4話 ひまわり笑顔と代償 本当の笑顔を無くした日
白石 晴夏は、小学4年生までぼっちだった。
周囲から愛される保育士母の教え子がクラスに数人いた為、晴夏はいじめだけは免れていた。
(みんな楽しそうに友達と話してる…。どうやったら、友達が出来るんだろう?)
そんなある日、クラスに転校生が来た。
「青井 日向です。よろしくお願いします!」
満面の笑みで自己紹介をする彼女は、晴夏にとって、とても眩しい存在だった。すぐにクラスに溶け込み、ひまわりちゃんと呼ばれている姿を席から眺めていた。
翌朝、晴夏が自分の席に座っていると、ひまわりちゃんがやってきた。
「白石さん、おはよう!」
(今、おはようって言った…?わたしに…?)
晴夏は数秒フリーズしてしまった。
「おは…よぅ…」
ひまわりちゃんは晴夏が返事をするまで、にっこりしながら待ってくれていた。
「うん、おはよう!」
その時クラスのムードメーカーの子達が数人入ってきた。
「おはようー!」
「ひまわりおはよう!あのさ〜今日の昼休みに鬼ごっこしようぜ〜」
「おはよう!うん、いいよー!」
「よっしゃ、それじゃあ鬼ごっこしたい子は中庭に集合なー!」
「わかったー!」
(おはようって、言ってくれた…)
晴夏は昼休みに図書室に行き、本棚の影に隠れて静かに涙を流した。
(あんなに、ひまわりみたいな、きれいな笑顔で…。おはようって、言ってくれた…)
もちろん晴夏は、担任の先生や習い事の先生、近所の人、母の教え子のクラスメイトなどから、おはようと言われた事がある。だが、『大人から子供への気遣い』でも、『素敵なママの子』だからでもない、純粋な <おはよう> が嬉しかったのだ。
(うれしい…。うれしいよぅ…)
あの、ひまわりのような笑顔の練習をすれば、もしかしたらまたおはようと言ってくれるかもしれない。
晴夏は、そんな気持ちから、彼女の笑顔や仕草のコピーを始めた。
その後ひまわり笑顔を習得し、自室で表情の練習をしている時、ある違和感が晴夏を襲った。
(ひまわりちゃんが、うんうんってする時の顔になるには…。もうちょっと目尻の力を抜いて、口をにっこりさせてたなあ…)
鏡の前で表情を作っていた晴夏は自分の顔を触りながら、あどけない声で呟いた。
「あれ?…わたしの、本当に嬉しいって表情は、どれー?」
数日後、家族3人で夕食中に晴夏は母に褒められた。
「晴夏〜!最近明るくなって、もっと素敵になったわ!いい感じよっ」
父はニコニコしながら、うんうんと頷いている。
「えへへ、ありがとう〜」
晴夏は、ひまわり笑顔で笑いながら内心呟いた。
(この笑顔は、ひまわりちゃんのコピーなの)
(…本当の私は素敵じゃなかったんだ)
(…ごめんなさい。パパ、ママ…)




