6話
彼女にようやく私の本心を伝えることができ、ホッとしていた。
これでやっと、おどおどする彼女の姿を見なくて済むと安堵した。
ただ、彼女が自分が両親のための人質だと知っていたことには驚いた。
人質の件は、我が屋敷に彼女がいることを知った陛下から言われたことではあったが、元々はあの国を統治するにあたって便宜上そうしただけで、どちらかと言えば建前的なものだ。
なぜなら、彼女の両親が倒された王家に敵対し、戦争を回避するために奔走していたことは確かだったからだ。
だからこそ私は彼女に選択肢を与えることができたのだ。しかし、そんな彼女がこのまま留まりたいと言ってくれたことは正直嬉しく感じた。
いずれは両親にも会わせることができるように、陛下に願い出るつもりでいる。そうなれば、どれほど喜んでくれるだろうか。
なぜか最近の私は、彼女の喜ぶ顔を期待している。自分でも気づかないうちに、どれだけ彼女に惹かれてしまったのかと思わず苦笑してしまった。
先日もあのバーデン辺境伯に
『元々はあの国では王家の血を引く公爵令嬢なのだから、たまにはお洒落して社交の場にも出たいのではないのか』
と言われ、確かにそうだと思い、来月、王宮で開かれる舞踏会に誘ってみた。すると彼女は了承してくれたので、私がエスコートを買って出た。
なんだか私の方が浮かれているようで、またしても苦笑してしまった。
今までは億劫としていた社交の場だったが、彼女が一緒だったらきっと楽しいに違いない。
しかし、一つ気がかりなことがある。それは彼女が《戦利品》として、こちらの国に来たという噂が広まっている可能性は否めない。なぜなら、あのバーデン辺境伯が絡んでいるからだ。
彼はなかなか食えない男だ。そんな彼が勧めた舞踏会でもあるのだから、気をつけなければ彼女を傷つけかねない。
最近は私と会う度に
『そろそろ彼女のことは飽きたのでは?』
などと下劣な言い方で聞いてくる。だから私は
『彼女のことは《戦利品》などと思ったこともないし、もちろんそのように扱ったことも断じてない』
と言ったばかりだった。
だから彼には、くれぐれも彼女のことを傷つけないよう、きちんと釘を刺しておかねばと思うのだった。