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サイケデリック・モノクローム ~異能学園成り上がり計画~  作者: ポテトギア
第五章 闇盛る夏・下天
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乙女の秘密の作戦会議

芹田(せりだ)と話すきっかけが無いわ」


 夏休みのある日。双狩(ふがり)永羅(えら)は三年の先輩である針鳴(じんみょう)八柳(やなぎ)の部屋に来ていた。

 星天学園の寮は全学年で一つの建物である為、学年が違っても気軽に会う事が出来る。風守隊(かざもりたい)の事件を経て双狩の芹田への想いを知った針鳴は、恋愛相談と称してたまに二人で遊んだりしていたのだ。


「きっかけって言ってもねぇ。あなた達同じクラスなんでしょ? 話題くらいあると思うけど」

「それが無いから困ってるのよ」


 クッキーをさくさく食べながら応じる針鳴に、双狩は深刻な顔で答える。テーブルに置かれたレモンティーはひと口分も減っていない。


「そもそも夏休みなんだからクラスなんて関係ないわ。ほとんど寮にいるから会う事も無いし」

「男子寮まで遊びに行けばいいじゃない」

「何の用事も無しに行けると思う? 絶対変に思われるわよ」

「そうかなぁ。友達と遊ぶくらい普通じゃない?」

「そもそも私と芹田って友達なのかしら……一緒に騒動を治めたり『ゴーストタウン』の対策本部として話をしたりするけど、結局はちょっと関りのあるクラスメイト止まりなんじゃ……」

「あらら、ネガティブになっちゃって」


 いくら一年上の先輩だとしても、恋愛経験の無い針鳴にはあまり良いアドバイスが出来ない。しかし、せめて恋する後輩を応援しようと、こうして話し相手になってあげているのだ。


「きっかけなんて何でもいいんじゃない? 少なくとも芹田君はあなたの事を嫌ってる訳じゃないんだし、何話したって嫌な気持ちにはならないわよ」

「何でもいいって言ったって……それが一番困むぐぐ」

「はいはい、黙って聞きなさい」


 針鳴は皿からクッキーをひとつ摘まんで、難しい顔で異を唱える双狩の口に突っ込んだ。


「双狩さんは難しく考え過ぎ。話すきっかけなんて本当に何でもいいモノなのよ? 宿題の分からない所を教えてもらうのでも、暇潰しで買い物に付き合わせるのでも、思いつく大抵の事は高校生の夏休みとして自然な流れよ。そもそも初めて彼と話した時だって、志那都(しなつ)様の話をダシにして近付いた訳でしょ? そういうので良いのよ」

「……そういうものかしら」

「そういうもの」


 一応は先輩の言い分に納得したのか、ようやくレモンティーに手付けた双狩。ひと口飲むと、ティーカップを手に持ったまま目を丸くした。


「これ、美味しいわね」

「あ、分かる? 風守隊の子に教えてもらったお店のお気に入りなの。たくさん買ってあるし、良かったら一箱あげるわ」

「いいの? 相談に乗ってもらったうえに、色々貰いっぱなしだけど」

「そんな遠慮するキャラじゃないでしょうに。気にしなくていいわよ」


 棚からインスタントレモンティーの箱をひとつ取り、双狩に手渡しながらパチリとウインクした。


「ちなみに、こうやって自分の好きな物を勧めるのも、会話のきっかけ作りになるわ」

「なるほど……好きな物ね……」

「まあ好みに合わなかったら話も弾まないだろうし、先に何が好きかを聞き出してからの方がいいけどね。完全に想像だけど、男の子って特に好きじゃない物にはなかなか興味を示さない感じするし」


 双狩の正面に座り直した針鳴はそこまで言った後、ひらめいたように膝を打った。


「ストレートに聞くのがハードル高いんだったら、芹田君と親しい人に聞いてみたらいいじゃない。それかいっそ彼の行動を監視したり……なんて」

「それはもうやってるわよ」

「やってんのかい!」

「当然じゃない。光を操る私の能力をもってすれば、気付かれないよう遠くから観察したり、後をつけたりするくらい造作も無いわ。それでもこれといった好みが分からなかったのよねー。趣味とか無いのかしらあいつ」


 何てことない顔で能力悪用しました宣言をする双狩。冗談のつもりで言った事を真に受けるどころか既にやっていたという後輩を見て、針鳴はため息を零す。


「私が言えたものじゃないけど、あなたも相当周りくどいわね」

「本当に言えたものじゃなわよ」

「やってる時点であなたもツッコめる立場じゃないからね」


 女子高生じゃなければ問題になる、と言うより今すぐ問題になってもしょうがないストーカー予備軍の二人は、そんな事を言い合いながらものんびりクッキーを食べている。女子高生らしい絵面の真実は全然女子高生らしくなかった。


「ん?」


 そんな中、針鳴がおもむろにスマートバンドを起動した。浮かび上がるホログラムパネルを確認すると、十秒も経たずに閉じてしまった。


「なんだったの?」

「メッセージが来たと思って確認したらただのクーポンだった」

「ふぅん……このレモンティーのお店?」

「いえ、映画館の無料券だったわ。近くのショッピングモールでよく買い物するんだけどね、その中に新しく作られたみたい。けど私、映画とか見ないのよねぇ。双狩さんは?」

「私もあんまり見ないわね。面白そうなのがあったら調べて、暇な日があればたまに行くくらいかしら」

「じゃあ双狩さんにあげるわ。私の所にあっても期限切れまで忘れ去られるだけだし」


 すぐに、件のクーポンが添付されたメッセージが送られて来た。受け取った双狩は、ページに記載されている映画館の情報をぼんやり眺めながら呟く。


「映画ねぇ」


 クッキーを食べながら操作しても画面が汚れないのがホログラムの便利な所。今上映している映画の一覧をクッキー片手に軽くチェックしてみたが、特にピンと来るタイトルが無かったのでページの一番上に戻る。

 ふと目に入ったクーポンの詳細を見て、新たな発見に双狩は目をぱちくりさせた。


「あれ、このクーポン……二人分あるじゃない」

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