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《完結》戦利品にされた公爵令嬢  作者: ヴァンドール


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4/13

4話

『あー、驚いたわ。ふと見上げると目の前に公爵様がいるんですもの』

 思わず慌てて部屋を出て来てしまったけれど、きちんとご挨拶をしなくて不味くなかったかしら? 

 やはり後で、メイド長を通して謝罪の言葉を伝えた方がいいわよね。


 そう思った私は、まず自分の部屋へと戻り、心を落ち着かせてから何と謝罪をすべきか考えていた。

 公爵様は素敵な方ではあるけれど、どこか近寄りがたく苦手意識が働いてしまう。それは私自身が《戦利品》としての意識が強いせいなのかもしれない。

 それにしても先ほど取った私の行動はあまりに失礼だったわよね。やはりメイド長のところへいって上手く執り成していただかなくては。


 そしてやっと落ち着きを取り戻した私はメイド長の元へと行った。


「先ほど、書斎で公爵様にお目にかかったのですが、あまりに突然で驚いてしまい、ご挨拶が出来ませんでした。どうか私が謝罪していたとお伝えください」


 そうお願いをした。


「ちょうど今、旦那様がいらして手紙の翻訳と税収の計算書のこと、感心なさっていましたよ」

 

「私がご挨拶しなかったことを怒ってはいなかったのですか?」

 

「いいえ、そんなことは一切ありませんでしたが」

 

「あーよかったわ」

 

「それでなのですが、旦那様はアリシアさんのことを大変、評価なさっていて、このままジョンソンさんの助手として色々と手伝って欲しいとのことでした」

 

「え、私がですか?」

 

「はい、アリシアさんです」

 

「私は一体何をすれば良いのでしょう?」

 

「取り敢えずアリシアさんはまず旦那様のところへ行って説明をお聞きください」


「え、私一人で行くのですか?」


「はい、そうなりますが」


 と言われ、私は仕方なく一人で公爵様の書斎へと向かった。

 扉をノックすると中から声がした。


「失礼します」


 中へと入るとそこには机に向かっている公爵様がいらした。


「手紙の翻訳と税収の計算だが良く出来ていた、ありがとう」

 

「いえ、それよりもご挨拶が遅れて申し訳ありませんでした」

 

「ん? 挨拶がどうかしたか」

 

「あ、いえ」

 

「それよりこれからの君の仕事についてだが、しばらくはジョンソンの手伝いをしてもらいたい。

ああ見えてジョンソンは結構な年なので、これからは段々と体もきつくなると思う、だから君が手伝ってくれると有り難い」


「本当にそれだけでよろしいのでしょうか?」

 

「それだけで充分だが、他に何か?」

 

「いえ、それではよろしくお願いします」


 と言って、またもや慌てて部屋を後にした。  私は自分の部屋へと戻りながら


(本当にそれだけで済むならどんなに嬉しいことかしら)


 と一人言を口にしていた。


 それから数日後、ちょうどその日はメイド長はお買い物があるからと朝から出かけていた。


 ジョンソンさんはまだ仕事には復帰出来ずに自室で休まれていて、私は頼まれていた書類仕事をしていた。

 すると階下が騒がしいことに気づき下に降りると、そこには使用人に止められているあのバーデン辺境伯がいた。

 そして私に気づくなり不快な視線を向けてきた。


「おー随分と見ないうちにさらに綺麗になったではないか、さては公爵様に可愛がられておるのかな?」


 相変わらず下衆な言い方をされた。

 

「何かご用でしょうか? ただ今公爵様はお留守にしておられますが」

 

「知っておるよ、先程まで王宮で一緒だったからな。今頃はまだ陛下と話されているはずだ」


 嫌な予感がした。すると


「そろそろ公爵様もお前には飽きた頃だと思ってな、この俺が迎えに来てやったのだよ。

お前は《戦利品》であり、人質でもあるのだから、お前の家族が身分を保ったままあちらで暮らせるのもそのお陰だ」

 

「では、私はこのままずっと帰ることは出来ないのですか?」

 

「まあ、それは今後のお前の態度次第だな。

このまま俺のところへ来るなら陛下に頼んでやってもよいぞ。

 しかし、公爵様には自ら俺のところに行きたいと言うのだぞ」


 それから驚くべきことを話し出した。

 来月、王宮で舞踏会があるのでそこにお前を参加させるよう、公爵様に進言するからその際に俺が声をかけたら、辺境伯領の方が両親に会いに行くのに近いので俺のところに行きたいと願い出ろと言う。

 そうすれば必ず両親にも会わせてやるし、望むなら両親の元に戻れるよう、陛下に俺が願い出てやってもいいと言った。それを聞いて私は迷った。

 どうすることが正解なのかと。だけどこの男は信用できない。私の直感がそう告げる。

 今はもう、これ以上この男と二人で話すのは危険だと思ったので今日のところは


「分かりました」


 と言って、帰ってもらうことにした。


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