返事はオーパーツに記されて
昔、夢の中で神様にサイコロを振れと言われた。
カラン 光飛び散り空に回る。
転がり止まるサイコロ。
「1、望みをひとつ言いなさい」
損をした気がした。
「6だと力を6分割です、些細な事しか叶えられません」
得をした気になる。
「望みは」
問いに転生小説にハマっていた私は勿論、
「前世の記憶」
願いは即座に叶えらた。
結婚相手にしておけば良かったと思う現在の私。
「先生、どうされたのですか」
助手である彼が発掘された石版や鏡を前にし、しかめっ面の私に問うてくる。
「オーパーツ、ですよね。古代文字ってロマンがあります、この鏡も。文字がぐるりと掘られてて、魔術か何かに使われたのかな」
君はそれを私の背後から覗き込み眺める。小柄な私は子どもの様に包まれている感があり、少しときめく。
「知りたいか」
後ろに問う。私はコレが読めるからな、何しろ彫り込んだ張本人だ。その頃は筆記具が石版とミスリルのペンだったのだ。
ちなみに鏡の方は、
『貴方もこれを百日眺めると美人になれる魔法の鏡』
店の宣伝文句。
「解読が出来たのですか! それは世紀の大発見です!古代文明や、かつてあった魔法が廃れてしまった謎が解けるのでしょうか」
きっと高尚な事柄がこれらに書かれているに違いないと思っている気配が、むんむん漂って来てる。
「あっ! 外に漏れてはいけません、入られない様にしないと」
さっと離れると、カチリ。鍵をかけた音。私はクルリと椅子を回転させ、戻る助手と対面。
「鍵をかけることもないだろうに、この部屋は窓も無いから完全なる密室、地震でも起きたら閉じ込められるぞ」
「でも。バレたら困りますから」
長身の身を屈め、美的に迫力あるご尊顔を私に近づける助手。背もたれがキシリ。
「バレたらとは」
「僕は2の目が出たのです」
にっこりと笑う。まさかこいつもサイコロを?
「そうです、小さい頃から何か忘れている気がして、それを思い出す事と、その相手に出逢える様にと、願いました」
「前世の半分ではないの」
「はい、2分割ですから。最後に約束した事柄だけでした。戻ってきたら返事を聞かせて欲しいと僕は言った」
時が巻き戻る。
「私は、石版にもう書いたと答えた。君が戻る前に火山が噴火をし街は沈んだ」
石版には君からの求婚の詩に私の返歌の羅列。
椅子が下り机に当たる。
「書いた内容は覚えているの」
問いかけに首を振る君。
「でも、なんとなくわかります」
ならば返事は。
全身が甘く朱に染まる中、目を閉じた私。