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で?っていう

 昼休みの食堂は満員電車に似ていると思う。一人の人間を探すとなればそれは困難だ、普通ならば。

「おーい、こっちだこっち。」

 人ごみでの喧騒の中で、良くも悪くも通るその声に吸い寄せられるように彼に近づいていった、ありがたい。

「お前が寝てるから先に場所取っといた。感謝の印として今日の昼飯はお前の奢りってことで。」

 ありえない。ありがたいが、その程度で少ない小遣い減らされてなるものか。

「そういうとは思ったよ、貸しということでどうだ。」

 いつ返すかわからんがそれならかまわん、んじゃ飯でも食いますか。

「いただきますか。」

 ここの食堂が混んでいる理由はそのメニューの豊富さと安さにある。姉貴の高校に忍び込んだときの静けさといったらここに比べればありえないほどの内容だった。

 今食べているカレーもその高校とは比べられないほどだ。むこうはただのレトルトだったがここは異様に凝っている、気がする。単純に美味しいだけではなく何か不思議な美味しさがある。人気の一つである。

「ここのメニューってどれもなんか不思議な美味さだよな。」

 全面的に同意できる。何か吸い寄せられるような、具体的に表現できない美味さ。何か如何わしいものでも使っているんじゃないかと疑いたくなる。

「まあここは作り手がおばちゃんじゃなくお姉さんってのもポイント高いよな。」

 確かに。

 僕が通っている高校は規則は厳しい方だがこの食堂でのバイトは認められていて、授業体系も自由が効くので結構な数の女生徒がここで働いている。

「女子高生の手作りってのがまた素晴らしい。」

 今がそんなにいいものとも思えないが、数年後にはここに通いたいと間違いなく思ってるだろう。実際、私服姿の大学生やらサラリーマン風のおっさんがちらほら見受けられる。食堂が校門と隣接していて一般人でも利用できるのがまた混雑の一つなのだろう。

「特にレジにはまた可愛い子揃ってるよな。ほら、あれうちのクラスのトップじゃね。」

 トップというのはもちろん学力じゃなく容姿だ。会話した記憶はほとんどないので性格はわからないが愛想の良い笑顔を振舞っている。彼氏がいたら全力でローキックを叩き込みたい。

「間違いなく返り討ちにあうだろうがな、おまえそもそも格闘技なんてやってたか?」

 妄想の中に決まってんだろうが言わせんな恥ずかしい。

 昼休みは順調に過ぎていく。昼飯を食ってますます勢力を拡大した睡魔に抗うすべはもはやない。素直に降伏するとしよう。

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