ルマの商い記 -2-
白壁で囲われている風下の国の国境入り口。
風下の国の門をくぐった向こうには大きな館が建っている。
馬車はその建物の前で止まる。
荷物の声の主は御者に挨拶をひとつ交わして代金を支払う。
友好国間の移動のためか、料金はそれほど高い値段ではない。
加えて、声の主は心付けとばかりに風下の国の通貨を少し手渡した。
それには黙っていた御者も驚いた顔をしたが、すぐ元の無骨な顔に戻った。
ただ、返礼として被った帽子を傾ける礼儀は忘れてはいなかった。
馬車は更に奥へと消えていった。
目の前の建物。
それが入国審査管理機構。
門前の入国審査を終えるとそこに必ず集められる。
ここでは入国時に持ち込み品の検査が必ず行われる。
他国ではそのあたりの検査が緩い国もあるが、風下の国では一品ずつ事細かに管理される。
商売を行った後、出国の際にも何を売ったのかを確認して出国する。
売られた物の行方については不問だが、売った人間の素性だけは記録し続けている。
それが風下の国の市場の健全性をより高めている。
そこ抜けた先。
外壁と同じような白壁に囲まれた場所。
そこが、目指していた風下の国の大市場である。
そこは大小様々な屋根布が広がっている。
見える限り全てが個人商売の屋台。
その広さは一日では見て回ることができないほどで、周辺国にも知られている。
そこに行けば何でも手に入るとあって、買い物客で常に賑わっている。
そこに居を構えている商人もいれば、流しの行商もいるため、品揃えは常に入れ替わる。
それゆえにそこにしかない買い物を求めて国内外から多くの客がつめかける。
近場には宿もあって、宿泊をしながらショッピングをするのには最適な土地である。
ただ、それは買い物をする側にとって、である。
売る側にとっては、苛烈とも言える競争が繰り広げられている。
より安く、より高品質な物を提供する。
そのために何らかの危険を冒してまで運ばれるものもあるという。
売り手もまた血眼になって売ろうとしているので、どこか殺気立ってもいたという。
安かろう悪かろうという商売をした屋台は、次が無いとも言われるほど、この土地の買い物客は目が肥えている。
だからこそ、高品質のものが、手頃な値段で手に入る。
それが評判を呼び、この市場は賑わっている。
だが、その過当競争も行き過ぎによって、先の統一戦線時に猛烈に攻撃されてしまった。
それを反省した政府は、商品の搬入リストを作成し、持ち込み品に裏やけちが付いていないかを調べる機構を設立した。
そのおかげもあって、今の市場は非常に平穏に商売が行われている。
それでも、ここで商売をすることはそれに近い高い競争を経て買われていくものである。
入国管理審査機構での荷物確認を終えて、建物から外に出てくる姿がある。
「やっと終わった」
無事審査を終えたのか、伸びの大きさが一段と大きく見えた。
背負った袋と、小脇に書類の束を抱えている。
書類を前に下げた鞄にしまい込む。
「さてと、これから商いの準備をはじめますか」
にこやかな笑顔を崩さず、人影がが市場へと繰り出していく。




