14話 段取り名人と着せ替え人形
無事に顔合わせが終わり、解散となった。谷村と晴夏は2人になった。
「さて、本格的に来月の準備を進めるか。ドレスに希望はあるのか?」
「ドレス?……考えた事がありませんでした。このワンピースも、母のものですし」
「ならいくつか俺がピックアップしておく。身長はいくつだ?」
「162cmです」
谷村は、いつもの晴夏用の表情のまま、続けた。
「式場のプランナーとも、進行の確認をしておきたい。指輪交換、人前での誓いの文、入退場の動線」
「そ、そんな細かいところまで……」
「段取り名人だと、言っただろう」
そして、ドレスサロンで晴夏は着せ替え人形になった。
(4着も着たり脱いだり……。どれでもいいのに)
「まあ〜新婦様、お綺麗でどれも似合ってしまって、眼福ですねー?新郎様!」
「2着目にしよう。長袖の、純白で光沢のあるAラインのものを。俺の衣装と合わせるからもう一度着てくれ。」
谷村は、晴夏がドレスに苦戦している間に自分の衣装を選んで試着を済ませていた。
「アクセサリーは、このパールのイヤリングと繊細なデザインのブレスレットにするぞ。あと髪型は先程スタッフさんに見せてもらった写真の、低めのシニヨンにするから、パールピンもレンタルしよう」
「お2人とも、なんて素晴らしいんでしょう!?鏡の前で腕を組んで立ってくださいませ!イメージ用の造花のブーケはこちらです」
「ベールは先程のミドル丈にしよう」
「かしこまりました!」
スタッフさんは手早く晴夏の髪を纏めてベールを取り付けた。
「えっと、、失礼します」
鏡の前の晴夏は、そっと谷村の腕に手を添えた。
(あれ?……ハエが止まったみたいなお顔をするかもって思ってたけど、谷村先輩はいつも通りのお顔をしてる??)
思わず見つめていたが、谷村の名人節は変わらない。
「ドレスの調整は当日までに出来ますか?歩く練習も別日でしたいので、それまでにやってもらえると助かります。その際に彼女の父親の衣装も考えたいです。あとブーケやコサージュもここで頼めるとありがたいのですが」
「はい、出来ますよ!新婦様の場合ですと、7センチヒールで後ろ姿が充分お綺麗ですので、ウエストを数センチ詰めましょうね。お花にこだわりはございますか?」
「白の芍薬のラウンドブーケと、対になるコサージュでお願いしたい」
「かしこまりました!サンプルが完成しましたらお写真を送付させて頂きます」
「ありがとうございます」
(あっという間に、当日の衣装が決まっちゃった……!?)
その後2人はホテルへ行き、プランナーさんとの人前式の打ち合わせをした。晴夏は他人事のように話を聞いていたが、ある言葉にギョッとした。
「指輪の交換が終わった後に、誓いのキスとなります。唇や頬にされる方が多いですが、どこにされますか?」
(好きだった黒川先輩とのキスでさえ、あんなに胸が苦しかったのに、谷村先輩とはもっと苦しいのかな。それに、先輩だって、憎悪している私としなくちゃならないなんて。心が痛くてたまらないはず…)
晴夏は谷村をじっと見つめていた。
「…おでこにします。彼女は照れ屋なので」
「まあ、可愛らしいですねえ〜!」
(先輩、気遣ってくれたのかな…)




