本社サーバーで管理されておる」

「なるほど。しっかり管理されているわけですね」

 和尚とシルバーマンは八嶋の説明を知り、記憶に留めながら話を聞いた。

 彼は話を続ける。

「ああ。あ! そういや、この前のニュースで知ったんだが、ウェザー社、サイバー攻撃を受けたらしいぞ」

 2人は話を聞いて、両者共に何かを感じた。

 和尚は一応、確認を取ってみる。

「本当ですか?」

 和尚の言葉を耳にした八嶋は、若干、呆れを含みながら返す。

「新聞読め。読んでないのか?」

「お恥ずかしながら、読んでないです。忙しかったもので、アハハハ」

 ぎこちない笑い声。八嶋は和尚の態度を見て、ほくそ笑んだ。

「だが、結局は、何んも残らず、消し飛んでしまったんだろう?」

「車ですか? ええ。木っ端微塵に爆破されましたよ」

「なるほど。まぁ力になれんが、もし何かあったら私の所にいつでも来るといい。愚痴でも嫌味でも聞いてやるよ。まぁ、こっちの愚痴が多くなりそうだがな。はははは」

 八嶋はそう言って大声で笑う。

 それと同時に2人も八嶋のジョークに応える様に笑った。





 ― 松谷大学 10号館電子学部研究棟 エレベーター ―





 2人の刑事とすれ違った学生は、イヤフォンをつけて、エレベーター内でスマートフォンから動画を見ていた。

 動画の内容は監視カメラの映像。その映像はスーパーの駐車場の映像。

 クラウドが大きな爆破音を発生させながら、周りの物を吹き飛ばしていく。

 動画の再生時間が終わり、学生は、もう一度、動画の再生ボタンをタッチして、再生する。

「これで1台目か……次はどれにしようかな?」

 再び画面では、爆風と火炎と共に吹き飛んでいく。

 学生は、その映像を見つめながら、不敵な笑みを浮かべていた。



第4話です。今回から捜査開始ですね。


次は長さん回です。

お楽しみに話は続きます!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ