11話 かすみそうの花嫁
3学期が始まった。耀は柿本さんに、噂について尋ねた。
「柿本さん、白石先輩がボランティア部だって姉から聞いたんですけど、本当ですか?老人ホームで人気者だったと聞きました」
「うん…。あのね、白石先輩は春頃に辞めちゃったの。受験勉強に専念したいからって言ってたけど、本当は部の男子からの告白を断って気まずくなってたみたい。先輩が3年生になるまでは、上級生の先輩方が目を光らせて秩序を保ててたらしいんだけどね」
「そうだったんですね…」
(先輩…。もしかして、図書館で時折寂しそうな顔をしていたのは、そのせい…?)
燿は晴夏の受験が終わるまで負担をかけないように、見かけたら挨拶するくらいにしようと決心した。
ーーそして、もうすぐ卒業式。
期末テスト終了後に1年A組の教室で、耀は悩んでいた。
「先輩にお花を渡したいけど、負担をかけてしまうかもしれない…」
「俺も近くでついててやる、渡したいのなら後で後悔のないように渡せ」
「部活もいっしょじゃなかったですし…」
麗央が諭すも、耀は悶々と悩んでいた。
「バスケ部も先輩に花束を渡すから、恥ずかしくないぞ?」
「吹奏楽部もだよー」
「バレーボール部も渡す予定ー」
「じゃあ私は美澄くんが渡す時に、百合宮くんの近くに立ってるよ。白石先輩とは面識あるし、みんなも先輩達に渡すから大丈夫だよ!」
柿本さんを含む周囲のクラスメイト達が麗央に援護した。
「みんな…。ありがとうございます。私、このクラスでみんなと出会えて、本当に嬉しいです!」
耀が天使の笑顔とともにお礼を言うと、クラス全員の内心が一致した。
(こちらこそ、このクラスで過ごしてくれてありがとうございます!!)
ーーそして、卒業式の日。
耀は、駅前の花屋で晴夏に渡す用に注文していた花束を受け取った。
(かすみそうの花束。先輩に似合うだろうなあ…)
自然と耀は学校へと向かう足取りが軽くなっていた。
「先輩、ご卒業おめでとうございます!この花束、先輩に似合うと思って準備しました」
講堂から出てきた晴夏に、耀は花束を差し出した。耀の少し離れたところには、麗央と柿本さんが立っている。
晴夏は、サッと周りを見渡してから、安心したような花の微笑みを浮かべて受け取り、輝くような笑顔でお礼を言った。
「…ありがとう!入試の時にも同好会から配られた消しゴムをお守り代わりに持って行ったんだよ?看護大学に合格できたのは、そのお守り効果もあったのかも。良い後輩を持てて幸せだなぁ〜」
その時、ウエディングドレス姿にかすみそうのブーケを持った晴夏の姿が耀の脳裏をよぎった。
卒業式が終わった、翌日。同好会が始まる時間まで、耀は鉛筆で絵を描いていた。
「美澄さん、絵、上手い〜!?」
「これって、白石先輩?…大好きじゃんか」
「でも告白も連絡先交換も出来なかったんですよね?もったいない…」
(先輩の一瞬の照れ笑い…。忘れる前に残したい)




