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サイケデリック・モノクローム ~異能学園成り上がり計画~  作者: ポテトギア
第二章 秘めたる想い
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否応なし同盟

 最初に放たれた能力こそ大した事なかった。だが問題なのは、それに紛れて地面から飛び出した植物の蔓。水やり用のホースほどの太さがある蔓が何本も土を割って飛び出し、俺を捕らえるように体に巻き付いた。鉄の拘束具かのような強さで俺の体が固定される。


「悪いけど、その能力も効かな――!?」


 すぐさま異変に気付いた。能力で動いているはずの蔓は俺の体に巻き付いているのだが、触れたと言うのに締め付けが緩まない。まるで地面から鉄柱が生えて俺の体に巻き付いているかのように、ピクリとも動かなくなった。能力が打ち消されていないのだ。


「ふふ、気付いてるか知らないけど、あなたの能力は有名よ? そしてさっきも言ったように、元々あなたは連れて行く気でいたの。だから当然、私たちはあなたを調べ上げているし、無効化能力への対策だってしている」

「そうですとも! 私の植物からは逃れられません!」


 風守隊(かざもりたい)の中からひょこり出て来た一人の少女は、胸を張って自慢げに言った。


「その植物らにはあなたに触れられないよう保護フィルムを張ってあるのです! 直接触らなければ、私の能力は無効化されない!つまり私の勝ちです!」


 なるほど、単純だが効果的な対策だな。確かに、能力で操られている物体と俺の間に何かを挟んでしまえば、無効化はされないだろう。

 それが、俺の体を包む無効化能力の力場よりも厚い物だったらの話だが。


「えいっと」


 たまたま手の近くにあった蔓を、指を喰い込ませるように強く握る。すると無効化能力の力場がフィルムを貫通して蔓に接触し、一気に拘束が解けた。少女の能力が打ち消され、蔓は力なく地面に落ちていく。


「なな、何ぃー!? 私の能力が破られた!?」


 自分の能力に余程自信があったのか、大袈裟に驚く少女。俺はその隙に植物が飛び出した場所から離れて後ずさった。


「フィルムが薄すぎたみたいだな。せめて髪の毛よりは分厚くしないと駄目だぜ」

「くそぅ……今月ピンチだからって薄いので妥協したのが裏目に……」

「落ち込んでる場合じゃないわよ! 彼を裏切り者ともども、捕まえるのよ!」


 リーダー格の少女の声によって、再び能力が飛び出す。今度は無理に触れて打ち消そうとはせず、ひたすらに避ける。また妙なからめ手で無効化能力を封じられても面倒だし、ここは素直に一時撤退だ。


「双狩、お前も――ってあれ、いない?」


 俺の後ろにいたはずの双狩の姿が見当たらない。いつの間にか立ち去っていたのだろうか……まあいいか。とりあえずこの場に留まるのは危険だ。


「あ、コラ待ちなさーい!!」


 風守隊という志那都のファンクラブもといトンデモ過激派グループから逃れるために、俺はひとまず校舎裏から逃げ出した。





     *     *     *





「うわぁ……探してるよ」


 学園の敷地をぐるりと囲む塀とそれに沿って並んでいる茂みの隙間に隠れて、俺は風守隊の様子をうかがっている。そこそこ背の高くなっている茂みは、屈めば十分隠れられる大きさだ。まさかこんな古典的な隠れ場所が有効だなんてな。今もちょうど、風守隊の一人が茂みを挟んで目の前の道を通り過ぎた所だ。どうやら風守隊は学園の敷地内で散り散りになって、俺と双狩を捜索しているらしい。


「全く、何でこんな事になったのやら……」

「私が巻き込んじゃったかもね。ごめん」


 出し抜けに、横から聞き覚えのある声が。

 視線をよこすと、虚空からじんわりと双狩の姿が浮かび上がった。


「……!?」


 驚いて大きな声を出しそうになるのをぐっとこらえる。そんな俺の様子を見て、双狩は面白がるように口元を緩める。


「私の能力は言ったでしょ? 光を操る能力」

「……な、なるほど。自分に当たる光を曲げて透明化したとかそういう……」

「まあそんな感じ。校舎裏から逃げる時、既に透明化してあんたについて行ってたのよ」

「そうだったのか。てっきり俺を置いて先に逃げたのかと思ってた」

「私もそこまで白状じゃないわよ。さっきだって守ってもらったんだから」


 心外だと小声で異を唱える双狩。

 しかしまあ、彼女と合流した所で状況が好転した訳でも無い。風守隊からすれば、何としても俺と双狩を捕まえたいのだろうが、俺たちは当然捕まる訳にはいかない。


「この現状、どうすれば決着が着くんだ……?」

「全員倒しちゃったらいいんじゃない? あっちもヤル気満々みたいだし」

「そういう訳にもいかないだろ……ランク戦でもないのに能力で戦うなんて」


 こうなったら志那都に事情を説明して何とかしてもらうか……いや、それは止めておこう。彼女たちにとって志那都はもはや神聖な域に達している。本人を登場させて変に刺激を与えてしまったら、もっとややこしい事態になりそうだ。志那都は最終兵器として最後の最後まで温存しておこう。


「逃げるにしても戦うにしても、とりあえずあの風守隊について知っておいた方が良さそうだな。双狩、知ってる事を教えてくれないか? お前も新入りとはいえメンバーなんだろ?」

「悪いけど、ほとんど何も知らないわよ? いろんな学年やクラスが入り混じった集団で、だいたい二十人前後はいたはず。さすがに全員の能力とかは把握してないけど……隊長の事は知ってるわ」


 隊長。先頭に立って話していた、青紫色(サルビアブルー)の髪の彼女か。重要な情報だ。


針鳴(じんみょう)八柳(やなぎ)。能力は確か、電気を操る能力だったはず」

「電気を……俺の顔面に電撃ぶつけたのはあいつだったのか。それにしても電気を操るってまさか、電子機械とかを自由に操ったりできるのか? だとしたら厄介なんてもんじゃないぞ……」

「いや、そこまでは出来なかったはずよ。普通に電撃飛ばせるだけって聞いてるけど」

「ホントか? ならいいんだけど」


 だとしたら、隊長の能力は正直問題じゃない。放電攻撃だけなら俺の能力で十分対処できる。問題は、風守隊の中にレーダーのような探知系の能力者がいた場合だ。もしいるのなら、コソコソと隠れても無駄だろう。逆に、いる前提で正面衝突するにしても、無策で挑むほど愚かではない。


「ところで今更なんだけど」


 俺はふと思いついた疑問を双狩へと投げかけてみる。


「俺たち成り行きで一緒にいるけど、お前的に都合が悪かったら全然別行動でもいいぞ? 一人で透明になって動いた方が楽だろうし、もしそうしても俺は怒るつもりはない」

「一度でも私が嫌だなんて言った? 協力して切り抜けた方が良いに決まってるし、ここまで来れば道は一つよ。それとも、あんたにとって私は足手まといだったり?」

「いや全くそんな事は思ってない。すみませんでした」


 どうやら野暮な質問だったようだ。俺としても一人じゃない方が心強いし、何も問題は無い。


「よし、じゃあ一旦、風守隊について情報を集める事にしよう。双狩は透明化して後ろを着いて来てくれ。本当は俺も透明になれればいいんだろうけど、どうせ打ち消しちゃうだろうしそのままで行く」

「何か心当たりがあるの?」


 首をかしげる双狩に見えるよう、俺は部室棟三階のとある部屋を指さした。


「学内情報部。あそこには学園中の噂や情報が集まってるって話だ。あそこには友達もいるし、事情を話せば協力してくれるはず」


 風守隊は、志那都はもちろん、その周囲にいる俺たちも監視していたかもしれない。だとしたらケンが学内情報部に所属してる事も知ってそうだし、俺の考えを読んで先回りされてるかも。念のため学園端末でメッセージを送っておこう。部活中だし見てくれるかどうかは分からないけど。


「よし、行こう」


 学園端末を仕舞い、双狩に声をかける。双狩は頷いたのち、能力を使って姿を隠した。

 俺は茂みからゆっくりと顔を出し、周りに誰もいないことを確認して部室棟へと動き出した。

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