第2話「風変わりな依頼と、試作の夜」
視察から数日後、ハルトのもとに一風変わった依頼が舞い込んだ。送り主は、領都の貴族商会からだった。
「魔法の冷蔵庫……?」
手紙にはこう記されていた。
『貴牧場にて開発された魔道具技術の応用により、常温保存が難しい食品を魔法で冷却・保存する箱の試作を依頼したい』
「これ……できるのかな」
ハルトはシエルに手紙を見せながら言った。
「できるかどうかじゃなくて、やってみるかどうか、だよ。冷却魔法と保温魔法は、元々反対の性質だけど……バランスを取れば安定するかも」
「……やってみようか」
その晩、ハルトは工房にこもり、試作品づくりに没頭した。
冷却魔法を封じ込めた“氷晶石”を中心に据え、周囲に魔法陣を刻んだ木箱を組み立てていく。しかし、魔力の偏りで箱の一部だけが凍り付き、他の部分はぬるいままという結果に。
「うわっ……これ、食材の方が先に死ぬな」
「バランス取らないとね。たとえば魔力を均等に拡散するために、内部に精霊回路を使うとか?」
シエルの提案を受けて、ハルトは細かな修正を加えていく。
試作2号機では、箱全体が安定して冷えるようになり、温度は一定に保たれた。冷気の強さを調整する魔法式を追加したことで、野菜や乳製品を安全に保存できることが確認された。
「これは……本当に“冷蔵庫”だ」
試作を成功させたハルトは、シエルと一緒に作動を確認しながら小さくガッツポーズを取った。
「これで、もっといろんな食材を保存できるし、村の食生活も豊かになるかも」
完成した魔法冷蔵庫は、後日領都に送られ、評判を呼ぶことになる。
「次は何を作ろうか?」
「……私、ちょっと考えてたんだけど」
シエルはいたずらっぽく笑って言った。
「動物と会話できる“翻訳耳飾り”、どう?」
ハルトの目が、興味と驚きで輝いた。
「それ……本当にできるのか?」
「うん、精霊の力を使えば、きっと」
新たな挑戦が、再びハルトたちを熱くさせていた。




