表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《完結》戦利品にされた公爵令嬢  作者: ヴァンドール
7/13

7話

 いよいよ王宮での舞踏会の日がやって来た。

 私の支度はメイド長と他の使用人も手伝って、念入りに仕上げられた。

 これは偶然かもしれない。いや、ただの偶然に違いない。なぜか私のドレスの色は公爵様の瞳の色と同じブルーのドレスだった。

 ドレスからアクセサリーまで全ては公爵様が選んでくれたとメイド長に聞かされた。

 私はそんなことに照れている自分に苦笑してしまった。

 そして支度が終わった公爵様が私の元へとやって来て

「私の思っていた通り、その色は君にとても良く似合っている」

 と褒めてくださった。私は敢えてドレスの色については何も聞かずに

「公爵様もとても素敵です」

 と返した。すると公爵様は

「ありがとう」

 と言って、少し照れていらっしゃった。

 そしてこれも偶然なのかしら? 公爵様はポケットチーフなど所々に私の瞳の色をあしらっていらした。

 そんな公爵様はそっと手を差し出して私をエスコートをしてくださった。

 こうして私たちは馬車に乗り、王宮へと向かったのだった。


 私はこちらに来てから初めて舞踏会に参加する。

 元いた国の社交界では正直、王家の血を引く公爵令嬢として割と目立つ存在ではあったが、こちらの国の社交界とはどういうものなのか、全く想像もつかない。

 社交界の中でも今日の舞踏会は王家主催なのでそれなりの上位貴族も参加するはずだから、伯母である侯爵夫人も参加してくれることを期待している。


 王宮に着くと着飾った大勢の紳士淑女たちが次々と会場の中へと入っていく。

『こんなに大勢の中から伯母様を見つけ出すことは出来るのかしら?』

 と不安になったが、どんなことをしてでも探さなければと気合いを入れた。


 人混みに押されながら、公爵様と私が会場の入り口に立った瞬間、なぜか人並みが左右に分かれて注目を集めた。

 そして彼方此方で人々が囁いている声が聞こえてきた。その声に耳を傾けると

「見て見て、あちらはウエスタント公爵家のランガー様よ」

「公爵様が参加なさるなんてお珍しいわね」

「公爵様と一緒にいるご令嬢は誰なのかしら?」

 とか

「お二人共お似合いだわ」

 など様々な声が聞こえてきた。

そしてそんな中、バーデン辺境伯が近づいて来て

「これは公爵様、相変わらず目立っておられますな」

 と声を掛けられた。公爵様は

「先日も申したように、くれぐれも余計なことは口にしないように」

 と釘を刺したにもかかわらず

「陛下に領地の件は執り成すと約束しておきながら昨日、謁見したらその話は却下された、どういうことか説明して頂きたい」

 と言っている。

 すると公爵様は

「こんなところでする会話ではないだろう!」

 と怒ると、今度は私の方を見て何か合図を送っていたが私はそれを無視した。するとそれに腹を立てた辺境伯は

「《戦利品》のくせにこの俺を無視するとは少々、図に乗っているようだな」

 と言うと公爵様が

「とにかくその話も今、ここで話すことではない。場をわきまえるべきだ」

 と言い返したが辺境伯はなかなか引き下がらない。

 すると周りが騒ぎ出して

「聞きました? 《戦利品》ですって」

 とか

「もしかして敵国の人間なのかしら?」

 などなどかなりの人が集まってしまった。

 居たたまれず私がその場を去ろうとした瞬間

「アリシア! よく無事で」

 と言って抱きつく一人のご夫人を見ると、その方は私が会いたかった伯母様だった。

 私は思わず涙を流して

「伯母様、どれほどお会いしたかったか」

 と言って伯母様の背中に腕を回して縋り付いた。

 すると伯母様のすぐ後ろには私の従兄のジェフリーお兄様がいた。

 お兄様も涙ぐまれて

「アリシア、会えて良かった」

 と言って私の後ろから抱きつかれた。私たちは暫く言葉を発せず再会を喜んでいた。

 そして突然伯母様が皆の注目を集めるように大きな声で

「アリシア、貴女の家族の亡命は教皇様がお認めになったのに、手紙が検閲に引っかかって届かなかったのよ」

 と仰ると周りがどよめいた。すると伯母様は続けて

「貴女は隣国の王家の血を引いた公爵令嬢だけど、貴女の家族は既にあちらの王家に見切りをつけていたのよ。だから今回の戦争を回避しようと動いている最中にあんなことになって、間に合わなかったの、ごめんなさい」

 と謝られた。すると周りからは

「隣国の公爵令嬢ですって」

 とか

「教皇様がお認めになったのですって」

 などなど様々な声が聞こえてきた。

 その言葉に呆気に取られた辺境伯は苦々しい顔でその場を去って行った。

 そして公爵様が伯母様に

「確か貴女はリンドバーグ侯爵夫人でしたね」

 と聞くと

「ええ、そうです、貴方はウエスタント公爵家の確かランガー様だったかしら?」

 と返されていた。すると今度は従兄のジェフリーお兄様が私の手を引き

「さあアリシア、今日から我が家で暮らすといい」

 と言って引き寄せると、公爵様がもう片方の手を取り

「いいや、君が帰るのは我が屋敷だ」

 と言い返した。どうしたらいいのか分からず、戸惑っている私に伯母様が

「取り敢えず今日はうちにいらっしゃい、家族のことも色々と聞きたいから」

 と言うと公爵様が

「だったら今からうちの屋敷で話し合いをしませんか?」

 と申し出た。すると伯母様が

「分かりました。ではそちらで話し合うことにしましょう」

 と折れた。

 その後は王家主催の舞踏会だったので陛下のお言葉を聞き終えてから、私たちは場所を公爵邸へと移すことになった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ