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第11話 途中経過

 《登場人物》


 長宗我部 博貴 警部   (長さん)

 入船  宗次郎 警部補  (ボウラー)

 河瀬 憲仁   巡査部長 (和尚)

 古村 俊    巡査部長 (シルバーマン)

 夏目 真彦   巡査長  (先生)

 田中 悠    巡査長  (アンジェリーナ)

 佐藤 蒼太   巡査長  (ブラッド)


    ペイン  爆弾犯

  




   ― 同日 大街道 ―




 爆弾を捜索し始めて、およそ30分が経とうとしていた。

街中の片っ端から捜索しているが簡単に見つかるわけがない。

 それもそのはず。

ペインが示した円は実際の街で表すと数キロ圏であり、その中には高層ビルが何個もある上、密集している為に、捜索は容易ではない。

 長と先生は、赤い箱をヒントにアーケード街である銀天街の通路を早歩きで左右上下を確認しながら探し回るが、依然として赤い箱はおろか爆弾すら見つかっていない。

 捜索は難航していた。

「見つかりませんね」

 長は辺りを見渡しながら、先生が呟いた言葉に自分の言葉を付け足してみる。

「おそらくペインの奴は、俺達が時間内に爆弾を見つける事は不可能だからって考えていて、このヒントをくれたってわけだろう」

 これには、どこか先生も納得していた。

 すると長のズボンのポケットから振動を感じ、スマフォを取り出す。バイブレーションの揺れがメールでのバイブレーションとは違い、とても長くいびつな揺れ方をしている。



 電話だ。



 着信の相手は不明。

 電話番号は表示されているが、長にとってその電話番号が誰なのか知らない。しかも、最初、掛けてきたペインの奴とはまた違う電話番号だった。

「電話だ」

 警部の言葉に先生も反応する。

「まさか、またペインの奴ですか?」

 長は首を振って先生の意見を否定した。

「いや、電話番号が違う」

 ゆっくりと自分の親指を《通話》と表示している液晶の画面を押して、左耳に当てる。

『はーい! 調子はどうですか? 長・さ・ん』

 最悪の相手が電話に出た。

 聞き覚えのある声。長自身、最も相手にしたくない爆弾魔との電話会談に望む事になる。

「最悪だよペイン。でもって何で電話番号を変えたんだ?」

 警部の質問にペインはやる気なさそうに少し小馬鹿も含めて答えた。

『これだからアナログ刑事は……。だってさ、そのままの電話番号にしたら、すぐ場所、分かっちゃうじゃない? 実際、来たし』

 電話越しの気だるそうな声に、長は苛立ちを隠そうとなんとか沈黙を通して聞いている。

 脳内では、ペインに対する怒りと事件の早期解決がお互いを混ざり合おうとし、ドロドロしたものが血管を流れていく感覚。

 その間も爆弾魔の会話は続いていく。

『まぁ、その場は退場してもらう形で消えたけどね。跡形なく』

 長は、緊迫感を感じさせる様に言った。

「馬鹿な!? まさか!?」

 ペインは画面で仕掛けた爆弾の場所の位置を把握している。方法は簡単。商店街のカメラをハッキングし、映像を介して、爆弾の状況を確認していた。

『残念だけど、あそこに仕掛けてあるのは、部屋1つ分が吹き飛ぶようにしてあってね。見事に引っかかったみたいだな。惜しい!』

 ペインの言葉を聞いて、長は電話越しで何かをしているのが理解できる。

 長は、怒りを殺しながら、内容と表情とは矛盾した事を口から発した。

「ははは。全く面白い仕掛けをしてくれたな。面白いゲームだ。調子は?」

 長の言葉に、ペインは饒舌な口調で答えていく。

『超絶好調だよ! まさか事件を解決する本職の人とこういうゲームが出来て、楽しいよ。人生って楽しいねぇ』

 調子づいているのかペインの言葉を聞いて、長はゆっくりと言葉を返す。

「お前の人生ゲームは犯罪やっちまって豪邸暮らしどころではないがな」

 長の言葉を余裕な面持ちなのか、ペインは挑発じみた返し方をしていく。

『あれ? てっきり人生ゲームをゴールして優雅に生活していたと思っていたよ』

 2人の高度なやりとりに長の隣で彼を凝視している先生は全く理解できなかった。

 その間に長の口撃は、ヒートアップしていく。

「残念だが、まだ序盤だ。職業が決まった所だろうな。爆弾を見つけて解除すれば、マスは《犯人逮捕》にどんどん近づいていくだろうよ」

 長なりの表現を入れた皮肉は、事件を起こした犯人にはあまり響かなかった様子で。

 ペインは、軽めの笑い声を発した後で告げる。

『ははははははは。そうだね。爆弾を解除しないと愛媛県警の面目が丸つぶれだもんね。じゃあ、僕は《一回休み》を踏んで見ているよ。長・さ・ん!』

 再び電話はペインの一言で一方的に切られている電話越しの爆弾魔に対する怒りがより増している事を自身も感じ取り、先生もその隣で、感じとった。

 ペインとの会話は終了し、長はスマフォをズボンのポケットにしまう。

 重苦しい空気が漂っている。

「やはりペインでしたか?」

 長は先生の言葉にため息をゆっくりと吐いて、反応した。

「ああ、あいつだ。ペインのやつだ。どうやら奴は連絡をかける際に無作為の電話番号を使ってこっちにかけているようだな」

「じゃあ、それを調べたら……」

 先生の言葉に長は、首を横に軽く振って否定する。

「いや無理だ。無作為に電話番号を使っているという事は、その番号はどこかで引っ張った物。あいつ自身の電話番号じゃない」

 長の答えた言葉に先生は納得し頷いた。

「なるほど。確かにそれだと特定は難しいでしょうね」

「それに番号から特定しても結局は、和尚達みたいに罠を用意しているだろうし、全く関係のない人のところに行くはずだ」

 先生は警部の言葉を聞いて、理解した。

 長は歩き始め、また爆弾の捜索へと再び開始する。

 歩きながら、先生に向けて話す。

「でも、色々と分かった」

 先生はオウム返しの質問をした。

「色々ですか?」

 質問に対して、長は、冷静を取り戻し落ち着いた声で説明する。

「あいつは、和尚達が生きていることを知らない。死んだと思っている」

「えっ!? 何で?」

 先生は、話についていけていないことを理解し、長はその理由を説明していく。

「あいつは『その場は退場してもらう形で消えたけどね。跡形なく』って言っていた。ここで矛盾が起きてるのが分かるな。幸い和尚達は……」

「生きてる……あっ!」

 先生の心の中で驚きが波になって現れている。

「そう。《和尚達がいた時に奴の拠点が爆破した》という事実は知っても、《彼らが脱出して生きている》という真実は知らない。だから和尚達には、そのままあいつらの足取りを追ってもらうようにしよう。それに犯人が爆弾を隠している場所の目印とかな」

 先生は、少々、長の言葉に疑念に思っていたが次の行動によってそれは払拭した。

「本当ですか!?」

 長はもう一度スマフォを取り出して、ペインが送ってきた地図を表示する。

 地図を、より細かく表示して、商店街のテナントが分かる様に表示した。先生に分かる様に、地図を見せた。

「この地図には表示されていないが、街の犯罪を守る為に、商工会とかはどういった事をしている?」

 長の質問に先生は少し考えて答える。

「そりゃ、監視カメラですよ。そうか! 監視カメラが見ている場所に爆弾のある可能性があるわけですね」

 答えを長に向けて、言った後で気づいた。

「ご名答だ先生。これで爆弾が何処にあるか調べる事ができるってわけだ」

 先生は朝の言葉を受けて、1つ訊く。

「でも監視カメラは、この圏内の地図で考えるなら、何台、何十台、何百台のカメラが設置されていて、探すのも容易じゃないはずですが」

 長は、首を横に振って、説明を先生に向けて続けた。

「ペインが通話中に、『あ、惜しい』って言っていたんだ。おそらくなんだが、奴は映像越しで確認しながら連絡してきたんだろう。でもって、捜査員が爆弾のある場所を横切ったが通り過ぎた。もしくは、近づいてきていたか……」

「なるほど、という事は?」

 警部は断言する。

「間違いない爆弾はこの大街道の商店街と銀天街付近だ。カメラの付近を探すように連絡してくれ」

「了解!」

 先生は急いで、連絡用のトランシーバーを取り出して、捜査員達に長の述べた通り、カメラの位置に爆弾がある可能性が高い事を知らせた。

 歩きながら長は商店街に設置されている監視カメラとその位置を確認しながら、歩いていく。


 

 タイムリミットは刻々と近づいている。



「ここにどれだけ監視カメラがあるかだな」




 タイムリミット19:00まで ― 3:20 ―


第11話です。さぁ、今回の展開も見逃せませんね!!


読んでいただきありがとうございます!! 話は続きます!

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