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第12話 赤い箱

 《登場人物》


 長宗我部 博貴 警部   (長さん)

 入船  宗次郎 警部補  (ボウラー)

 河瀬 憲仁   巡査部長 (和尚)

 古村 俊    巡査部長 (シルバーマン)

 夏目 真彦   巡査長  (先生)

 田中 悠    巡査長  (アンジェリーナ)

 佐藤 蒼太   巡査長  (ブラッド)


    ペイン  爆弾犯

  


  ― 同日  大街道 ―




 長は、捜査員達の知らせを受けて、大街道から銀天街へと走って移動している。

 知らせの内容は、ペインの言う赤い箱と言われた通りの赤い箱の不審物を発見した事。そして近くには、監視カメラもある。

 知らせている捜査員達の元へ長と先生は急ぐ。心の中では、不審物が爆弾と本物であって欲しい事を願っていた。

 警部が向かった時には、既に爆弾処理班の数名が用具を持ち、別の方角から向かっているのが見える。

 先に着いた捜査員達は市民になるだけ悟られない様に不審物を見張っているが、その姿は刑事だと逆に教えている事に気づいていない。

 市民は無関心だったり、横目で見たりとするが反応は皆無。皆、命の危険が迫っている事を知らずに自分の目的、好きな事、仕事、買い物、遊びをして過ごそうとしている。

 長と先生の2人は、商店街にいる市民たちを避け、急いで向かった。

 


 そんな中、別の場所では動きがある。


 

 監視カメラ越しで警察の動きがあった事をペインは自らの目で写された画面を見つめた。

「おお、見つかっちゃったわけね」

 画面の映像は、数人の捜査員達が、赤い箱を見つけ、辺りを一般人に気づかれない様に囲んでいる。

「ははは。バレバレだろ。その動き」

 ペインは映像しっかり確認しながら、机に置かれたキャラメルポップコーンの入った容器を取って、数粒、つまんで口に入れた。

 キャラメルの濃厚な甘さが、警官達の必死さと交互に混ざり合っている感覚を覚え、病みつきになろうとしている。

「さて、どう動くかな? 長・さ・ん?」

 長は移動しながら、通話を電子警察のハッカー組にかけた。

『はいよ』

 相手はブラッド。

 彼はそのままキーボードを操作している。独特なタイプ音が、長の耳によく聞こえた。

「頼みがあるんだ」

『なんだい?』

 長は、ブラッドに向けて、頼みを告げる。

「今から大街道と銀天街、後は県庁や市役所付近までの監視カメラをハックすることは可能か?」

 長の頼みに関して、ブラッドは即答した。

『ちょっと時間が必要になるけど可能だよ』

「どのぐらいだ?」

 キーボードを叩きながら彼は答える。

『10分~15分だね。でも任せといてくれ!』

「分かった。頼むぞ」

『おうさ!』

 通話を終了し、長は足を急がせた。不審物を見つけた捜査員達は、周りを見て、長や爆弾処理が来ないか待っている。

 捜査員の1人の目にこっちに向かって走ってきている男2人を見つけた。

「あ、来たぞ!」

 長と捜査員達は合流し、状況を確認。

「ご苦労様です。これが不審物か」

「ええ、カメラの位置からしてこれではないかと」

 捜査員が指を示した先に監視カメラが置かれ、レンズが長達を見つめている。

 長自身、捜査員の話を聞いて深い溜息が漏れた。

「ちょっと失礼」

 先生は不審物を囲んでいる捜査員を避けて、不審物の写真を撮り、大きさや、形状、中身をしっかりと確認していく。

「それで中は確認したのか?」

 捜査員は、落ち着いた口調で告げた。

「一応、確認はしました。で、処理班の茂手木さんがこっちに……」

 長はカメラの方に鋭い視線を当てながら言う。

「そうか。解除は、ここで行うしかないかもな。奴が監視している限り」

「ええ、そうですね」

 先生は、上着を外し、赤い不審物の蓋を開けた。

「おいおい、何してるんだ!?」

 捜査員の一人が、先生の行動に驚いているが、先生は冷静な表情で答えながら不審物の蓋を開け、ポケットから小道具セットを取り出す。

「えっ? 今から解除するんですよ。茂手木さんが来るまでには時間が掛かるでしょう? 心配無用です。これでも私、元処理班でしたから。ははは」

 先生の爽やかな愛想笑い。長には何から何まで理解できない状況へと入る。

「責任は電者デンシャが持つわけですね?」

 捜査員は、さりげなく呟いた。

 長の脇腹にさりげないボディーブローが入ったような気がしながらも、投げやりで返す。

「責任でも、愚痴でも嫌味でもとってやる。その代わり、手柄はうちのだぞ」

 そんな中、先生は不審物の四方を止めているボルトを外し、慎重に不審物を触れていく。

 不審物の中を守っているプロテクトを外すとそこには、サスペンスやアクション映画、フィクション映像の世界によくある構造の爆弾だった。

「あららら、こりゃまた、ペインの奴、面倒な物を作ってくれましたね」

 長は、先生に訊く。

「何、どういう事だ?」

「見てください。ここ」

 先生の指が示した先には、ピンボールの様に、半径2センチの鉄球が装填されている。

「制限時間が切れると、あの鉄球が射出されて、真ん中に、鉄球が運ばれます。運ばれた先にある穴に入ったら、作動しちゃって……」

「作動しちゃって?」

 捜査員の1人が繰り返して聞き返すと、先生は軽い笑顔で返した。

「知らないほうが身の為です」

 捜査員及び長宗我部は、先生の一言である《作動しちゃって》という言葉の後の文章がそれぞれで察する事ができ、なんとかして気を紛らわせようとしている。



 捜査員達が考えた擬音語で言えば《ドカーン!!》《ドーン!》。脳裏の映像は、大規模な爆破映像が流れるが、音響は乏しい。



 最悪の結果から免れる為に先生は、爆弾の解除に取り掛かり始めるが、すぐ手が止まる。彼の後ろで見ていた長は、手が動いていない先生を見つめて、状況を訊く。

「どうした?」

「おかしいんですよ。これ。タイマーが作動してない」

「えっ?」

 先生の右人差し指が示した先には、タイマーと見えるデジタル表示版があったが、その場所はまだ黒く、デジタルの数が表示されていないのが見えた。

「確かにタイマーが起動していないな。どういう事だ?」

 捜査員の1人が、タイマーを見て軽い気持ちで呟く。

「タイマーが起動していないならこっちが有利ってわけですね!」

「でも気を軽くして、舐めてかかったら……」

 早速、先生は処理班時代に培った知識を活かして爆弾処理に入るが、ハプニングは突然に起きる。

「あっ」 

 爆弾解除をしている元処理班の口から思わぬ声が漏れた。

 長は彼の方に視線を向けると一緒に、不審物のデジタル表示版がオレンジ色に光り始めているのが分かる。

「先生、どうした?」

 額からゆっくりと汗が出始めている先生。周りの捜査員達に分かる様に呟いた。

「最悪です。タイマーが作動した」


 


 《00:10:00》




 《00:09:59》




 《00:09:58》




  タイムリミット19:00まで ― 3:00 ―



第12話でございます。 遅れましてすいません。


今回は、それなり動く回でございました。さて次回を・・・・・・お楽しみに!!

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