13話 たんぽぽ笑顔と氷の目
「パパ、ただいまー!○日って予定空いてる?」
「ああ、おかえり。何もないけど、どうしたんだい?」
晴夏は谷村に貰った紙袋をコインロッカーにしまってから家に帰ると、リビングでテレビを見ていた父に輝く笑顔を浮かべて話しかけた。
「あのね、結婚相手とそのご両親に会って欲しいの!」
「えっ!晴夏にそんな相手が!?」
「総合病院で、研修医さんをしてるんだ〜」
「そうか。…母さんにも、会わせてやりたかったな」
「パパ…」
晴夏はそれを聞いて自然と眉尻を下げたが、すぐに笑顔に戻って言った。
「今度ママのお墓に報告しに行くよ。とっても品行方正な人だから、安心して?今日もね、人前式の会場を探してる事を伝えに待っててくれたんだ〜」
「そうか。…ママの遺影を持っていくよ」
そして、当日。
谷村の両親、谷村、晴夏、晴夏の父は、料亭の個室で顔合わせをした。晴夏は亡くなった母のワンピースを着ていた。
「父さん、母さん。この人が白石 晴夏さんです。晴夏さん、父の國春と母の眞貴子です」
「はじめまして。白石 晴夏です」
晴夏が輝く笑顔を浮かべると、谷村の両親は微笑みを浮かべていた。
「お父さん、こちらが谷村 湊さんです。湊さん、父の正治です」
「谷村 湊です。突然のお呼びだてをしてしまい、申し訳ありません」
「いやいやとんでもない!娘をよろしくお願いします。……もしかして、谷村医院の?」
「ええ。研修終了後も総合病院で経験を積んでから父を支えようと思っています」
「それは心強い」
晴夏の父はたんぽぽのように、ほわりと笑った。
「妻の芙由子です。…昨年末亡くなりましたが、娘のそばにこんなに素敵な方がいると知ったら、あの世で喜んでいるでしょう」
谷村は、正治に対して患者用の笑顔を浮かべながら思考していた。
(白石の顔立ちは父親似だが、母親の笑顔は白石が黒川に見せたものとそっくりだな……)
(黒川に本気だったのか、白石)
料理が運ばれてきた。食事中も、晴夏は輝く笑顔を崩さない。
谷村は、丸印をつけたパンフレットを正治に手渡した。
「来月の○日は大安ですが、Pホテルの会場にキャンセルがありました。5人で仮予約をしています」
「……随分急ですね!?」
正治が驚いた顔をしているのを見て、晴夏はニコニコしながら応えた。
「湊さんは、段取り名人なんだよ?パパっ」
(あの日黒川を置き去りにした後、卒業まで全く会いに来なかったのは事実だ。……今はまだ、様子見か)




