11話
早朝、急を告げる早馬が到着した。驚きながら手渡された手紙を開くと、それは執事のジョンソンさんからのものだった。内容は、陛下との狩の最中に公爵様が落馬し、意識不明の重体だという、信じられない報せだった。
あまりの衝撃に手が震え、私はお父様たちに手紙を見せると、急ぎ馬車で公爵様の元へと向かった。
もしかすると、もう二度と公爵様とお話しすることさえ叶わないかもしれない。そう思うと、自然と涙が頬を伝った。『どうしてこんなことになってしまったの?』
と、私は心の中で叫んだ。
公爵邸までは、どんなに急いでも半月近くかかる距離だ。この埋めることのできない距離がひどく恨めしかった。それでも、普通なら半月かかるところを、寝る間も惜しみ、馬車を乗り継いで十日で到着した。
公爵邸では、すぐにメイド長が対応してくれたが、公爵様はまだお休みになっていた。
意識が回復したのは、事故から三日後のことだったと聞かされた。今はただ、命の危険がなくなったことだけが唯一の救いだった。
私はベッドの枕元に椅子を置かせてもらい、眠る公爵様を見守った。
腕と足には添え木と包帯が巻かれ、その姿が痛々しく感じられた。
どれくらいの時間が経ったなかしら? しばらくして、公爵様が目を開けられた。
とても驚いた表情で
「どうしてここに?」
と尋ねられ、私は
「本当に良かった」
と答えるのが精いっぱいで、ただ涙を流した。
そんな私を公爵様はじっと見つめ
「ごめん」
と一言呟いた。
短い沈黙の後、私は
「痛むところはありませんか?」
と尋ねた。公爵様は
「もう大丈夫だ」
と仰ってから
「ありがとう」
と言って、再び目を閉じられた。やがて寝息を立て始められたので、私はそっと部屋を出て、執事のジョンソンさんの元へと向かい、公爵様の詳しい容態を伺った。
医師の診断では、あと一月もすれば歩けるようになるとのことだった。
そしてその時、驚くべき話を聞かされた。
今回の事故は単なる落馬ではなく、どうやらバーデン辺境伯が仕組んだものではないかと、現在調査が進められているという。
話によると、辺境伯は領地も私も手に入らなかったことを、公爵様が原因だと逆恨みし、部下に内密に命じて、狩に使う馬に興奮剤を与えさせたらしい。
まだ取り調べの途中だが、ほぼ間違いはないだろうとジョンソンさんは話した。
それを聞き、私は自分のせいでもあるのだと思い、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。