表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/32

ボルフの無茶ぶり

「何度来ても返事は一緒だよ!ボルフ!祈りの衣は渡せない!」


気の短い父さんの声が今日も神島中に響く。

人の良いボルフが漁師で荒っぽい父さんに追い払われそうになって困り切っている。

最初はびっくりしたけれど、今やおなじみの光景だ。


「いくらお金を積まれてもダメだ、神に捧げるためだけに作るっているんだ」


私は糸を染め、織り機に糸をかけて、織るだけならできるのである。

しかし、糸芭蕉を育て、手入れをして、刈り取るのはともかく、「うだき」や「うづみ」などをして糸にするのを、あきらめることにした。

芭蕉布やっぱり高いだけあるね!

しかも、我が家で作られる「祈りの衣」には、さらに工夫というか、特別な加工がある。

シルカという真っ白な木の実から、絹によく似たごく細い糸を紡ぎ出して芭蕉の糸と混ぜて織るのだ。

試しに着てみて怒られたが、その軽さと涼しさにびっくりした。

不思議な光沢があって、顔が明るく見える素晴らしい布なのだ。

これはボルフが欲しがるはずである。

ボルフが何をしている人かは知らないけれど。


「漁だけの稼ぎでなんとか暮らしているんだ、本当にお金は要らないよ」

「じゃあ」


ボルフの声が必死の抵抗をしている。


「キャリコの薬代分だけでもどうにかならないかな?」


うっ、と父さんが詰まるのが分かった。

ひらり、とボルフが請求書らしき紙を見せる。


「俺たちは文字も数も読めない。分からないから払えない」

「その理屈は通じないよ」


私はパッとボルフからその紙を奪った。

請求書には薬らしきものの名前と銀貨五枚と書いてあった。

おっ、今こそ活躍の時なんじゃないの?

私はボルフに言った。


「祈りの衣には敵わないけれど、私が新しい布を織って売るから、それでお代にしてくれない?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ