第1話 始まりの爆破!
《登場人物》
長宗我部 博貴 警部
鶴野 宏保 警察庁長官
このお話はフィクションです。
- 2026年 6月19日 愛媛県松谷市国道11号線沿い スーパー駐車場 -
1台の車が、駐車場で停止している。
車両は最新型の4輪駆動で、GPSは勿論、自動運転システム等を搭載したハイテクな車両だった。
数分前までは。
車両に乗ろうと、所有者の男が近づき、車の5、6メートル付近まで近づいた瞬間、起こる。
その車のエンジンから炸裂と共に火炎の波が沸き起こった。勢いよく爆風が車を包み、辺りを強い火炎の衝撃波を巻き起こしていく。
男は数メートル後ろに吹き飛ばされ、別の車の助手席のドアに強く叩きつけられた。
車は大きな爆破と共に、地響きと衝撃波を他の車にぶつけていく。その近くに停めていた車も巻き添えを喰らい、窓ガラスや車体が燃える。
吹き飛ばされた男の周りに、人が集まっている。爆破を目撃した野次馬達が爆破現場の周りをケータイのカメラで記録していった。
- 1週間後 6月26日 東京都 -
「おい! 待て! コラ!!」
現在1対1の追いかけっこを展開している。追われているのは空き巣犯。反対に追いかけているのは、1人の刑事。
刑事の名は、長宗我部 博貴。階級は警部。愛称は長さん。
最近、趣味のランニングによって長い時間走れるようになった。今はその長所を最高に生かしている。そんな中の空き巣犯との追いかけっこはアクロバティックなものであった。
男と長の2人による鬼ごっこが繰り広げられていく。住宅街を走り抜ける2人。空き巣犯は、住宅街の十字路に入る。
十字路では、男が入ってきたおかげで乗用車が急ブレーキをして止まった。
「バカヤロー!! 死にてぇのか!?」
運転手の声がする中、空き巣犯は無視して、道を駆けていく。長宗我部は真ん中で止まっている車のボンネットを跳び箱のように飛んで、綺麗に避ける。
空き巣犯は住宅街から大通りへ抜け出し、歩道を駆けた。
「どけ。どけ!」
歩道を歩く聴衆を、叫びながら手でどかし、障害物を退けていく。
「待てコラ!」
長も負けじと走って追いかけた。
空き巣犯は対面側の歩道に逃げようと歩道橋を登る階段が、溜まった足の筋肉疲労に負荷をつけていく。
「クソッ! 面倒くさい事になりやがった」
空き巣犯の背中を追いながら、長は階段を駆け上がった。
歩道橋は、特殊なもので大型車が引っかからないように、ビル3階と同じ高さだった。
男は、若々しい体力を駆使して階段を降りていく。警部は、負けじと階段を3段ずつ飛ばして、追いつこうとしていくが体力勝負には限界がある。
なるだけ、短期決戦で決めたい。
長は勝負をかける事にした。
「逃がすかよ!」
2階から1階へと空き巣犯が必死に階段を降りようとしている時、長は階段の柵から飛び降り、2階の高さから地面に着地して、奴が1階に辿り着くまでに、待機する。
足に響く衝撃……
ちょっとした痛みに耐えながら待つ。男は途中で足を止める。
彼の視線にいるのは長宗我部。先ほど上がってきた階段から、別の警官が追ってきている。空き巣犯は観念したのか、長宗我部に向けて両手を挙げる。
長は、ゆっくりと空き巣犯に近づいて手錠をかけようと階段を1段1段と上がりながら近づいていく。するといきなり空き巣犯は、長に襲いかかった。
右ストレートを、男は、長宗我部の頬めがけて放つが、警部は後ろに1段ずれ、相手の拳を軽く右手でチョップし、段差を利用して、長は、左ストレートを男の膝に衝撃を与える。
「うっ……」
続いて、警部は、空き巣犯の服をつかみ、階段の手すり柵に強く押し当てた。
「いててて!!」
「神妙にしろ! さもないと窃盗の上に、公務執行妨害もつくことになるぞ!」
だが、男の抵抗は諦めず柵を両足で蹴り上げて、長の押さえ込みを妨害する。
妨害した時、長は声を少し上げ、後ろの手すりに体を打ち付けたが、アドレナリンのおかげで、背中の痛みは感じなかった。
それでも長は、空き巣犯に対しての押さえ込みを諦めず、男が繰り出す両肘打ちに耐えながら、警官の反撃を待つ。
長の反撃の瞬間はすぐだった。
階段の途中でジタバタしている為に空き巣犯は足を崩す。
「うおっ!」
空き巣犯は声を漏らして、自分の体のバランスを崩れた事を示した。
警部は体を崩す空き巣犯を下敷きにして一緒に地面へと崩れ落ちていく。
「おおおおおおおお」
地面に体を打ち付けた空き巣犯は、体の痛みに耐えることができず苦痛を顔で表現していた。
なんとか、長は、体勢を整えて、空き巣犯を押さえ込む。
「おとなしくしろって言ったろうが! これでてめぇは公務執行妨害付きの空き巣犯だ。当分、外へは出れねぇぞ!」
「……畜生!!」
空き巣犯は長の力により体の自由を奪われ、体を地面につけた状態で、悔しがっていた。
「はぁはぁ。警部……ぜぇぜぇ」
後から追ってきた部下が、息を荒しながらやってくる。
長は部下の姿を見て、やれやれと深くため息をついた。
- 6月28日 東京都 警察庁 -
長宗我部は、上からの伝達で警察庁に来ていた。
何やら仕事に関わる連絡があるらしいが、長宗我部自身、こんな形で警察庁に入庁するのは初めてだった。
彼はエレベーターの微振動に揺られながら伝達により指定された場所へと向かっている。
《長宗我部 博貴警部殿 警察庁長官室へ》
エレベーター内には長と一緒に、警察庁長官の秘書と共に乗っている。
沈黙が走る。長自身、もはや不安しかなかった。鉄の箱は止まり、ドアが開く。
2人は降り、そのまま廊下を歩いていく。
「どうぞこちらです」
秘書に案内され、長官室へとたどり着く。
「ここからは、あなただけが入室するようにと言われていますので……」
長はそう秘書に言われて、軽く戸惑うが言われたとおりに一人で部屋に入る事にした。
軽く2回ノックをする。
「失礼します。長宗我部 博貴です」
するとノックをした扉の先から低めの声が聞こえた。
「入り給え」
「失礼します」
長は、ドアを押して長官室へ入る。
開いた先には、大きな机が見え、自分の事務机とは違う大きく幻覚で風格のある机。
そこに、白髪が混じった。年配の男性が椅子に座り、事務をしていた。
「君が長宗我部 博貴警部か。待っていたよ。かけたまえ」
長は言われるがまま、応接用のソファーに座る。
白髪の男は、長宗我部の対面側に腰を下ろし、背中を預けた。
「まさか、鶴野警察庁長官直々にお声がくるとは思いもしませんでした」
「いやいや、びっくりさせてすまないな。実は、これは公に話すことはできない案件でね。是非、君に任せたいのだ」
案件?
長は鶴野の言う案件がどんなものかまだ理解できない状態でいる。
「案件ですか?」
「君。愛媛県出身だそうだね? 休みには戻って過ごしているとか?」
長は、鶴野の言う情報があたっていることに恐れている。
「え、ええ。よくご存知で……」
「実はな。今、愛媛県では、サイバー犯罪がワースト1位というのは知っているね?」
首都圏より電子都市化した愛媛県は、電子犯罪が急激に増加し、それに対する犯罪検挙率は遅れ、最悪な数値であった。
「ええ」
「そこで、我々、警察庁と国家公安委員会が、電子犯罪とサイバーテロを解決及び鎮圧する部隊を設置した。君にはそのリーダーとして、活動してもらいたい」
「えっ? ちょっと理解できないのですが……」
「あ、そうだったな。すまない。我々が設立したのは、《電子犯罪絡みの事件及びサイバーテロの解決・鎮圧を一手に解決する超法規的捜査部隊》だ。我々は電子警察と呼んでいる。君はその電子警察のリーダーになってもらいたい。いや、なってもらう!」
長宗我部は、先ほどの鶴野の発言で、ある程度、理解した。
辞令だ。
上司の命令は絶対である。公務員とはそんなものだ。辛い所でも『ハイ。行ってきます』と言うしかない。
長は、少々苦い笑顔で、鶴野の言葉を受け入れるしかなかった。
「分かりました。なれるかどうかわかりませんが、努力します」
長の言葉を聞いて機嫌の良さそうな長官は、笑顔を目の前の警部に披露した。
「そうか。そりゃよかった。では早速、1週間後に、愛媛に飛んでくれ。君の上司や県警本部長には、連絡しておくから安心してくれ」
「1週間後ですか?」
「ああ、そうだが? 安心してくれ。君の周りの連絡はすませておく。君の故郷で仕事ができるんだ。良い事ではないかね?」
警部は軽く苦笑いで返す。
「確かにそうですね」
長官は立ち上がり、それと同時に長も立つ。
「では、頑張ってくれ。期待しているよ」
と左手を差し伸べ、長も左手で鶴野の左手を熱く包みこむ。
相手の手を感じながら、警部は自分がやばい事に突っ込んでしまった事を、感じ取っていた。
新連載です。 また拙い文章かもしれませんが、よろしくお願いします!!
さて今回から始まりましたが、どんな展開がスタートしていくのでしょうか!
次回をお楽しみに!!