ルマの商い記 -29-
ルマの腰掛けた先。
そこには机がひとつ。
その机の上には大量の書類がうずたかく積んでいる。
その書類に埋もれそうになりながらも、その空気感で存在を知らせている、机の向こう側。
恐らくはこの部屋の主であろう存在。
机に積み上げられた書類で詳細は不明だが、そこに居ることは確かだ。
ルマは鞄にしまっていた書類を提出すると会釈をしながら座席に戻る。
部屋にはひとり掛けのソファがひとつだけ。
あとは対面にある机と、主が座る椅子。
その奥は大量の書類で埋まっている。
いつ片付けたのだろうかと思うほどに雑然と書類が積まれている。
そのいくつかには付箋が貼ってあるのか、何らかの紙がはみ出しているのが確認される。
「それで、本日の要件はどのようなもので」
提出した書類に目を通しながら質問が飛ぶ。
「提出された書類を確認する限りでは、途中での切り上げということになりそうだけど、認識に相違はないですか」
書類に目を流したまま、ぶっきらぼうに確認される。
「まぁ、そんなところです」
ルマは柔和な表情を変えないまま返答する。
「それで、理由としてはどのようなものがありますか?
資金ショート?それとも目的達成?」
目線は手元の書類から一切動かすことなく確認を続けていた。
その雰囲気から、明らかにいつものことで、とにかく素早く処理をしたいという思惑がうかがえる。
その思惑をひしひしと感じさせながらも、手元の書類整理は淡々と行われている。
ルマは相変わらずの柔和な表情を崩すことはない。
「目的達成による早期引き揚げで申請をお願いします」
ルマも手短に要件を返答する。
部屋の主の手が止まった。
「あら、珍しい。
大抵は資金ショートでなんとか粘ろうとする人ばかりなのに。
職務だから確認するけど、目的達成の目的を確認させてください」
再び目線が動き出す。
「はい。
商品の売り切りによる商い品が無くなったためです」
商品は先日売った3個だけだったが、売り切ったと言い切った。
「提出書類では15種類が記載されていますが」
部屋の主は鋭い質問を投げかける。
「それはサンプル品になりますので、売る際はそのことを伝えた上で買い取っていただいています」
淀みなくルマは返答した。
「そう、それなら問題はなさそうね」
部屋の主は何も問題はないという表情をしたまま、書類にサインを書き加えた。
「今回の切り上げについては、違約金関連は発生しません。
店舗の状況についてはどうなっていますか」
主が確認する。
「この申請が通り次第引き払いに取り掛かります。
本日中には引き払いが完了して、最終書類の提出に取り掛かることができると思います」
ルマは明朗に応じた。
「承知しました。
本日の申請は受領します。
引き払いが完了しましたら管理局の本局までこちらの書類の提出をお願いします」
そう言って1枚の書類を渡される。
ルマは鞄にその書類をしまって部屋を後にした。
今日の商売が終わった。




