悪役‥?私の出番だな‥‥。
良くあるでしょ、ヒロインの攻略対象寝取るってやつ。それでこそ悪役だよね、私のおなかの中に‥‥わかるでしょ?みたいな、それで嘘でしたーみたいな?それで悪役が肩身狭生活送って?最終的には社会的抹殺?
まぁ、その悪役のレールの上を歩こうとしてたのが私なんですけどね!
でも、悪役は所詮悪役。‥ついに悪役をするときがやってきたのだ‥お相手は性悪ヒロインではなく、というかいないよ彩乃ちゃん天使だからね!この頃危機感感じるけどね!
こほん、実は私、どこかの乙女ゲームと悪役キャラクター掛け持ちしてるらしいんですよ奥さん!‥ネタバレを言うと同じ会社さんが作ったゲームでリンクしているという設定なんです。
彩乃ちゃんがヒロインの乙女ゲームでは、私が勝手なことをやったばかりに壊れてしまったが、そこでは私の設定は失われていないはずだ。その乙女ゲームで私が現れる設定なのは、『年下に性的な階段を登らせようとする他校のギャル系お姉さん』‥‥ふ、ふふ。やってやろうじゃないか。
私にはパラメーターが見えない、多分彩乃ちゃんも見えていない。簡単だ、彩乃ちゃんヒロインの乙女ゲームでパラメーターや好感度が無かったからだ。というより作られていなかった。
変なところでリアルな乙女ゲームだったのだ。私はその感じが相手のことがわからなくてモヤモヤするときが一番興奮した。
‥だがその乙女ゲームの世界は確かパラメーターや好感度が示されていた。それが繰り広げられるのは私のいる高校よりかは、私が転校する前にいた、乙女ゲームの舞台である高校のほうが近いだろう。
私は最近、誠ちゃんや鷹司くん、彩乃ちゃんなどの天使たちと戯れすぎて平和ボケしてしまいそうだ。そして幸せな私は思った、こんなに幸せだったら後々怖いから、悪役としての仕事もちゃんとしておこうと。
だが、今更それをやろうとしても出来ない‥一度だけは試みた、だけどそれで心がおれてしまった。あれは私の人生の汚点だと思う、何であんなことしちゃったんだろう‥
あの後すごく彩乃ちゃんに慰められたよ、何で彩乃ちゃんがいじめられた側なのにいじめた?私が慰められてんのー‥
様々な経験があり、私は変装をしてやってきた‥その高校がある近くのカフェに。ここはヒロイン、攻略対象達が放課後によく通うカフェだから、きっと全員とは行かなくとも何人かとは会えるかもしれない。
ちなみに今の私の格好は、彩乃ちゃんに手伝ってもらって、ギャル系とは行かなくとも、なんとかあれ、もしかしてちょっと遊んでる?みたいな女子には仕上がったと思う。
‥少し屈むと谷間が見えるのが問題だ。彩乃ちゃんは顔を押さえながらそこがポイントなの!と胸を張って言っていたけど。
さぁ!何時でも準備は出来ている!と意気込んで、扉を穴があくほど見つめる。すると、ようやくやってきたのだ、不幸か幸いか、ヒロインと攻略対象全員が。
私は頼んだ冷たい紅茶を飲みながら、みんなが座った席を観察する。しばらく話したところでヒロインが席を立った。‥ここで私の登場だ、心臓がバクバクする。頑張れ、いけるよ私。
さりげなく席を立って、ヒーローたちが座る席の前に立つ。
「ボクたち、ここの席あいてる?」
「あぁ?空いてねーよ、どっか行け。」
手前の方に座っていた金髪の不良っぽい青年が私をにらむ、それに続いて他の三人もこちらを睨みつけてきた‥こ、心が折れそうだよ、全員不良っぽいじゃないですかー!聞いてませんけど、ヒロインよくこの中にいたな。
「まぁまぁ、そんなこと言わないで?座らせて貰うよ、よっこらしょういち。」
はっ、つい癖で‥‥やっちまった。まぁいいや。異様なものを見てくる四人は本当に失礼な奴らだな。でもね、私には必殺兵器があるんだよ、必殺技がね‥‥この話題をして盛り上がらなかった事はないんだ、とくと、その力を見るが良いよ!
こちらを見つめてくる四人ににっこり笑いかける。さぁ、どんな反応するかな?
「ドリンクバーのオレンジジュースとメロンソーダ混ぜたらすこぐ美味しかったんだけど何か反論ある?」
「はぁ?山ぶどうジュースとカルピスだろ。」
─それからは、白熱した討論会が開かれた。
私達の話はいつの間にか変わっていて、いつからかどの組み合わせが一番不味いかに変わっていた‥コーラとコーヒーを混ぜるのは不味いが、いけるっちゃあいけるという話や、最終的にはやっぱり全種類混ぜるのは人間の飲み物ではなく、人類には早すぎた飲み物だということでみんな納得し、一段落した頃だった。
ぞくりとした、殺意に似た嫉妬の視線がぐさっと刺さったようだ。ふへへ、きたきたきたーヒロイン登場だね、こんな視線を向けられるなんて、彩乃ちゃんみたいなヒロインではないことは明確だ。
ずかずかずか、こちらに歩いてきたので席を立ってニヤリと微笑んでやる。
「あの、ここでなにしてたんですかぁ?」
「あら、貴女には関係ない事よ?でもとても楽しかったわ‥ねぇ、そうでしょ?」
振り向いて、同意を求めてみればみんなこくんと頷く。そうだろう、あんなみんなで盛り上がってたのに楽しくなかったなんて言ったら張った押すところだよ。
「えー、私にも教えてくださぁい、ねぇ、李木くん、どんな話してたのぉ?」
「あー‥お前には関係ない話だな。」
なんとなく気まずそうに、一番ヒロイン側の方にいた青年が言う。
そういわれたヒロインの顔がぴくりとひきつる瞬間を私はみた。‥うぇへへ、攻略対象から話を聞き出せなくて不機嫌になってしまったようですな。
私はそんなヒロインとヒーローに背を向けて、思わせぶりにまたねと言うとカフェを出て行った。
その後すぐに近くのトイレに駆け込み、深呼吸した。
「はぁー怖かった!女子の嫉妬怖い!変わり身早い!あのあざとさはダメなあざとさ!」
言うほど悪役の仕事してないけど、やっぱり私には悪役はやめて正解だと改めて思った。
悪役書けない(´・ω・`)