10話
公爵様が帰られてから一月が経った。
私は元のお父様の仕事を執事と共に手伝っていた。すると
「お嬢様、旦那様は前よりお元気になられましたし、私もおります、だからお嬢様はご自分の好きになさって良いのですよ」
と言われた。私は
「違うの、まだね、答えが見つからないだけなの」
と答えた。すると
「それなら良いのですが」
と言うので
「いつもありがとう、もう少し考えたら答えが見つかるかしら?」
と聞くと
「お嬢様、今回ばかりはご自分の気持ちを一番に考えて下さい」
と言われてしまった。私は
「分かったわもう一度自分と向き合ってみるわ」
と返した。
『自分の気持ちかー、それさえ分からないなんて。ただ今頃公爵様は何をしているのかしら? と思う時があるのは何故かしら』とふと疑問に思っていた。
それからどのくらい経った頃かしら、屋敷に従兄のジェフリーお兄様が訪ねて来られた。
「公爵邸を訪ねたらアリシアは実家にいると聞いたんだ」
と言い
「公爵から君に結婚を申し込んだと聞いたが、何と返事をするつもりだ?」
と聞かれ
「まだ答えは出てないの」
と返した。すると
「僕はね、子供の頃からずっと君のことを見てきた。そして大人になったら必ず君と結婚出来ると勝手に思っていたんだ」
と言われ、驚いていると
「もしかして僕の気持ち、全く気づいてなかったのか?」
と言われてしまった。私は正直に
「ごめんなさい、思ってもみなかったわ」
と返すと
「それは随分と酷いな」
と言って笑っていた。
それから昔話をしながら私は自分の気持ちと向き合っていた。
その日、お兄様は
「僕のことも選択肢に入れてくれないか」
と言ってから何もなかったように私の両親に挨拶をして、その日のうちに帰ってしまわれた。
私はまたも混乱する頭で考えていたが、何も結果が出せないまま気づけば眠りに落ちていた。
(公爵邸にて)
今日、アリシア嬢の従兄が訪ねて来た。
アリシア嬢は両親のところに帰って、そのままそこに残っていると伝えると
『それではこれからアリシアの元へ向かうとするか』
と言うので私は思わず
『アリシア嬢には結婚を申し込んだ』
と伝えると驚いた顔で
「アリシアのことは僕が幸せにする」
と言って出て行った。
やはりあの男もアリシア嬢のことが好きだったんだなと納得した。
初めて会った時から感じてはいた。あの男のアリシア嬢を見る目はまるで愛おしい人を見つめる目だった。
彼女は彼のことをどう思っているのだろうか。
昨日今日、知り合ったばかりの私より気心の知れた相手の方がいいのか? 考えれば考えるほど心が騒つく。
彼女と別れてから大分経つが手紙一枚さえ来ない。
三ヶ月、時間が欲しいと言われたが、もう既に答えは出ているのかもしれないな、こうして一人で考えていると悪い方ばかりへといってしまう。
今まで女性のことでこれほど悩んだことなどなかったのに
『最近の私はどうかしてるな』
と一人苦笑した。