表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/89

第十四話 予想外の結末


「あっ、落ちる!」

 ローブの男がひるんだため、ルイーズを縛り宙に持ち上げていた糸が緩んだ。当然ルイーズの体は重力に従って落下し始める。

 ぼくの声を聞くやいなや、リュクルゴス隊長は剣をしまいすばやく体の向きを変えると、落下してくるルイーズをしっかりと抱き止めた。

 思わず歓声をあげたぼくにつられて、ワイバーンと戦っていた兵士たちまでが歓声をあげた。

「感心している場合か! さっさとあいつを縛り上げろ!」

 隊長に怒鳴られて、兵士たちはワタワタと傷を負って倒れているローブの男を縛りにかかった。

 ワイバーンもようやく数が減り始めたようだ。 

「う……」

 そのとき、隊長に抱きかかえられていたルイーズが目を覚ました。

「陛下。ご無事ですか?」

「リュクルゴス!?」

 ルイーズは、はっとして隊長を見た。

「あなたが助けてくれたのね、リュクルゴス……ありがとう」

 ぼくは、彼女が隊長のことを「リュクルゴス」と名前だけで呼んだことに、どきりとした。王さまである彼女にとって、部下の呼び捨ては当然のことなのかもしれないけど……。

 隊長は心底申し訳なさそうな表情で言った。

「いえ、申し訳ありません。これほど見張りの兵が殺されていたというのに、気づくのが遅すぎました。そのせいであなたを危険な目に……」

 ルイーズはあわてて首を振った。

「いいえ! こうして助けてくれただけで充分よ。よくぞ来てくれました」

 リュクルゴス隊長はくしゃっと笑った。

「そりゃ、あなたのためなら地の果てだって助けに行きますよ」

 隊長の言葉は、忠義心では片付けられない重みをはらんでいるように聞こえた。

 彼はルイーズを優しく下ろすと、服が焦げ、白い肌があらわになってしまった彼女に、慣れた様子で自分のマントを着せた。

 隊長を見つめるルイーズの目は、母さんがロバートを見るときのそれに、よく似ていた。


 なんだ、そういうことか……。


 ぼくは、わかってしまった。そう、この二人は……。

 そう思った途端、さっきまで興奮していたのが、なんだかモヤッとした気持ちになった。

 それから、胸がチクチクしてきた。


 所在なくて、二人の側を離れようとしたとき、ルイーズに声をかけられた。

「ありがとうエンノイア」

「そんな。ぼくはなにもしてないです」

「なにもだなんて。あなたはわたしを見捨てなかった。そして、リュクルゴス……隊長を呼びに行ってくれた。すべてあなたのおかげよ」

 ぼくは首を振った。彼女がわざわざ「隊長」とつけて呼び直したことが、無性に腹立たしく感じられた。

「そんなの全然大したことじゃありません。ぼくは……その……隊長さんみたいに強くないし……」

「え?」

 ルイーズはなぜそこで隊長が出てくるのかわからないといった感じで、小首を傾げた。突然引き合いに出されて、隊長も驚いているようだった。

 ぼくはなにを言ってるんだろう。

 なんだか恥ずかしくなって、ぼくはそそくさとその場を離れた。


 リュクルゴス隊長はルイーズをかばうようにして立つと、兵士によって縛られたローブの男に再び剣を突きつけた。

「きさま、何者だ? 陛下を傷つけた罪、万死に値するぞ!」

 隊長は毅然として言い放った。

 こんな状況になっても、ローブの男は不敵に笑っている。血が出ているというのに、痛がる様子もない。

「なにがおかしい!」

 すると、ローブの男が言った。

「わたしが何者か……。王さまのほうがよくご存じなのでは?」

 そこにいた人々が一斉にルイーズを見る。ルイーズは厳しい顔でうなずき、説明を始めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ