ルマの商い記 -33-
岩の国。
この国は周囲を山に囲まれている。
同じように山に囲まれている国は十七大陸にも幾つかは存在している。
それでもなぜこの国が岩の国と呼ばれるようになったのか。
この国は他の国よりも成立してからの年数は浅い方。
いわゆる新世代国家のうちのひとつではある。
山がちな地形で人口は少ない。
それでも商売国として独立を保つだけの財力と軍事力を持ち合わせている国。
主な産業は国名の由来ともなっている岩にある。
この国の鉱山は他国の追随を許さないほどに多い。
豊富な鉱脈は、金属類は当然として、希土類までもを産出している。
それぞれ産出出来る場所などは国家機密として扱われ、鉱山労働者は国家公務員として事業に従事している。
中でも、岩の国産出の宝石類は他国には滅多に産出されないことから、高額で取引がなされている。
この宝石を目当てに外国からも鉱脈狙いや、採掘権を求める商売人、あるいは博打打ちがやってくる。
そういった外部の業者については国家が非常に厳しい管理を行っているため、おいそれと手を出す事は出来ない。
国家成立当初から、鉱山は国家規模での保護施策として大切に扱っている。
無尽蔵に生み出される事が無い事を熟知している元首が、資源保護の名の下に強い規制を敷いている。
そういった様々な要素があって、国家としては非常に安定している。
また、宝石類の販売による資産形成もなかなかで、しっかりとした国防組織を編成しているのも特徴のひとつ。
特に情報将校の育成と使用に関しては十七大陸の中でも随一と名高い。
国家規模や歴史などを振り返れば、武装戦よりも情報戦に長けるようになっていたのも頷ける。
岩の国自体の国家規模がそれほど大きくないことも手伝って、余所者への警戒や情報網の形成は非常に強固なもの。
そういった国民性からも、情報将校の優位性は高い。
それが岩の国の持つ国防組織の主な編成となる。
武装自体は大国には到底及ばないものの、そういった理由からおいそれとは攻められることが無くなっていった。
それだけ山奥にあるので、風下の国からはたっぷり3日は掛かる距離。
急峻な崖地に流れる川のそばで休憩を取りつつ、荷馬車は進んでいく。
ルマ以外の乗り手は岩の国のさらに奥、雪の国の出身だという。
話には聞いているものの、雪の国との国境にそびえる山脈の頂上には、常に雪化粧を纏っている。
岩の国と雪の国は相互不干渉を結んでいるため、互いに山脈を越える事は無い。
商人の通り道としては、岩の国の街道は安全性が高いためよく通商路に用いられる。
岩の国側も、そこまで目くじらを立てること無く通行を許している。
その際に供託金として通過期間に一定の金額を預けている。
そうした慣例から、岩の国と雪の国の商人は比較的ではあるものの仲が良い。
それもあっての、今回の旅路となった。
切り立った山が見えてくると、徐々に坂道がきつくなっていく。
それが、岩の国に入った合図でもあった。




