死因
ある日、彼女は言った。
「死にたい」
冗談だろう。冗談には冗談で返すのが鉄則である。
「死にたいなら死ねばいいよ、できるならね」
日々は続く。校外学習へ行った。修学旅行へは、残念ながらはやり病のせいで叶わなかった。
またある日、彼女は言った。
「死のうかな」
冗談だろう。だから、決まってこう答える。
「死にたいなら死ねばいいと思うよ、できるならね」
そうしているうちに、もう卒業である。
「酒のめるようになったら飲みに行こうよ」
「誕生日近いしな、俺の誕生日くるまで禁酒しとけよな」
「もちろん、未成年飲酒なんてしないでよね」
「するわけないだろ、まだまともな人間よ」
「もう、卒業だね」
「3年はやかったなあ、修学旅行行きたかったわ」
「事態が落ち着いたら二人でいく?」
「いいね、せっかく旅程立てたんだし同じ道でも辿ろうか」
学校を背に歩く帰り道。気づけば3年間ずっと同じクラスだった。思い出話にも花が開くというものである。
「それじゃあね、LINEしてよね」
「またいつかね、忘れんなよ」
「」
「それと死ぬなよな、俺おまえと酒のみてえもん、せめて死ぬならサシ飲み終わってからにしてくれよ」
「私もそれまでは生きるよ、約束忘れたら殴るよ」
「高校もほどほどにな、ああ違うかおまえ専門か、頑張りすぎんなよ、身が滅ぶぞ」
「世話焼きはもの好きにしか好かれないよ、そんな物好きがいるといいね」
「運命の人ってやつだな」
「 だね」
手を振って背を向ける。もう振り返らないことにした。振り返ればきっとまた会話が始まってしまう。彼女はきっと、もうエントランスに入っただろう。
『反応してよ』
『会話が終わらないだろ』『もとよりこれでいいじゃん、無限に話せるぞここなら』
『まあ、そう、だね』
あれから2年、歳で言えば18のころ。最初の方はLINEも多かったが、時間が経てば彼女との連絡は少なくなっていくのが常である。今となっては月に一度あるかないか。
『成人しちゃったね、まだ酒はのめないけど』
『成人年齢下げるのってなんの意味があるんだろな』
『選挙権とかと合わせるためだったかな?でも酒とかは20だから、少しお預けの感覚』
『酒飲み行こうや、あと二年したら』
『今から予定たてる?2年後覚えてられるかな』
『俺は覚えてられるね、なんせgoogleカレンダーがあるからね』
『文明の利器』
『使えるもんはつかっとけ』
『そうそう、私専門やめた』
『えらく急に、じゃあなにしてんのよ』
『今通信制高校に通ってる、意外といいよ』
『そういえば今の時代そんなのもあるのか、いいじゃん』
『同じ歳だけど後輩だね』
『俺は先輩が好きだな』
『ふーん』
『なんだよ、文句あるかよ』
『よくいっしょに帰ってた同じ部活だった先輩狙えばよかったのに、じゃあ二年留年してよね』
『俺の人生安すぎない?』
『冗談よ冗談』
彼女は唐突に言った。
『死にたい、もう疲れた、学校も』
答えはもう決まっている。
『死にたいなら死ねばいいよ、できるならね』
それから卒業まで、会話はなかった。
卒業して数日、知人から一通の連絡が届く。
18歳、未亡人と言うには些か早すぎるだろうか。
ある女性との話。




