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十八杯目〔全力で走るダッシュな〕
「お。刺さった」
「……――ワタシのツノで遊ぶの、やめてもらえませんか?」
「べつにいいだろ、落とし物なんだから」
「落ちてませんっ折られたんです!」
「……。ツノでよかったじゃねぇか」
「え?」
「おれは心が折れたわ」
「サトウさん……?」
「――ところでさっきから、またうるさくねぇか?」
「そういえば、確かに。また勇者ですね」
「めんどくさい連中だな」
「でも正しいのは向こうですから」
「なんで?」
「だってワタシ、魔王ですし」
「……。知らねぇよ、そんなヤツ」
「エエ」
「おまえがなにしたって言うんだ? ただの根暗だろ」
「ヒドっ」
「――いいからさっさと倒してこいよ。うるせぇ」
「え、でも。まだ結構、遠いですよ……?」
「先手必勝、焦りは禁物」
「どっち?!」
「いいから行け」
「はい……」
「全力で走るダッシュな」