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《完結》戦利品にされた公爵令嬢  作者: ヴァンドール


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5/13

5話

 今日、ジョンソンさんが久しぶりに仕事に復帰した。


「アリシアさん、私が休んでいる間、色々とありがとうございました」

 

「お身体はもう大丈夫なのですか?」

 

「お陰様でアリシアさんが仕事を引き受けてくださったので十分休むことができ、この通りです」


 そう言いながら両腕を上げたり下ろしたりしながら、元気良く答えてくれた。

 確かに顔色もよくお元気になられたご様子で安心した。

 このところの私は、事務仕事が多く、まるでお父様のお仕事の手伝いをしている頃と変わらない生活をしている。


 私のお父様は身体が弱かったのでいつもお父様の代わりに領地経営のお仕事を公爵邸の執事と一緒に手伝っていた。それがこんな形ではあるが、役に立てて良かったと内心で思っていた。


 穏やかなこの暮らしがいつまでも続くよう、願っていた私についに公爵様から呼び出しがあった。


(きっと、先日バーデン辺境伯が言っていた王宮での舞踏会のことだわ)


 私は重い足取りで公爵様の執務室に向かった。

 するとそこには何故か少し緊張しているように見える公爵様がいて、私を迎えてくださった。


「いつも一生懸命やってくれて助かっているよ、ありがとう」


 と言っていただき


「少し話がしたいのでまずは座ってくれるかな」


 私も緊張しながら座った。


「まあ、お茶でも飲みながら聞いて欲しい」 


 そう言われ、目の前には予め用意されたお茶とお菓子が置かれていた。

 そして公爵様のお話が始まった。


「まず先に言っておきたいのだが、私は君のことを《戦利品》と思ったことは一度もない」


 そう仰ってから話が続けられた。


 公爵様は、私が以前暮らしていた屋敷で初めて私を見た時のことを話してくださった。

 そして、このまま放っておけば、私はバーデン辺境伯にとって、本当の意味での《戦利品》として扱われてしまう。そう感じたのだという。


 どうにかして助けられないかと思っていたところ、ちょうどその本人から交換条件の話が持ち上がり、結果的に、私を連れ帰ることができたのだそうだ。


 そして、私がこちらで働く姿を見て


「できることなら、このままここに留まってくれたら嬉しい」


 そう言ってくださった。


 けれど同時に、公爵様はこうも仰った。


「だからといって、君の意思を無視して無理に引き留めるつもりはない。選ぶのは、あくまでも君自身だ」


 その言葉に、私は胸の奥が静かに温かくなるのを感じた。


「それで君はこれからどうしたい?」


「そんなふうに思っていただき、本当にありがとうございます。今の私には行くところもありません。

 実家が今の地位を保持出来るのも、私がこちらの国に留まり、人質の役目を果たしているからだと聞きました。ですから良ければこのままこちらでお世話になりたいのです」


「その人質という話は誰から聞いた?」


 私は思わず、

(不味い、口を滑らせてしまったわ)

 何とか取り繕おうとした。


「実は先日、お父様から手紙が届いて人質のような真似をさせて済まないと書いてありました」


 咄嗟に嘘をついてしまった。


「そうか、父上からそんな手紙が。だがよく検閲に引っかからず届いたな」


 と呟いたが、私はそれを気づかぬふりをした。


 しばらく沈黙が流れた後、公爵様は言葉を続けた。


「君がこの屋敷に留まりたいと思ってくれるのなら、いずれ公の場に出る機会があるかもしれないな」


 そう前置きしてから、静かに続ける。


「ちょうど良い機会だ。来月、王宮で舞踏会があるのだが気晴らしに一緒に参加してみないか? ドレスなどの用意はお礼にこちらで全て用意する」


(あーやはり、バーデン辺境伯の言っていたあの舞踏会のことね)


 と理解した。


 この時、私の頭の中は混乱していた。

 だけど公爵様の言葉に嘘は感じられなかった。それに今まで一度だって私を《戦利品》のように扱ったことはない、寧ろそう扱った言動をしているのはあの辺境伯の方だ。

 それに先程私が公爵様に告げたことは本心だった。

 しかしまだ完全には、公爵様を信用し切れていないので取り敢えず来月あるという舞踏会へ参加させてもらい、それまでに真実を突き止めようと思った。


 それに、この国の舞踏会に参加できるということは私の伯母様にあたる、つまりはお母様の姉に会えるかもしれないという期待があった。


 伯母様はいずれ戦争が起きた時にと母が、亡命の相談していた人物で、この国の教皇様ともお知り合いの侯爵夫人だ。しかし、戦争が勃発しそうになると、隣国との全ての手紙は禁止になり、連絡が途絶えてしまっていた。


 私はそんな伯母様に一縷の望みをかけることにした。

 まさか《戦利品》扱いの私にこのようなチャンスが訪れるなんて、それは夢のようなことだった。

 

「あー、神様どうか伯母様と会わせて下さい」


 私は胸に手をあて祈った。


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