表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/30

第22話 目覚め

《登場人物》


 長宗我部 博貴 警部   (長さん)

 入船  宗次郎 警部補  (ボウラー)

 河瀬 憲仁   巡査部長 (和尚)

 古村 俊    巡査部長 (シルバーマン)

 夏目 真彦   巡査長  (先生)

 田中 悠    巡査長  (アンジェリーナ)

 佐藤 蒼太   巡査長  (ブラッド)


    ペイン  爆弾魔

― 午後5時 ―



「警部! 警部!」

 仰向けで倒れている長は聞き覚えのある声に、目を開け、その方向へ首を向けた。依然として、腕や膝から発している激痛を我慢している。

 視線の先には先生が見えた。

「良かった! 大丈夫ですか?」

 先生の言葉に、少々、ぼやけながら耳に響いてくる。

「スタントマンってこんなに体張るんだな。彼らの仕事の苦労がよく分かるよ」

 長の皮肉が小気味よく聞こえる。外は酷い様だが、中が元気だから大丈夫だろうと先生は安堵した。

 仰向けから、なんとか力を出しながらゆっくりと立ち上がる。膝の激痛がひどい。下から上へと痛みによる気分の悪さが響いている。

「大丈夫ですか?」

「ああ、心配するな。一杯、飲みたい気分だよ」

「解決したら歓迎祝いしますよ。警部の」

「死ぬ前に頼む」

 数名の警官が橋のガードレールのところから転落した車の様子を伺っている。赤く燃え上がり、灰色の空気がはしから空へと舞い上がっているのが見えた。

 長はゆっくり負傷した腕や足を見ながら、先生に今の状況を訊く。

「それで奴は?」

 先生は少し苦そうに答えた。

「現在、ペインの奴は松前町に向かっています。松前町の方には和尚達が……」

 長は先生の言葉を聞いて予測していた状況に的中し、同じ苦い顔で返す。

「やっぱりか……」

「えっ? 奴を予測してたんですか?」

 長は、激痛の走っている部位を両手で押さえながら告げる。

「奴はまた電話をかけると言っていた。……そこから考えると奴はまだ用意してあるはず」

「まさか」

 自分の推理を長は周りの状況を見ながら呟く。

「どでかい花火を用意しているだろうな。相手は一般の市民に対して恐怖を煽ろうとしていたからな。可能性はあり得るだろうな」

 ゆっくりと停まっている電子警察専用の車へ向けて、長は立ち上がって歩き始め、他の警察官達に指示していく。

「この道路を緊急封鎖してくれ! 先生、運転してくれ。時間がない」

「わかりました」

 長はゆっくり助手席のドアを開けて、乗る。先生は運転席へ乗り、シートベルトを締めた。

「クイーンアイランドへ向かってくれ! 決着をつける」

「了解!」

 先生の足がアクセルペダルを強く押し、車が前進。

 走り出した。




― クイーンアイランド 午後5時半 ―



 クイーンアイランド、最近オープンした複合型レジャー施設。愛媛県民のほとんどが一度は絶対行くであろうと言われる場所の1つとなっている。

 現在は、地方のゆるキャラが一同を介して行うイベントがおこなわれていた。

 ペインは、何も気にせず、施設の中へと入り、色々なテナントに入ってある店を目で物色したり、観察したり、しながら目的の場所へと向かって歩く。

 やはりイベントもあってか、人の数は夕方でも多い。

 次、ここを自分の作品で吹き飛ばすと考えると何より興奮していた。

「早くやらないと、楽しみが半減してしまうからな……急ご―」

 ペインは足を早めてスタッフ以外立ち入り禁止の場所へと入っていく。

 その時のスタッフルームにつながっている電子ロックを開錠するのはとても楽。警察と相手するより数段以上楽だった。

 持っていた簡易型ハッキングパソコンを駆使し、簡単に電子ロックを開錠した。

「楽勝楽勝」

 慣れた手つきでデジタルの開錠を行っていき、数字の羅列を並べていく。数分もせずにドアは開き、スタッフ専用のルームへと入った。

 気配を感じ取られない様に、ロッカールームへ向かい、スタッフの用の衣服を取る。

 警備スタッフ用のジャンパーを着て、専用のキャップをかぶり、背負っていたカバンを近くの台車に入れて、スタッフルームを出た。

 そのまま、クイーンアイランドの入口へと向かう。

 第1段階は完了。計画は第2段階へ。ペインはカバンから一つの100円ロッカーのカギを取出す。時間は間もなく5時半を過ぎ、40分になろうとしている。

「急がないと……」

 若干、自分が予定していた時間より遅れが出ている何としてでも時間通りの計画を完遂させなければ意味がないと自分自身考えていた。

 ペインは時間通りに完遂する為に、台車を押しながら足を急がせる。

自分が借りている100円ロッカーを見つけ、近づいて鍵をロッカーに差し込み右手で回した。

 ロッカーのカギは開錠され、ドアを開く。中には1つのリュックがあり、ペインはそれを取り出し、カバンの中身を確認する。

 中身はデジタル時計の電子板の時限装置が1つ。

「これこれ」

 辺りに人がいない事を彼は確認し、リュックを台車の箱の中にゆっくりと入れる。その後、再びロッカーから施設の大広場へと向かって歩き始めた。

 サイレンが聞こえる。聞き覚えのあるサイレン。しかし、ドップラー効果が起きる事なく、施設内でサイレンは消えた。

 爆弾魔は自身の耳でクイーンアイランドに警察が到着しているのをパトカーのサイレン音で聞き取り、自分の眼で施設の駐車場に向けると、既にパトカーが数台駐車場で停まっている事を確認した。

 そこから警察官の姿が、ぞろぞろ現れているのが見える。

 奴らのお出まし。ペインは、警察官に自分の顔がばれない様に帽子を深くかぶり、広場へ歩いて向かった。


 第22話です。 電子警察もが総出でペインを逮捕できるのか……それともまたペインに翻弄されるのか?


次回をお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ