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六杯目〔これ牛乳と持っていくから2〕
「味のない水と味のないアジなら、どっちを選ぶ?」
「えっと……(あじだらけなのに味が無い!)」
「ちゃんと曖昧に選べよ」
「……――水、かな……?」
「ハッキリしろよッ! 三者三様だろうがッ!!」
「ひ。ス、スミマセンっ。――えっと、水で!」
「……。それじゃお袋さん、浮かばれないよ」
「……お袋さん?」
「おまえにもあるだろ、母親が」
「え。ぁ、はい……」
「夜な夜な枕もとで、寝耳に水を垂らしてくれてたんだぞ?」
「え、なにそれコワい」
「いつからおまえ、そんな顔になっちまったんだよっ」
「産まれた時から……」
「ゴロリゴロリ言ってんじゃねぇッ! クマみたいな顔しやがってッ!!」
「え、でも……(言ってるのはワクワクするほうなのに)」
「ったく。子に似て親も大変だな」
「いや、子には似ないと思いますってイタタなにを!?」
「これ牛乳と持っていくから」