7話 天使降臨 耀のスピーチ
晴夏は高校の入学式で、眠気と戦っていた。
「ついつい夜更かししちゃった…。眠いよぉ…」
周囲がザワザワしてきたので、彼女は壇上に目を向けた。
「今年の新入生代表は、なんだか天使みたいな子だなあ」
「本当だ、綺麗ねぇ…」
代表の子は、キリッとした目をして話し始めた。
「みなさん、ご入学おめでとうございます。新入生代表の、美澄 耀です。今日、私たちは新しい春を迎えました。高校生活は、夢と現実が出会う場所です。
夢は大きく、そして現実は時に厳しい。
けれど、その間でこそ、本当の価値が生まれると私は信じています。
私は将来、経済を学びたいと思っています。なぜなら、経済は人の心とは無関係な数字ではないからです。
お金や数字は冷たいものではありません!…人の温もりを支える力です。病院の灯り、家族の明るい食卓、誰かの「大丈夫」が続いていく仕組み。それを支えるのが、経済だと思っています。
この地域には二つの大きな病院があります。
立派な設備を誇る総合病院と、長く地域を見守ってきた市立病院。…私が生まれたのは、市立病院でした。
小さな窓から春の陽ざしが差し込み、母は幸福に包まれたそうです。
けれど今、その市立病院が厳しい状況にあると聞きました。医師不足、資金難。現実の壁は高い。
それでも、あの場所で生まれた命は、この地域の未来そのものです。
命の産声が響くたびに、希望がひとつ増えていく。
私は思います。現実を変える力も、夢を形にする力も、人の中にある。そしてその力を支える仕組みを作るのが、学ぶことの意味だと。いつか、誰かの命を守る“新しい仕組み”を、この地域に生み出したい。
勉強は決して楽ではありません。
でも、みなさんの夢が、誰かの涙を笑顔に変える日が必ず来ます。
私たちの歩く道が、この地域の明日を照らす光になりますように。三年間、一緒に学び、成長していきましょう!…どうぞよろしくお願いします」
講堂内は割れんばかりの拍手に包まれた。
(すごい…。すごい!…まだ1年生になったばかりなのに!あんなに地域の事を考えているなんて!)
「…なんだか俺、ヨーロッパの教会にいるような気分になってきた」
「わかる!天使降臨って感じだったよね」
(私も市立病院で働きたいなぁ…。よし、進路相談の予約をしよう!)




