ペットくださいって言ったら、エルフが来た
……ん? 今、なんて言った? エルフ?
……いや、聞き間違いだろ。だってここ、ペットショップだぞ?
「しっつれいしま~す!」
しかし、俺の淡い希望は一瞬で打ち砕かれた。
入ってきたのは――重そうな首輪をつけ、ボロボロの服を着た一人の少女。
服はボロボロなのに、本人は元気いっぱいで、人懐っこい笑顔を浮かべている。
尖った長い耳は彼女がまぎれもなく、本物のエルフであることを物語っている。
「え、えっと……」
「何か、ご不明な点が?」
「いや、その……俺、ペットが欲しいんですけど……?」
「はい。ですから、ペットをお連れしました」
……は? 今、“ペット”って言った?
……商品……買える…………奴隷!?ペットってそういうこと!?
「ほら、自己紹介をしなさい」
「エルフ族のアイドリー・アリアです! アリアって呼んでください♪ 年齢は二十一歳です」
「この娘は正真正銘、純血のエルフ族です。年齢も若く、容姿端麗。
本来なら――一千万ゴールドはくだらない逸品です」
い、いっせんまん!?
いっせんまんて日本円にすると……十億円!?
「な、ならどうして?」
「それが……実は…………驚かないでくださいね?」
「は、はい……」
店内に重い空気が漂う。
「実は――この娘は双子の片割れなのです!」
「……え? そ、それが何か問題なんですか?」
「……もしかして、遠方のご出身ですか?」
「え、ええ……まぁ」
「なるほど。ではご説明いたします。この国では“双子”は悪魔の子として忌み嫌われているのです」
「悪魔の子……?」
「この辺りでは“真理教”という宗教が広く信仰されていますね?」
「はい、それは知っています」
真理教――このあたりじゃ誰もが知ってる宗教だ。冒険者の間にも信者は多い。
「真理教の教えでは、双子は“厄災の象徴”とされています」
「……そ、そんな事情があるんですね」
そういえば前に酒場で「双子が生まれた!」って騒いでた連中がいたっけ。
その時は何を大騒ぎしてるんだと思ったが、まさかそういう理由だったのか。
「一つ、質問していいですか?」
「どうぞ」
「仮にこの子が双子だして、でもそれを黙っていれば高く売れたんじゃないですか?」
「実は――双子は生まれながらに“印”が刻まれているのです。
先に生まれた子は右手に、後に生まれた子は左手に。……アリア、見せなさい」
「おっけー!」
アリアは勢いよく右手の手袋を外した。
そこには、確かに不気味な骸骨のような紋章が刻まれていた。
「ほ、本当だ……」
「これマジできもいよね~。私これきら~い!」
思わず息を呑む。
確かにこれは……避けたくなる気持ちも分かる。
「この印を持つ者と共に暮らすと、不幸が訪れる――そう信じられているのです」
「だから、買い手が……」
「ええ。私も地方出身でして、ここまで忌避されているとは知らず仕入れてしまいまして。
今では買い手がつかず困っていたのです」
「……なるほど」
「どうでしょう? 今回に限り――特別価格、50ゴールドでお譲りします」
「50ゴールド!?」
つまり……日本円で五千円!?
破格どころか、ほぼタダ同然じゃないか!
それだけ差別が根深いってことか……。
だが――そんなの俺には関係ない!
双子? だからどうした!俺は日本人だ!
双子差別なんて聞いたこともない!
むしろこんな可愛いエルフを5000円で買えるなんて――
異世界ドリームすぎる!!!
「買います!」
これは運命だ。
そう感じた俺は即決で彼女、アリアを購入することに決めた。
「……!!!本当ですか?!ありがとうございます!!!今すぐ手続きをいたしますので少々お待ちください!」
店員は興奮した様子でそう捲し立てると、ばたばたと部屋を出ていった。




