ルマの商い記 -19-
夜。
ルマは夜市場の中をうろついていた。
夜市場とは、国営市場の正面入口付近に、夕暮れとともに現れる露店街のことである。
この露店街は主に公営市場に店を構えている店主達が夜の時間を無駄にしまいと営業をしている露店街となる。
中には国営市場目の前の未入居の空き家に店をかまえる猛者たちもいる。
夕暮れが訪れ、時間が夜に切り替わると国営市場の出口付近は様相を変える。
それが夜市場と呼ばれているこの一帯のことである。
この一帯には区画整理にあぶれた商人や、正規の営業許可を得ていない商人などが店を出している。
そして何より、国営市場とは違って、ここには強めの篝火が炊かれている。
そのため周囲よりも一段と明るく、商品などが見やすく展示されている。
その代わり、ここに陳列されている商品は、国営市場よりも若干の割高感は否めない。
だからこそ、そこでしか手に入らない事を強調して売り抜けようとする。
一部の観光客はその押しに負けて割高な商品を買わされてしまっている。
だが、そういったあこぎな商売を幾度となくくぐり抜けて行くような猛者となると、対応が変わってくる。
最初のうちは誘いに乗って、ほいほいと付いていく。
その後店でさんざ商品のウリを受け付けて、相場を確認、あるいは引き出す。
そうしてやり取りが終わると、何かを得たような顔をして、何も買うこと無く、そこを立ち去ってしまう。
商人はただただ徒労にのみ取り憑かれ、疲れきった表情で夜市場の飲み屋へと消えていくのだという。
そう、飲食を扱う商人以外の物品を扱う商人には、夜市場が形成されてから日の入りと少しの時間が、ほとんどの勝負だと言う。
それは初動でどれだけのひとを掴み、それを取り込むかにあるという。
それを逃した商人は、夜市場では生きていけないという。
それほどにここでの競争は激しいものなのだ。
そして、飲食店もまた国営市場内とは違った活気に溢れた場所となっている。
軒先に出されたテーブルで幾人かが立ち飲みをしている。
別の場所では居抜きのようにした商店の中に飲食店を経営している者もいる。
そこではとても香ばしい匂いが近隣に漂っている。
ルマはそんな昼とは違った歓楽街のような街並みの夜市場を歩いている。
同じ商人として、見るべき点はしっかり見つつも、どこかのどかに楽しんでいる。
それでも、どこか特定の店に立ち寄る気配はない。
とにかく右に左にと、まるで警戒でもしているかのようにして、見回しては首を頷かせている。
そして手元にある画板に挟んだ紙に、なにやら記入を欠かしていない。
市場調査とでも言うのだろうか、とにかく夜市場の様子を克明に記載している。
岩の国にはこういった場所がないため、その視察も兼ねているのだろうかと言えるほどに熱心に記載を続けている。
ふと目に止まった定食屋にルマは入っていった。




