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にきび

作者: 絡繰ピエロ

話の途中にニキビを潰す描写があります。

そういった行為が苦手な方はどうかご遠慮ください。


 ある日、僕の左腕にニキビができた。

 黄緑色をした丸い突起物。

 ニキビは初めてなのでどうすればいいか母さんに聞くと、放っておけば治ると言われた。

 僕はニキビを放置することにした。

 一夜明け、左腕を見るがニキビは消えていなかった。

 母さんに言うと、そんなすぐに治らないわよと呆れ声で言われた。

 じゃあ何時頃に治るの? と質問すると、母さんにはわからないわよ、と答えられた。

 仕方なくその場を引き、左腕にあるニキビを見詰める。

 これは僕の体から出ている悪いものなんだ。それにこんな色をして気持ち悪い。悪影響ないわけがない。

 肘を曲げニキビが見やすくなるように関節を回す。

 親指と人差し指でニキビを摘み、潰すために力を込めた。最初は弱く、徐々に力を加えていく。

 薄く広がっていたニキビは僅かに盛ってゆき、周りの皮膚が赤く染まる。

 そして。

 プチッ、と小気味よい音を鳴らしてニキビを覆っていた皮が破れた。多少の痛みが腕から伝わる。

 黄緑色のスライムのようなぐちゅぐちゅしたものは親指の爪に乗っていた。

 人差し指で突いてみると伸びた。気色が悪い。

 空いた左手でティッシュを取り、親指についたそれを拭ってゴミ箱に捨てる。

 ニキビがあった場所を見ると、小さな穴ができていた。

 試しに先程と同じように力を込めて摘まんでみる。

 ニキビが潰れた時と比べものにならない痛みが走り、穴から血が湧き出てきた。

 つまり、ニキビはなくなったのだ。

 嬉しい。

 悪は滅した。

 僕が、僕自身が、僕だけの手によって。

 思い出す、あの破裂音。プチッという悪の消えた、音。

 それは愉悦であり、満たされるほどの気持ちよさがあった。

 だからか、僕の口元は上がりっぱなしだった。




 数日後、またニキビができた。

 今度は右耳の耳たぶにだ。

 入浴してる時に鏡に映って気がついた。

 僕は急いで自分の部屋に向かう。

 母さんに聞くことなく、痛みに躊躇ちゅうちょすることなく、迷いなくニキビを摘まむ。

 そして容赦なく力を込め、プチッ。

 この音が、僕が悪を消した証明をしてくれる。

 この音が、僕を満たしてくれる。

 だから僕は笑まずにはいられなかった。




 数日経ち。

 数か月経ち。

 数年経ち。

 それでもニキビは絶えなかった。

 それでも僕はニキビを潰し続けた。

 気が付けば、体の所々が赤く染まっていた。

 それでも僕はニキビを潰し続ける。


 悪は消さなきゃいけないんだから。




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