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統一戦線記 -ルマの商い記-  作者: 八樹聡
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ルマの商い記 -31-

管理機構の建物。

国営市場近辺で2番めに高い4階建ての箱型をしている。

1番は監視塔で、およそ管理機構の建物の倍はある。


その建物の2階。

まずそこで管理局で発行された書類を提出する。

そこで商売終了の手続きと、証明書発行不要の手続きを同時に行う。

証明書不要のため担当官による面談などはなく、書類の戻りを待つ。

書類を待っている間も様々な格好の商人たちが機構内を出入りしている。

入国管理機構とあって、国営市場への出入国をここで管理しているのもある。

そのためか、商人と観光客が混ざり合いながらここもまた独自の賑わいを見せている。


待合所の椅子に座りながら、書類の戻りを待っていると、隣にフードを深めに被った人物が座った。

背格好から男女の別はつきにくい。

柔和な表情をしながらも、目線は隣の姿に注力されている。

そのせいか、奇妙な目の細さだけが際立つような相貌になっていた。

それほどに、隣の姿の存在が気になってしまっている。

その人物の荷物を観察するに、入国でも出国でもなさそう。

かと言って風下の国の民でもなさそうな雰囲気を醸している。

この大きな違和感を出しているにも関わらず、この場所の誰一人としてそれに気付いていない。

恐らくは自分のことで手一杯というのもあるだろう。

それに加えて、色々な格好の人が出入りしている。

それがこの姿の違和感を簡単に曇らせてしまっているのだろう。

ルマは注意深く隣の姿の観察を続ける。

人物はじっと手のひらを眺め続けている。

ルマの位置からではそこに何が書かれているのかは解らない。

あまり覗き込もうとすれば、ルマのほうが不審な人物になってしまうのでそれ以上は確認できない。

ルマの表情からももどかしさが感じられる。

その感情の一切を表に出さないようにしながら観察を続ける。

ただ、人物は変わらず手のひらを見続けているだけ。

それ以上の状況が望めない中、観察をひたすらに続けていくルマ。


どのくらいの時間が経過しただろう。

時間にしてはほんの短い時間だったかもしれない。

けれども、ルマには集中している分かなり長く感じられた。

空気が重く、ゆっくりと動いていく感覚。

集中が高まると感じられるその感覚で、ルマの時間感覚がすこしおかしくなった。

それを取り戻せたのは、大きな声で窓口で呼ばれたことに気付いたからだった。


ルマは今までの集中をおくびにも出さず立ち上がる。

立ち上がったその瞬間、いつもの柔和な表情に戻っていた。

そして窓口に向かう間には、いつもの飄々とした調子に戻っていた。


その調子のまま、ルマは窓口へと歩いていった。

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