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統一戦線記 -ルマの商い記-  作者: 八樹聡
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ルマの商い記 -8-

人があまり立ち入らない地区。

それ故に迷い込んでしまうといった揶揄も確かに存在している。

だが、それは市場の区画が持つ意味を知らない外国人観光客の噂に過ぎない。

区画には区画の意図が存在している。

一般入口から近い場所は活気よりも静かに迎え入れられるような商店を配置している。

そのため行き帰りにゆっくりしたい場合にはこの地区を使う。

ここから道2本分の区画は緩衝地帯のように様々な商店が軒を連ねている。

そこを抜けると、いよいよ大通りに入る。

そこは人を溜め込める構造のために目玉級の商品や特売品などが扱われている。

大通りを越え、さらに道を1本抜けた先にある区画。

そこがルマが居を構えている場所。

どうしてルマはそんな不便な土地に店舗を構えたのか。

そこにはルマなりの計算があった。


この地区、確かに生鮮品独特の臭いはある。

だが魚介系のような生臭さではなく、野菜や果物といった青臭さが漂っている。

魚介市場はもっと海側に構えられていて、こちら側とは随分と離れている。

それでも地区独特の臭いのせいで格安でそこそこの店舗を確保出来るという。

ルマが獲得した店舗の床面積を別の区画で確保しようとすると大きく変わってくる。

まず床面積に対する預け金が少なくとも倍近くに跳ね上がる。

さらには取扱商品に対する鑑定の厳しさ、身分書類の提出枚数の多さなど、煩わしさが格段に違ってくる。

大通りで店舗を構えている商人たちは、大抵が近隣国の豪商ばかり。

出稼ぎのように遠方からやってくる商人たちのほとんどは緩衝地帯に埋め込まれてしまう。

そうなってしまうと、ひしめき合った商店街で埋もれてしまったまま期限を過ぎてしまうことになる。

そうなってしまえば売り上げが立たない。

預け金は戻って来るとは言え、旅費を考えれば足が出るのは確かだろう。

それではここに商店を出す意味が無い。

そこでルマは預け金も手頃で審査も緩いこの地区を進んで選定している。

さらには、知る人ぞ知る地区でもあるのだから、ここに来る客は間違いないということも知っている。

そしてこの地区独特の臭いに対しても対策を打っているのである。


店内に入ると、なんとも爽やかな香りに満ちている。

その香りの元を辿れば、店内に散りばめられた飾りに行き当たった。

店内へと足を運べば、外のにおいとは打って変わった、爽やかな香りに鼻腔が洗われる。

店外のにおいが独特なものなだけに、この爽やかな香りが非常に印象に残る。

そうすることで、この店に入れば爽やかな気分になり、ゆっくりと過ごすことに抵抗がなくなる。

そして商品をじっくりと手にとってもらうことが出来るという基本戦略だ。

絵に描いたようなものだが、この戦法で毎度品を売り切って市場を出ているという。


そろそろ日が傾く頃。

ルマの初日は、店を開くだけで終わりそうだ。

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