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第20話 爆破 

《登場人物》


 長宗我部 博貴 警部   (長さん)

 入船  宗次郎 警部補  (ボウラー)

 河瀬 憲仁   巡査部長 (和尚)

 古村 俊    巡査部長 (シルバーマン)

 夏目 真彦   巡査長  (先生)

 田中 悠    巡査長  (アンジェリーナ)

 佐藤 蒼太   巡査長  (ブラッド)


    ペイン  爆弾魔

  -午後4時過ぎ-



 長宗我部は配達車を走らせている。自身の左耳にインカムをつけ、ハンドルを持ち、アクセルを踏んだ。爆弾の制限時間は2分を切ろうとしている。

 配達車は、長の運転により、誰もいない爆破しても被害が被らないと思われる安全圏へ向かっていた。その場所を示すヒントは地図にある。

 大街道から2.3キロ程離れた先に川が流れており、その川は長い。愛媛県では有名な石手川である。

 長はそこに向かっていた。爆弾が搭載された車に乗って。

「急げ! 急いでくれ」

 長はハンドルを軽く叩き、クラクションを鳴らしながら車を走らせる。運転しながら長は、ブラッドに連絡を掛けた。

「俺だブラッド」

 パソコンのコール表示を見てすぐ連絡をブラッドは取った。

『長さん!? 大丈夫か!?』

「最悪。今からペインの居場所を割り出せないか?」

 ブラッドのキーボードの音がよく聞こえる。

『大丈夫。もうやってるよ』

「すぐ特定してくれ!」

『長さんはどうするんだ?』

「俺は、ペインが仕掛けた爆弾を遠ざける後で連絡を……」

『了解』

 ハッカーとの交信は終了した。再び長はアクセルを強く踏む、バロメーターは5から6へ。

 幸い車の列はない。長は思い切り、踏んで、配達車を走らせた。向かった先は石手川の上にある橋。

 ちょうど人気もおらず、小さい子が川で遊んでいる気配もなかった。爆破させるには、絶好の場所であるが、しかし時間は残り1分だけ。もう時間はない。

 長は自分のことなど考えていなかった。自分の体がどうなろうが良かった。

 今、自分が座っている真下に爆弾があり、火薬とガソリンが積まれた車両を、自分の手と足で、操作し爆破させようとしているのだから。

 ペインの別れの挨拶という意味も何となく理解できた。そうしているうちに配達車は、大きなエンジンと車の走行音を響かせながら橋へと近づいていく。

 目の前にある橋が近づいてきた事を長は目で確認し、シートベルトを外し、ドアのロックを開けた。その間にもアクセルは踏み続けている。バロメーターは8。

 橋まで10メートル。歩道に侵入し、橋へと近づく。

「ままよ!」

 長は思い切って配達車の運転席から、車外へと飛び降りた。

 その瞬間、警部の体をアスファルトが直撃する。身体は横に回転しながら倒れていき。衝撃が長を襲う。

「ぐっ!?」

 手や腹、膝に足、様々な体の部位からひどい痛みを感じ、額と腕、足が衣服を通り越して、赤い液体が流れ出ているのが分かった。

 その間に配達車は、橋の歩道に侵入し、橋のガードレールを破壊し、そのまま橋の下へと転落しようとしている。

 長の眼にはスローモーションで配達車がカードレールを突き破って橋の下へと転落する瞬間を目の当たりにした。車とガードレールが衝突した瞬間の衝撃音はとても大きく、耳鳴りがしそうな金属音が生じ、ちょっと離れた距離からでもよく響く。

 配達車は、空転するタイヤの轟音を響かせながら真下の川へ落ち、ボンネットから川底の岩や石の集まりに直撃し、その数秒後に大きな爆風と火炎の竜巻を起こし、大きな衝撃と炸裂音が生じた。

 橋の下から大きな熱気を長は感じ、安堵と共に自身の視覚が赤く感じて、気分が悪い。

 痛みの余りに気が遠くなりそう。ちょっとの間、長は目をつぶる。激痛が収まるまでは、立ち上がる事も言葉も出す事すら出来なかった。



 ― 電子警察の職場  同刻―



 ブラッドとアンジェリーナの2名は、急いで、調べを進めていた。

 長のスマートフォンをハッキングした時、データ自体が残っている事から、彼の安否は確認できた。

「やった! 長さん生きているぞ」

 ブラッドの言葉を和尚とシルバーマンは聞いてそれぞれ安堵している。

『良かった!』

『良し! やった』

 テレビ通話越しに聞いていた和尚は、ブラッドに告げた。

『ペインの奴は!?』

 パソコンのキーボードを操作し、特定する。案外簡単な物で、すぐ特定できた。

「あいよ。奴はどうやら舐めてかかってきてるのかな? のこのこ移動してるよ」

 アンジェリーナもそれに付け加えながら返す。

「ペインも移動状態をGPSをハッキングした状態で送ります。まだ気づかれていないのが、幸運でした」

 データを車のカーナビに送信する。

 カーナビには、赤い点が表示されている。少しずつ少しずつ、動いているのが分かった。しかし、移動している点は統一的に動いており、車より速く移動。

 カーナビの赤い点について、和尚は疑問に感じた

『どういうことだ? 奴の移動が速すぎる……』

 隣の助手席に座っているシルバーマンも不思議に感じていたが答えがすぐに見つかった。

『これはまさか!? 電車か!』

 和尚は、耳越しで連絡を取っているブラッドに告げる。

『市電だ! 奴は松谷市電で、隣の松前町に向かっているぞ』

 アンジェリーナはマップの拡大情報を和尚達のカーナビに送り、和尚に聞こえる様に言った

「松前町には、巨大なレジャー施設がありますね。マップの拡大した情報をそちらに送りました。ご確認を……」

『了解』

 ブラッドは隣で彼女が拡大した情報を見つめ、別の情報を検索する。検索したのは市電のリスト。リストには、到着地と到着時間が詳細に記されている。

 そこから、ペインが乗っている市電の車体番号等をブラッドは調べ、ペインが乗る電車の駅を特定した。

 電車は、アンジェリーナの言っている施設の駅に到着する予定で、おそらくペインもそこに降りるだろうとブラッドは考えた。

「その施設にペインが乗っている電車が着くはず」

 表示されている地図で続く場所についての詳細を和尚の隣でシルバーマンが調べていく。そこには大きな建物情報表示がされている。

その施設は最近できたばかりで、愛媛に来た観光客や愛媛県に住む人々が訪れる場所だった。

 最近は、47都道府県のマスコットキャラクターが集まったお祭りイベントが開催中で人がより密集している状態である。

 


 《大型複合施設 クイーンアイランド》



『クイーンアイランドか!?』

『奴の次の標的はそこか! ッくそ!』

 シルバーマンはボタンを押して車の屋根にパトランプを置き発灯させる。その隣で和尚はハンドルをしっかり握って、アクセルを力強く踏み急がせた。

『すぐに向かう!』

 2人が乗る車は力強いエンジンを上げて、レジャー施設に向けて走り始めていく。車の屋根に付いたパトランプから特有の音が鳴り響いた。


第20話です。まさかの20話突破という事でいつも読んで頂きありがとうございます。


次回も続いていきますので宜しくお願いいたします!

話は続きます!

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