ルマの商い記 -4-
補助監視塔とは銘打たれているものの、建物は主監視塔と違って高い塔のような建物はない。
石造りの階層建てになっている建物。
外観は市場の貸店舗のような豪華さはなく、とても質素にまとめられている。
ルマはまっすぐその建物へと入っていく。
入口を入ると、石造り独特のひんやりした空気感を感じられる。
ここには監督会と呼ばれる組織が入居している。
一階は総合受付となっていて、そこにまずは入国審査書類を提出する。
改めて鞄から書類の束を取り出す。
にこやかに提出を済ませると、そばの待合椅子へと腰かける。
補助監視塔内では、国営市場に出店するための様々な手続きが行われる。
大抵は身分書類の提出と、出品物リストの提出、それらの鑑定を経て出店が許可される。
生鮮品の類に関しては別途検疫が入るが、概ねこの流れで出店を行うことが出来る。
このリストに抜け漏れや虚偽の記載があると、当該者は速やかに監督会の査問に掛けられる。
市場側としては出品リストと売却物リストの一致を第一として定義している。
非正規の市場流通物については非常に目を光らせている。
それが故にこの場が非常に優秀かつ安全な市場として機能していることの裏付けとなる。
出品リストは監督会によって管理され、市場入りから退出まで保管される。
退出時には売り立てリストと呼ばれる書面を作成して提出する。
買い物客も市場を出る際に身分検査をされ、購入物の提出が義務付けられている。
これによってリストの突き合わせを行うことで、出納が合うという仕組みである。
このとても面倒なシステムのおかげもあって、国営市場には身辺の怪しい者は必然的に出入りが難しくなる。
これもまた、風下の国の国営市場が国際的に優良な市場として諸国から品が集まる所以でもある。
ルマの場合は、背中に抱え込んだ工芸品がその対象となる。
大切に背中に仕舞い込んだ品々は、複数個をまとめて木箱に入れて管理している。
リストに品目を記載し、売却希望価格を風下の国の通貨で記載する。
記載された内容に齟齬がないかを確認した後、鑑定士立ち合いの元、価格査定が行われる。
設定価格が安すぎても、高すぎても鑑定士から注文が付く。
鑑定内容に不服があれば市場裁定へと上告することが出来る。
そうやって市場内の価値価格が乱れることを防いでいる。
ルマのリストは用紙2枚分、品目数としては30品目ほど。
そのどれもが強気とも取れる高めの値段設定である。
だが、鑑定士の眼力はその強気が頷けるほどの内容であることを見抜いていた。
価格設定には無理が無いことを確認し、書類を次の部署へ持ち回りした。
この後は提出した書類の審査結果を受けて、問題が無ければ出店場所を受け取ることになる。
公平公正な商いをモットーとしているルマの内容には嘘偽りが全くない。
それに商品にも文句が付かないと、出店場所の区画番号をもらうことが出来た。
それでも、到着から1日と半分以上はゆうに掛かっている。
待ち時間の夜は待合室の椅子で夜を明かした。
この光景は何ら珍しいものではない。
許諾確認については昼夜の別なく行われるため、いつ許可が下りても良いように、待合の椅子で眠ることはよくよくある光景。
ルマ本人も、幾度となく経験しているので、ここでの仮眠には慣れている。
それだけの面倒を押しても、この市場で売るということに価値がある。
そういう思いがあって、多くの商人が日々この国を訪れている。
ルマがもらった区画は2本の大通りがあるうち、補助監視塔を背中にして左側、そして補助監視塔寄りの右側。
やや奥がかった位置にあるため立地としては若干不利はありそうなものの、ルマは笑顔で開店準備を始めた。




