表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《完結》戦利品にされた公爵令嬢  作者: ヴァンドール
3/13

3話

 やっと仕事に目処がつき、久しぶりに屋敷に戻ると執事のジョンソンが熱を出して倒れたという。 

 思わず『もういい年だからな』と心配になった。

 年の割に若く見えるのでつい仕事を任せ過ぎてしまったことを反省していると、メイド長がやって来て

「ジョンソンさんが熱を出して動けないのに、残っているお仕事を気にしてばかりいるので、もしかしたらアリシアさんでしたら頼めるのではないかと思い、お願いしてしまいました」

 と言う。それを聞いてすぐに書斎に行くと、机に向かって真剣に書き物をしている彼女がいた。

 余りに集中しているのか、しばらく私の存在に気づきもしなかった。

 そして漸く気づいたと思ったらすごく驚いた顔をされてしまった。

 そんな彼女に思わず

「何をしている?」

 と、冷たい言い方をしてしまった。

 何をしているかなんてメイド長から聞いて知ってるくせに、なぜかそんな言葉しか出なかった。

 そして机の上の書類を見ると税収の計算をしている途中だった。

 感心しながら

「君は計算も得意なんだな」

 と言うと、なぜか済まなそうに謝った。そして『失礼します』とだけ言って慌てて部屋を出て行ってしまった。

 残った私は翻訳された手紙と税収の計算書を確認した。

 翻訳はとても簡潔で、それでいてどこか温かさを相手に感じさせるよう配慮されていた。

 税収の計算書は全て完璧だった。

 確かに公爵令嬢として育ったのだからそれなりの教育は受けていたのだろうが、普通、貴族の女性がここまで出来るだろうか? と思い、彼女にとても興味を惹かれた。

 しかし彼女は妙に私を警戒しているよう感じた。

 もしかしたら自分があのバーデン辺境伯に言われた《戦利品》だと思い(私の個人的なメイド)ということを意識させてしまっているのか? だとしたらその誤解を解かなくてはいつまでも警戒されたままだ。

 私は『はー』と思わず溜息が出てしまった。

 

 正直私はあのバーデン辺境伯から彼女を救うつもりで連れ帰っただけなのに、そんな誤解をされてしまうとは情け無い。

 確かにこのところ忙し過ぎて彼女にはまだ何の話もしていない、そう思われていても仕方がないのかもしれないな。


 初めて彼女を隣国の屋敷で見た時、なぜか助けなければと思った。もし見過ごしてしまえばあの悪名高いバーデン辺境伯のことだ、本当に彼女を(個人的なメイド)として扱っただろう。

 そんな時、丁度彼から彼女の話を振られたので難なく助けることが出来てホッとしていたのに、そんな誤解をされたままとはな。

 我ながら呆れるばかりだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ