今世も傷ついたりするのはうんざりだ。
人生が終わることを望んでいたのに
時間を巻き戻され再び人生を歩むことになるなんて
とても嫌すぎた。
「うっ…!!」
真っ暗闇に包まれた後、突然心臓が収縮する感覚がして
思わず目を開いて、危うく詰まった声を出してしまう。
反動で体が起きた。不思議なことに
剣を思い切り突き刺した部分が痛くなくて
「…どうして?」と呟いてしまった。
だって、ギーベンラート侯爵家の令嬢リリアーナは
王太子妃になる予定だったのに、妹に王太子妃の座を奪われることになり最後は妹を殺そうとしたと冤罪をかけられ
牢獄に入れられるも自ら命を絶ったんだもの。
私は、侯爵家令嬢でありながらも王国の王太子と婚約をしていた。皇宮でのお茶会で王太子の婚約者を決めるというものがあり、参加している沢山の令嬢の中で唯一王太子と年代が近いのが私だけだったということで私が彼の婚約者となった。そんな理由で婚約したけれど私は一目見てから彼にとても夢中だった。
殿下は違ったけれど。
彼は私の妹であるルナティアのことを愛していた。
月に1度侯爵家へ訪れてくる時いつも隣にいるのも
侯爵家の庭で微笑みあいながら、戯れるのも
夜会の時も2、3曲一緒に踊るのも
いつもいつも、妹だった。
そしてその2人を見て私は般若を想像するような形相で2人に詰め寄っては、怒り狂い私に恐怖して泣き喚く妹に余計腹ただしくなって怒りをぶつけた。
それを見た彼が私を嫌悪するような表情をしてやめるよう注意される
そんな場面を何度繰り返していたか数え切れない程あった。
そうしたことが多すぎたせいか、私は殿下から嫌われるようになってしまった。
嫌われたとしても、私は彼にふさわしい王太子妃になるために努力した。感情を無にしてまで辛いお作法も勉強もしたというのに。
彼はルナティアのことを愛し続けて
いつしか長い時が経った後、王太子妃の座もルナティアのものとなっていた。
私が成人する前に、ルナティアは奇跡の力を使うことができる者へと覚醒した。
どうやら、100年に1回神聖な力を手にするものが生まれるらしくその力に選ばれたのがルナティアで。
神聖な力を持つ人間は、必ず王太子の元に嫁がなければいけないという掟があり、ルナティアが彼の隣に立つこととなり
私は忘れられる存在となっていった。
婚約の儀を受け、花びらが舞い人々の祝福を受けながらも互いに愛しい眼差しで見つめあっているのを遠目で見た後
長年王太子妃として教育を受けてきた私は王太子妃を受けたことのないルナティアのためにと、隣で支えてほしいと頼まれてしまった。
「こちらの資料にも目を通しておいた方がよいと思います。リリアーナ様。」
「…。」
次々と膨大に増えていく仕事。
本来ならばルナティアがやるものを押し付けられている日々。そんな中、呑気に彼と仲慎ましく過ごしている彼等を見て憎しみがふつふつと湧いていくのと同時に心が疲れていって衰弱していき仕舞いには
「リリアーナ・ギーベンラート。ルナティア様を殺そうとした罪によってお前の処刑が決まった。」
私は、ルナティアを殺そうとしたという罪を着せられて
投獄されては処刑を言い渡されてしまった。
ルナティアは誰かによって毒を盛られてしまった。
そして毒を盛ったのが私だと殿下が決めつけてきた。長年、ルナティアと私が仲慎ましくしているのを妬んでいたのだろうと、だから毒殺しようとしたのだと。
否定したかったけれど否定させてくれる時間もくれなくて
そのまま牢獄に入れられた。
処刑を宣告されるまで私は牢獄の中で過ごし続けた。食事を渡しにくるけれど喉を通らなくて拒むようになってからどんどんやつれていって、綺麗だと思っていた紫色の髪も過酷な環境にいることのストレスのせいか銀色に似たような白色に変わっていった。
そして処刑を宣告された時
絶望したり嘆いたりすることなくやっぱりそうかと悟り乾いた笑みが出てしまった。
父も母も、私を見捨てた。
まあ、分かってはいた。特に母は、私よりもルナティアを幼い頃から大事にして私にはきつい態度を取っていた。
ルナティアを殺そうとしたというのだから見捨てるのも当然かと思った。
裏切られて、捨てられて
犯していない罪を背負って処刑されるくらいなら…。
いっそ…。
そう思った瞬間何か糸がプツンと切れたような感覚がして
ふと処刑を宣告してきた騎士の剣に目をやる。
素早く私はすぐに騎士から目をつけた剣を奪い取る。
無様に処刑されるくらいなら、いっそのこと自ら命を絶ってやる。素早く鞘から剣を取り出して自分の生きるために大事なものである心臓目掛けてありたっけの力を両手に込めて。
「…さようなら。」
そうして私は剣を心臓に思い切り突き刺した。
刺された瞬間、強烈な痛みと同時に倒れ込む。
散々だった私の人生。
最後の時、自分の思い通りにできて良かった。
牢の中で響き渡る、不愉快な音。
もう、裏切られたり捨てられたりして傷つくのはもううんざりだった。
そうして視界が真っ暗に染まっていき、
私の人生が終わった。
いや、終わることを望んでいた。
そして今に至っている。
私が突然起きたものだから、心配して入ってきた私の専属侍女だったロロナが駆けつけてくれて、私は思わず
「ロロナ、今っていつ?」と問うと
「今ですか?今は帝国暦、950年ですよ?」
と返される。
私が死んだ年は960年、そして今950年
あの苦しい日々を送っていた日から10年も遡っているのと同時に950年は私が王太子と婚約する年だということに気づく。
私は過去に戻ってきて
もう一度人生をやり直そうとしているということ…でいいの?
嫌すぎるわ。としか言えない。
けれど嫌々言う訳にはいかなくてこの状況を受け入れるしかない。
どうして時が巻き戻ったのか分からないけれど…。
これだけは分かる。
もう前世のように傷ついたりするのはもうたくさんよ。
今世も同じように傷ついて最後にあんな自ら命を絶つことを選択するようなことはしたくない。
今世は私の人生を取り戻してみせる。
そのためにはもう
王太子妃の座や婚約者や妹達なんか
_____いらない。
短編です。
後々連載版をあげますので暫しお待ちください。




