雪山で出会った雪女がとんだポンコツで「まだ誰も凍死させたことない」って言うし家についてきちゃうし告白してくるし勘弁して欲しい
『第5回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞』参加作品です。
雪山で女に会った。腰から下が全部雪に埋まっていた。
「大丈夫ですか!?」と抱え上げようとしたら死ぬほど冷たかったのだ。
髪も白い、眉も白い、瞳すら白い。
「ぎょえっ! 雪女だ!」
「道に迷ったのじゃ〜。助けてたも〜」
ええっ!? そんな雪女聞いたことないよ。
「もう300年ここにいるんじゃが、今だに道が覚えられないのじゃ」
とんだポンコツじゃん!
何とか助けると家までついてきた。
氷水を飲みながらリビングで愚痴る。
「今まで一度も人を凍死させたことがないんじゃ……」
僕としては助かるけど! 『雪女』としてはどうなの!?
「実績が欲しい……ちょっと凍死してくれんか」
「嫌に決まってんでしょ」
「さっきはありがとな。これお礼じゃ」
アイスクリーム1キロドオーン!
キンキンに冷えたビールジョッキ22杯ドドドオーン!
釘も打てそうに凍ったバナナ一房ドオーン!
「さ。遠慮なく食べるのじゃ♡」
「体内から凍死するのでやめてください」
外に追い出した。
朝起きて寝ぼけたままベーグルを出そうと冷凍庫を開けた。
「うわっ!」
雪女が冷凍ケースに体育座りしてた。
雪女僕を見てにんまり。手をひらひら。
「ハロー!」
え? どうやってここに収まったの!?
「ふううう。いい感じに凍るぅ」
「当たり前でしょっ! てか、ああ〜」
冷凍ケースにあった食料全部テーブルの上に乗ってるううう。
「アイスがぁ〜! コンビニで買ったお高いアイスがぁ〜!」
「なんじゃ。外に出しとくだけで溶けるとは。根性ないの!」
「アイスに根性あるわけないでしょ!」
「ちちんぷいぷ〜い!」
雪女がくるくると人差し指を回すとアイスが溶けた姿のままカチコチになった。
「元通りじゃ〜。ドヤッ」
「平ぺったく! なってるし!」
「だって……」雪女が瞳をうるうるさせた。
「一人で外にいるのが寂しかったんじゃ。少しでもそばにいたかったんじゃ。ハッキリ言うけど好きじゃぁ!!」
「うっわ! ごめんなさい! 妖怪と結婚していい結果になった人、見たことないんで!」
「ワシにそなたの温もりをくれよ〜〜〜」頬をスリスリ。
「うん! お互いのためにならないから! くっつくのはやめようね!!」
抱きつかれて凍え死ぬかと思った。
なんだかんだと仲良くなり携帯をあげた。
毎日雪女からメッセージが届く。
『今日は凍死日和じゃぞ♡』
『凍死日和ってなんですか?』
ある日電話口の向こうから焦った声が聞こえた。
「吹雪で前が見えなぁぁぁぁい!!」
ねぇ、本当に! 本当に雪女なの!?
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